きっと、大丈夫だよ。
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side:咲
標くんにお礼を言って別れ、テントに戻ると、お兄たちは起きていた。そしてなにやら騒がしかった。
「おはようございます」
そう声をかけたら、一斉にみんながこちらを見た。お兄があからさまにホッとした表情になった。気が抜けたのか、座り込んで頭を垂れた。
え?どうしたの?
「ほら、大丈夫だったじゃん」
「咲ちゃんおはよ!よかったですね、零」
ヒロシさんはため息をつき、スナオさんは素敵な笑顔で挨拶をくれた。
「もー心配しすぎなんですよ、心の友は…」
「すみません…」
チカラさんからもため息をつかれてお兄は頭を下げた。
「えっと、何かありましたか?」
ヒロシさんに聞いてみた。
「それがさ、起きた時に咲ちゃんがいなくなってたから、零が俺らのこと叩き起こしたんだよ。『咲がいません!』って慌てて」
お兄の真似をしてヒロシさんが苦笑した。
「お兄…」
困った顔で呟くとお兄はバツが悪そうに頭を掻いた。
しばらくして、支度を終えてみんなでテントを出た。
チカラさんたちとあの大きな建物を見上げていると、隣のテントから、セイギさん、ユウキさん、末崎さん、標くんが出てきた。
「あっ!おはよう、咲ちゃん」
ユウキさんが小さく手を振っている。
「お、おはようございます、ユウキさん」
昨日のチカラさんのことを思い出して動揺してしまったのか、ちょこっとだけ噛んでしまった。
ユウキさんは昨日と同じようににっこりと笑みを浮かべている。
セイギさんは相変わらず怖い顔でこちらを(というかお兄を)睨んでいた。
「おい」
「なんだあれ」
セイギさんとユウキさんが見つめる方を、私もお兄たちと見た。
広場の両隣にあるアーケードの向こう側から、後方から、いたる所から、今までどこにいたのかと思うほどの大勢の男の人たちがぞろぞろと現れた。
「これは、どういう…」
「他の合格者に決まってるだろ」
末崎さんの呟きに、呆れたようにセイギさんが答えた。
「俺たちだけじゃ、なかったのか…」
ヒロシさんの言葉は私たちの気持ちを代弁したようだった。
どうやらこれだけの参加者が、私たちのようにどこかで予選のゲームを行なっていたみたい。
本部の建物の下に、ステージのようなものが見える。彼らはそこへ向かっていた。
セイギさんとユウキさんがいち早く芝生広場を離れた。
置いて行くなよ、なんて言いながら末崎さんは追いかけ、その後ろを標くんがゆっくりと1人で歩いていく。
「俺たちも行きましょうか」
お兄の呼びかけで、私たちもステージへ歩き出した。
「ふざけんじゃねえよ、主催者よぉ!」
「そうだよ!」
「命がけで勝ち残ったのになんでさっきより人が増えてんだよ!」
近づくにつれて、ステージに立つ峰子さんに文句を言っている人の声が聞こえてきた。
ステージの前に集まっている人は、ざっと80人近くはいそう。
「喰らえ女詐欺師!!」
そう叫んだ男の人が、峰子さんに向かって、何かを投げた。
「峰子さん!」
目を見開いて、私は咄嗟に叫んだ。
それは後方の壁にぶつかり、峰子さんの足元へ転がって戻ってきた。男の人が投げたのはりんごだった。
私の声が聞こえていたのか、りんごを拾い上げたときに峰子さんは一度こちらに微笑んだような気がした。
峰子さんはすっと表情を消すと、参加者たちへ視線を戻した。
「気に入らないなら——」
峰子さんは手に持ったりんごを、いとも簡単に片手で握りつぶして見せた。
さっきまで威勢のよかった男の人たちは、情けなく後ずさりする。
「——殺し合いでもして、競争相手を減らしてみたらどう?」
峰子さんは冷え切った瞳で参加者たちを見下ろした。
「み、峰子さん強い…」
畏怖と尊敬の念を抱いた眼差しで峰子さんを見つめた。
「それじゃ、王になる方法を説明するわ」
何事もなかったかのように、峰子さんはゲームの説明を始めた。
「このドリームキングダムには、20を超えるアトラクション形式のゲームが用意されている。そのどれでもいい。自由に入ってゲームに勝てば、これ」
峰子さんは黒服の男の人から受け取ったものを私たちに見せた。
「このリングが獲得できる」
それはチェーンに通された、金色のリングだった。首に下げておけるようになっている、と峰子さんは言った。
そして、このリングを先に4つ獲得したものが、1000億円と、在全さんの後継者になれる権利が与えられると。
「すなわち、人生の圧倒的勝者になれるのよ!」
峰子さんが声高らかに言うと、ステージの前にいた参加者たちが雄叫びをあげて、一斉にゲームに向かって走り出した。
「わわわわ!」
全速力で駆け抜けて行く男の人たちを咄嗟に避けようとしてよろめき、お兄にしがみついた。
「ぼ、僕たちも早く行かなきゃ!」
スナオさんが目の前を通り過ぎて行く参加者たちを見ながら焦ったように言う。
「そうですね…ですが、まずは様子を見ましょう。どんなゲームがあるのかわかりませんし」
お兄はゆっくりと歩き出した。芝生広場の両側にあるアーケードから見てみるようだ。
「何呑気なこと言ってるんですか!先越されちゃいますよ!」
お兄を追いながら、チカラさんも訴えかけた。
「きっと簡単なゲームではないと思うんです。昨日のように、命を賭けなければならないゲームだってあるでしょう。チカラさんたちをそんな危険な目に遭わせるわけにはいきません」
「心の友…」
チカラさんは複雑な表情をしていた。
「と、いうわけだから、とりあえず咲はテントに——」
「戻らないよ!」
「言うと思った…」
お兄は大きくため息をついて頭を掻いた。
「ゲームは強制じゃない。自分たちの意思で自由に入ってゲームに挑む。あの女の人も言ってただろ。だったらわざわざ危険を犯してまで咲がゲームに参加する必要はない。だいたい、咲はリングを取る必要ないだろう。もともとは参加する予定じゃなかったんだから…」
立ち止まって私を見下ろすお兄。
「でも、あんなテントに1人でいるなんて退屈すぎるよ…私何も持ってきてないのに」
スマホの充電もあまりない。これが切れたら本当に何も残らない。あんなところに1人でいるくらいなら、このパークを散歩してた方がましだ。
「それにほら、私なんかに構ってる場合じゃないでしょ!様子を見るにしても、早く移動しなきゃ!」
スナオさんたちをそのままにしてちゃダメだよ!ほらほら行くよ!とお兄の背中を押して、歩かせた。
標くんにお礼を言って別れ、テントに戻ると、お兄たちは起きていた。そしてなにやら騒がしかった。
「おはようございます」
そう声をかけたら、一斉にみんながこちらを見た。お兄があからさまにホッとした表情になった。気が抜けたのか、座り込んで頭を垂れた。
え?どうしたの?
「ほら、大丈夫だったじゃん」
「咲ちゃんおはよ!よかったですね、零」
ヒロシさんはため息をつき、スナオさんは素敵な笑顔で挨拶をくれた。
「もー心配しすぎなんですよ、心の友は…」
「すみません…」
チカラさんからもため息をつかれてお兄は頭を下げた。
「えっと、何かありましたか?」
ヒロシさんに聞いてみた。
「それがさ、起きた時に咲ちゃんがいなくなってたから、零が俺らのこと叩き起こしたんだよ。『咲がいません!』って慌てて」
お兄の真似をしてヒロシさんが苦笑した。
「お兄…」
困った顔で呟くとお兄はバツが悪そうに頭を掻いた。
しばらくして、支度を終えてみんなでテントを出た。
チカラさんたちとあの大きな建物を見上げていると、隣のテントから、セイギさん、ユウキさん、末崎さん、標くんが出てきた。
「あっ!おはよう、咲ちゃん」
ユウキさんが小さく手を振っている。
「お、おはようございます、ユウキさん」
昨日のチカラさんのことを思い出して動揺してしまったのか、ちょこっとだけ噛んでしまった。
ユウキさんは昨日と同じようににっこりと笑みを浮かべている。
セイギさんは相変わらず怖い顔でこちらを(というかお兄を)睨んでいた。
「おい」
「なんだあれ」
セイギさんとユウキさんが見つめる方を、私もお兄たちと見た。
広場の両隣にあるアーケードの向こう側から、後方から、いたる所から、今までどこにいたのかと思うほどの大勢の男の人たちがぞろぞろと現れた。
「これは、どういう…」
「他の合格者に決まってるだろ」
末崎さんの呟きに、呆れたようにセイギさんが答えた。
「俺たちだけじゃ、なかったのか…」
ヒロシさんの言葉は私たちの気持ちを代弁したようだった。
どうやらこれだけの参加者が、私たちのようにどこかで予選のゲームを行なっていたみたい。
本部の建物の下に、ステージのようなものが見える。彼らはそこへ向かっていた。
セイギさんとユウキさんがいち早く芝生広場を離れた。
置いて行くなよ、なんて言いながら末崎さんは追いかけ、その後ろを標くんがゆっくりと1人で歩いていく。
「俺たちも行きましょうか」
お兄の呼びかけで、私たちもステージへ歩き出した。
「ふざけんじゃねえよ、主催者よぉ!」
「そうだよ!」
「命がけで勝ち残ったのになんでさっきより人が増えてんだよ!」
近づくにつれて、ステージに立つ峰子さんに文句を言っている人の声が聞こえてきた。
ステージの前に集まっている人は、ざっと80人近くはいそう。
「喰らえ女詐欺師!!」
そう叫んだ男の人が、峰子さんに向かって、何かを投げた。
「峰子さん!」
目を見開いて、私は咄嗟に叫んだ。
それは後方の壁にぶつかり、峰子さんの足元へ転がって戻ってきた。男の人が投げたのはりんごだった。
私の声が聞こえていたのか、りんごを拾い上げたときに峰子さんは一度こちらに微笑んだような気がした。
峰子さんはすっと表情を消すと、参加者たちへ視線を戻した。
「気に入らないなら——」
峰子さんは手に持ったりんごを、いとも簡単に片手で握りつぶして見せた。
さっきまで威勢のよかった男の人たちは、情けなく後ずさりする。
「——殺し合いでもして、競争相手を減らしてみたらどう?」
峰子さんは冷え切った瞳で参加者たちを見下ろした。
「み、峰子さん強い…」
畏怖と尊敬の念を抱いた眼差しで峰子さんを見つめた。
「それじゃ、王になる方法を説明するわ」
何事もなかったかのように、峰子さんはゲームの説明を始めた。
「このドリームキングダムには、20を超えるアトラクション形式のゲームが用意されている。そのどれでもいい。自由に入ってゲームに勝てば、これ」
峰子さんは黒服の男の人から受け取ったものを私たちに見せた。
「このリングが獲得できる」
それはチェーンに通された、金色のリングだった。首に下げておけるようになっている、と峰子さんは言った。
そして、このリングを先に4つ獲得したものが、1000億円と、在全さんの後継者になれる権利が与えられると。
「すなわち、人生の圧倒的勝者になれるのよ!」
峰子さんが声高らかに言うと、ステージの前にいた参加者たちが雄叫びをあげて、一斉にゲームに向かって走り出した。
「わわわわ!」
全速力で駆け抜けて行く男の人たちを咄嗟に避けようとしてよろめき、お兄にしがみついた。
「ぼ、僕たちも早く行かなきゃ!」
スナオさんが目の前を通り過ぎて行く参加者たちを見ながら焦ったように言う。
「そうですね…ですが、まずは様子を見ましょう。どんなゲームがあるのかわかりませんし」
お兄はゆっくりと歩き出した。芝生広場の両側にあるアーケードから見てみるようだ。
「何呑気なこと言ってるんですか!先越されちゃいますよ!」
お兄を追いながら、チカラさんも訴えかけた。
「きっと簡単なゲームではないと思うんです。昨日のように、命を賭けなければならないゲームだってあるでしょう。チカラさんたちをそんな危険な目に遭わせるわけにはいきません」
「心の友…」
チカラさんは複雑な表情をしていた。
「と、いうわけだから、とりあえず咲はテントに——」
「戻らないよ!」
「言うと思った…」
お兄は大きくため息をついて頭を掻いた。
「ゲームは強制じゃない。自分たちの意思で自由に入ってゲームに挑む。あの女の人も言ってただろ。だったらわざわざ危険を犯してまで咲がゲームに参加する必要はない。だいたい、咲はリングを取る必要ないだろう。もともとは参加する予定じゃなかったんだから…」
立ち止まって私を見下ろすお兄。
「でも、あんなテントに1人でいるなんて退屈すぎるよ…私何も持ってきてないのに」
スマホの充電もあまりない。これが切れたら本当に何も残らない。あんなところに1人でいるくらいなら、このパークを散歩してた方がましだ。
「それにほら、私なんかに構ってる場合じゃないでしょ!様子を見るにしても、早く移動しなきゃ!」
スナオさんたちをそのままにしてちゃダメだよ!ほらほら行くよ!とお兄の背中を押して、歩かせた。