きっと、大丈夫だよ。
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side:咲
私はユウキさんにもたれかかったまま、目の前で起きることをただ見ることしかできなかった。目が覚めてからなんだか体が重くて、思うように力が入らなかった。
「やめろ!」
お兄がまた叫んで、自分を抑える2人を振り払い、ヒロシさんに駆け寄った。
「逃げてください。いいから、早く」
スナオさんとチカラさんもヒロシさんの両脇に走り寄り、2人でヒロシさんを支えて立ち上がらせた。
お兄が私の方を向いて、目があった。一瞬こちらに足を進めたけれど、男の人たちがヒロシさんたちに近づこうとしたせいで、お兄は3人を男の人たちから守るように立ち回って出口の方向へと彼らを逃がした。
お兄がセイギさんたちへ振り返る。
「そいつらにも教えてやれ」
チカラさんとヒロシさんは逃げ切れたけれど、セイギさんがそう言ったことで、再び、お兄とスナオさんは男の人たちに捕らえられた。
「お兄…」
力を振り絞って、預けていた体を起こした。ユウキさんから少し離れて、床に手をつき立ち上がろうとするも、足に力が入らずその場にへたり込んだ。
ユウキさんが私のそばに跪いて肩を寄せた。
「あの女も言ってたろ。ここじゃ手段を問わず勝った者が正義だって!!」
セイギさんの言葉で、1人の男の人がお兄に近づく。
「お兄ちゃん…!」
「危ないから!」
もう一度立ち上がろうとしてユウキさんに止められた。
男の人がお兄に殴りかかるのが見えて、思わず目をつぶったその時。
ガキンッ!
甲高い金属音が聞こえた。
恐る恐る目を開くと、お兄の目の前で鉄パイプを振り下ろしている人物がいた。
「いやいやダメでしょ、暴力は」
誰…?
「いやあ俺も、こんなもん持ちたくないんすけど……やめましょうよ、もう」
赤髪でグレーのジャケットを羽織ったその人は、鉄パイプをこちらにいるセイギさんたちに向けた。ユウキさんとセイギさんは呆気に取られているようだった。
あれ?この人どこかで…。
「ほら、その子もこっちに」
赤髪の人を見つめていると、その人は、少しずつ近づいて、こちらに手を差し出した。
「……お兄ちゃんのところに戻りな。咲ちゃんはこっち側じゃないでしょ」
ユウキさんが囁いた。ユウキさんに支えられて、立てせてもらう。
「ユウキさん…」
私はユウキさんの上着の袖をぎゅっと握って、ユウキさんを見上げた。ユウキさんはいつものように笑みを浮かべて、また私の頭を撫でると、そっと私の肩を押した。
フラつきながら、赤髪の人の手を取りに行く。
赤髪の男性に手を引かれながら、ユウキさん達を振り返っていたら、いつもの香りに包まれた。いつの間にかお兄に抱き寄せられていた。
「咲…」
見上げると、お兄は恐怖が少し残っているような、安心したような、複雑な表情をしていた。
「それも、返してもらえます?」
赤髪の男性は黒い服を着た細身の男性からリングを取り、スナオさんの足元へ転がした。
そしてその男性は、お兄を見てこう言った。
「久しぶり。まさかこんなとこで会うとはね。零」
「カズヤ…山口カズヤか」
お兄が驚いたように男性の名を呼ぶと、男性は笑顔で頷いた。
「10年ぶりだな」
「カズヤお兄ちゃん…?」
思わずそう呟いた私を見て、その男性は目を丸くした。
「咲ちゃん…?君、咲ちゃんなのか…?」
私が頷くと、カズヤお兄ちゃんは笑みを浮かべる。
「大きくなったな…気づかないわけだ…」
懐かしいな、その呼び方、とカズヤお兄ちゃんは柔らかい表情で目を細めた。
私はユウキさんにもたれかかったまま、目の前で起きることをただ見ることしかできなかった。目が覚めてからなんだか体が重くて、思うように力が入らなかった。
「やめろ!」
お兄がまた叫んで、自分を抑える2人を振り払い、ヒロシさんに駆け寄った。
「逃げてください。いいから、早く」
スナオさんとチカラさんもヒロシさんの両脇に走り寄り、2人でヒロシさんを支えて立ち上がらせた。
お兄が私の方を向いて、目があった。一瞬こちらに足を進めたけれど、男の人たちがヒロシさんたちに近づこうとしたせいで、お兄は3人を男の人たちから守るように立ち回って出口の方向へと彼らを逃がした。
お兄がセイギさんたちへ振り返る。
「そいつらにも教えてやれ」
チカラさんとヒロシさんは逃げ切れたけれど、セイギさんがそう言ったことで、再び、お兄とスナオさんは男の人たちに捕らえられた。
「お兄…」
力を振り絞って、預けていた体を起こした。ユウキさんから少し離れて、床に手をつき立ち上がろうとするも、足に力が入らずその場にへたり込んだ。
ユウキさんが私のそばに跪いて肩を寄せた。
「あの女も言ってたろ。ここじゃ手段を問わず勝った者が正義だって!!」
セイギさんの言葉で、1人の男の人がお兄に近づく。
「お兄ちゃん…!」
「危ないから!」
もう一度立ち上がろうとしてユウキさんに止められた。
男の人がお兄に殴りかかるのが見えて、思わず目をつぶったその時。
ガキンッ!
甲高い金属音が聞こえた。
恐る恐る目を開くと、お兄の目の前で鉄パイプを振り下ろしている人物がいた。
「いやいやダメでしょ、暴力は」
誰…?
「いやあ俺も、こんなもん持ちたくないんすけど……やめましょうよ、もう」
赤髪でグレーのジャケットを羽織ったその人は、鉄パイプをこちらにいるセイギさんたちに向けた。ユウキさんとセイギさんは呆気に取られているようだった。
あれ?この人どこかで…。
「ほら、その子もこっちに」
赤髪の人を見つめていると、その人は、少しずつ近づいて、こちらに手を差し出した。
「……お兄ちゃんのところに戻りな。咲ちゃんはこっち側じゃないでしょ」
ユウキさんが囁いた。ユウキさんに支えられて、立てせてもらう。
「ユウキさん…」
私はユウキさんの上着の袖をぎゅっと握って、ユウキさんを見上げた。ユウキさんはいつものように笑みを浮かべて、また私の頭を撫でると、そっと私の肩を押した。
フラつきながら、赤髪の人の手を取りに行く。
赤髪の男性に手を引かれながら、ユウキさん達を振り返っていたら、いつもの香りに包まれた。いつの間にかお兄に抱き寄せられていた。
「咲…」
見上げると、お兄は恐怖が少し残っているような、安心したような、複雑な表情をしていた。
「それも、返してもらえます?」
赤髪の男性は黒い服を着た細身の男性からリングを取り、スナオさんの足元へ転がした。
そしてその男性は、お兄を見てこう言った。
「久しぶり。まさかこんなとこで会うとはね。零」
「カズヤ…山口カズヤか」
お兄が驚いたように男性の名を呼ぶと、男性は笑顔で頷いた。
「10年ぶりだな」
「カズヤお兄ちゃん…?」
思わずそう呟いた私を見て、その男性は目を丸くした。
「咲ちゃん…?君、咲ちゃんなのか…?」
私が頷くと、カズヤお兄ちゃんは笑みを浮かべる。
「大きくなったな…気づかないわけだ…」
懐かしいな、その呼び方、とカズヤお兄ちゃんは柔らかい表情で目を細めた。