きっと、大丈夫だよ。
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都心のとある2DKのアパートのキッチンでは、高校生くらいの少女が何やら楽しそうに鼻歌を歌いながら、火にかけた鍋の中身をゆっくりとかき混ぜていた。
鍋の中ではトロッとしたクリームシチューが煮込まれており、お肉やじゃがいもや人参、玉ねぎがゴロゴロ入っていた。
テーブルの上には、2人分の食器と、サラダが入った透明のボウルが置かれている。
つけっぱなしのテレビからは、最近世間を騒がせている「義賊」についてのワイドショーが放送されていた。義賊というのは、振り込め詐欺によって奪われたお金を取り返し被害者に返還する、という活動を行っているグループである。
ちょうど今朝のニュースでも、被害金5000万円を取り戻したという報道があり騒がれていた。
「義賊、か……すごいよなあ、顔も知らない人を助けるなんて……」
まるでお兄 みたい、と少女は呟いた。
少女はふと、テレビから壁に掛けられたカレンダーへ視線を移した。今日の日付に赤で丸印がつけられており、そこには ” Birthday 咲 19 ” という文字と王冠のマークがつけられていた。
彼女はそれを見て微笑んだ。どうやら今日はこの少女もとい女性__咲の誕生日らしい。童顔なのか幼く見えていたが、あと1年で成人するようだ。
グツグツと煮立つ鍋に、咲は慌てて火を弱めた。おたまで小皿に少量移し、味見をすると満足したようにうなずいた。鍋に蓋をして、保温のスイッチを押す。完成したようだ。
すると突然、玄関からガチャガチャと荒々しく鍵を開ける音がした。咲はビクッと肩を揺らす。
「咲!!いるか!?」
慌てたような男性の声とともに、ドタバタと足音が近づく。
ガチャッと勢いよく開かれた部屋の扉の向こうから現れたのは、20代後半の整った顔立ちをした男性だった。咲とどことなく似ている。
「お兄っ!?どうしたの!?」
咲はその大きな瞳をさらに見開いた。お兄、と呼ばれた男性の名前は宇海零。咲の兄だ。険しい表情をしていた彼は、咲の姿を確認すると、ほっと安心したように脱力して、テーブルに手をついた。
「よかった…」
走って帰ってきたようで、肩で息をしながら彼はそう小さく呟いた。
咲は冷蔵庫から麦茶を取り出してコップに注いだ。恐る恐る兄に近づき、コップをテーブルに置く。
「お茶飲む?何かあったの?」
零は「ありがとう」と言って麦茶を一気に飲み干した。
「ごめんな、驚かせて。なんでもないよ。ただいま、咲」
安心させるように柔らかい笑みを見せ、咲の頭をポンポンと軽く撫でた。
「おかえり、なさい……?」
返事をするも、咲は訝しげに眉をひそめる。
「あのな、咲。俺、今から行かなきゃいけないところがあるんだ」
子供に言い聞かせるように、腰を落として咲と目線を合わせると、彼女の目を見つめて言った。
「お兄……?」
「ごめんな、咲の誕生日なのに……帰ったら必ず、お祝いしてあげるから。ケーキも、ちゃんと買ってくるから」
妹の頭を撫でながら、零は言う。
毎年、何があってもこの日だけは妹を優先していた零。塾の仕事以外に予定は入れず、咲が断ろうとも頑なに彼女の誕生日を祝ってきた兄が、初めて妹以外を優先した。おそらくよっぽど緊急を要する事なのだろう。咲は戸惑いながら頷いた。
鍋の中ではトロッとしたクリームシチューが煮込まれており、お肉やじゃがいもや人参、玉ねぎがゴロゴロ入っていた。
テーブルの上には、2人分の食器と、サラダが入った透明のボウルが置かれている。
つけっぱなしのテレビからは、最近世間を騒がせている「義賊」についてのワイドショーが放送されていた。義賊というのは、振り込め詐欺によって奪われたお金を取り返し被害者に返還する、という活動を行っているグループである。
ちょうど今朝のニュースでも、被害金5000万円を取り戻したという報道があり騒がれていた。
「義賊、か……すごいよなあ、顔も知らない人を助けるなんて……」
まるでお
少女はふと、テレビから壁に掛けられたカレンダーへ視線を移した。今日の日付に赤で丸印がつけられており、そこには ” Birthday 咲 19 ” という文字と王冠のマークがつけられていた。
彼女はそれを見て微笑んだ。どうやら今日はこの少女もとい女性__咲の誕生日らしい。童顔なのか幼く見えていたが、あと1年で成人するようだ。
グツグツと煮立つ鍋に、咲は慌てて火を弱めた。おたまで小皿に少量移し、味見をすると満足したようにうなずいた。鍋に蓋をして、保温のスイッチを押す。完成したようだ。
すると突然、玄関からガチャガチャと荒々しく鍵を開ける音がした。咲はビクッと肩を揺らす。
「咲!!いるか!?」
慌てたような男性の声とともに、ドタバタと足音が近づく。
ガチャッと勢いよく開かれた部屋の扉の向こうから現れたのは、20代後半の整った顔立ちをした男性だった。咲とどことなく似ている。
「お兄っ!?どうしたの!?」
咲はその大きな瞳をさらに見開いた。お兄、と呼ばれた男性の名前は宇海零。咲の兄だ。険しい表情をしていた彼は、咲の姿を確認すると、ほっと安心したように脱力して、テーブルに手をついた。
「よかった…」
走って帰ってきたようで、肩で息をしながら彼はそう小さく呟いた。
咲は冷蔵庫から麦茶を取り出してコップに注いだ。恐る恐る兄に近づき、コップをテーブルに置く。
「お茶飲む?何かあったの?」
零は「ありがとう」と言って麦茶を一気に飲み干した。
「ごめんな、驚かせて。なんでもないよ。ただいま、咲」
安心させるように柔らかい笑みを見せ、咲の頭をポンポンと軽く撫でた。
「おかえり、なさい……?」
返事をするも、咲は訝しげに眉をひそめる。
「あのな、咲。俺、今から行かなきゃいけないところがあるんだ」
子供に言い聞かせるように、腰を落として咲と目線を合わせると、彼女の目を見つめて言った。
「お兄……?」
「ごめんな、咲の誕生日なのに……帰ったら必ず、お祝いしてあげるから。ケーキも、ちゃんと買ってくるから」
妹の頭を撫でながら、零は言う。
毎年、何があってもこの日だけは妹を優先していた零。塾の仕事以外に予定は入れず、咲が断ろうとも頑なに彼女の誕生日を祝ってきた兄が、初めて妹以外を優先した。おそらくよっぽど緊急を要する事なのだろう。咲は戸惑いながら頷いた。