きっと、大丈夫だよ。
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side:スナオ
自分の荒い息遣いと早鐘を打つ心臓の音が聞こえる。額に冷や汗がにじむ。
生きてる…?
痛みは感じない。
隣のサークルから、「ひゃあ!」という短い悲鳴が聞こえた。
そーっと目を開けたら、至近距離に鉄が迫っていて、思わず僕も声が出そうになった。
ずっと僕の手を握ってくれていた、咲ちゃんを見る。
「ね?大丈夫だったでしょう?」
こちらを見つめる咲ちゃんは、こんな時でも笑顔を浮かべていた。
けれど、顔は真っ青だし、僕の手を握る手は震えている。なのに、笑って気丈に振る舞っている。
本当は咲ちゃんも怖かったんだ。そりゃそうだよね。怖くないわけないよね。僕だって心臓が飛び出そうなくらい怖かったんだから。しかも咲ちゃんはこの前まで高校生だったんだよ。いくらあの零の妹だからって、咲ちゃんは、まだ小さな女の子なんだから。
零が、これはサイコロの目を当てるゲームじゃなかったと説明するのが聞こえてきた。
サイコロの出目は問題でないと気づけるかどうか、そして、鉄球とサークルの間にできる隙間の問題だと気づく観察力があるかどうか。
つまり、このサークルに鉄球を落とした時、鉄球とサークルの間に人間が入れる空間ができることを見抜けるかどうか、という問題だったと。
こんなことを今の状態で説明できるのが僕は信じられなかった。
「咲ちゃんも気づいてたの?」
まさかと思って聞いてみた。
「はい…確信はありませんでしたけどね。下からだと鉄球の大きさがいまいち掴めなくて…外からも眺めたりしたんですけど…」
「あ、だからサークルに入ったり出たりを繰り返してたのか…」
ヒロシ氏が納得したように言った。
「そうなんです。それに、私は身長がないので平気かもしれませんが、背の大きなスナオさんたちが十分に入れる隙間ができるのか、わからなくて…。でもよかった。スナオさんたちが無事で」
そう言うと咲ちゃんはふわっと笑った。さっきより落ち着いたのか、ずいぶんと穏やかに笑みを浮かべた咲ちゃん。その瞬間に、とくん、と僕の胸が小さく高鳴った気がした。
「言ってましたよね、青臭いって……アホくさいだけです」
チカラ氏を助けた理由を、零がそう答えたのが聞こえた。
「逃げるはずないよな。言ってたもんな、零のやつ」
ヒロシ氏が呟いた。
それはきっと、零が僕たちを助けて、噛めば即死する猛毒が入ってるっていうガムをくれたときのことだと思う。本当は発信機が入ってたんだけど。
どうして義賊なのかって聞いたら、零はこう言ってた。
『一度死んだ人間、いつでも死ねる人間、そんな人間だからこそできることもある。そんな人間だからこそできる救いも、あるんじゃないかなあと思いまして』
「何の話ですか?」
咲ちゃんが聞いてきた。
「俺たち、義賊の話」
ヒロシ氏が何だかかっこつけたような言い方をした。なにそれ、全然かっこよくないよ。
「え~?」
咲ちゃんが可笑しそうに笑った。
「うああああ!し、死んでる…!!」
末崎さんの裏返った叫び声で、僕たちは凍りついた。
見えてしまった悲惨な光景に耐えきれず顔を背けた。
僕たちみたいに隙間を作ることができない、5のサークルにいた人たちは、鉄球によって、押しつぶされていたんだ。
咲ちゃんに見せないように彼女の視界を遮る。不安そうな咲ちゃんに、首を横に振って「見ちゃダメ」って伝えた。
鉄球がゆっくりと、元の位置に戻っていく。サークルにかけられた鍵は外され、扉が開かれた。
「サークルの中にいた人間は全員合格。本大会への出場権利を獲得したことを認めます」
女の人が、下に降りながら、説明する。
「この中にいたやつはって…」
「ぜ、全員合格って言っても…」
5のサークルにいた人たちは、担架で運ばれて行った。そのほとんどが、きっと、もう…。
「ただし、何人かの生存確認と、ルールの確認が必要な者が若干1名いるようね」
自分の荒い息遣いと早鐘を打つ心臓の音が聞こえる。額に冷や汗がにじむ。
生きてる…?
痛みは感じない。
隣のサークルから、「ひゃあ!」という短い悲鳴が聞こえた。
そーっと目を開けたら、至近距離に鉄が迫っていて、思わず僕も声が出そうになった。
ずっと僕の手を握ってくれていた、咲ちゃんを見る。
「ね?大丈夫だったでしょう?」
こちらを見つめる咲ちゃんは、こんな時でも笑顔を浮かべていた。
けれど、顔は真っ青だし、僕の手を握る手は震えている。なのに、笑って気丈に振る舞っている。
本当は咲ちゃんも怖かったんだ。そりゃそうだよね。怖くないわけないよね。僕だって心臓が飛び出そうなくらい怖かったんだから。しかも咲ちゃんはこの前まで高校生だったんだよ。いくらあの零の妹だからって、咲ちゃんは、まだ小さな女の子なんだから。
零が、これはサイコロの目を当てるゲームじゃなかったと説明するのが聞こえてきた。
サイコロの出目は問題でないと気づけるかどうか、そして、鉄球とサークルの間にできる隙間の問題だと気づく観察力があるかどうか。
つまり、このサークルに鉄球を落とした時、鉄球とサークルの間に人間が入れる空間ができることを見抜けるかどうか、という問題だったと。
こんなことを今の状態で説明できるのが僕は信じられなかった。
「咲ちゃんも気づいてたの?」
まさかと思って聞いてみた。
「はい…確信はありませんでしたけどね。下からだと鉄球の大きさがいまいち掴めなくて…外からも眺めたりしたんですけど…」
「あ、だからサークルに入ったり出たりを繰り返してたのか…」
ヒロシ氏が納得したように言った。
「そうなんです。それに、私は身長がないので平気かもしれませんが、背の大きなスナオさんたちが十分に入れる隙間ができるのか、わからなくて…。でもよかった。スナオさんたちが無事で」
そう言うと咲ちゃんはふわっと笑った。さっきより落ち着いたのか、ずいぶんと穏やかに笑みを浮かべた咲ちゃん。その瞬間に、とくん、と僕の胸が小さく高鳴った気がした。
「言ってましたよね、青臭いって……アホくさいだけです」
チカラ氏を助けた理由を、零がそう答えたのが聞こえた。
「逃げるはずないよな。言ってたもんな、零のやつ」
ヒロシ氏が呟いた。
それはきっと、零が僕たちを助けて、噛めば即死する猛毒が入ってるっていうガムをくれたときのことだと思う。本当は発信機が入ってたんだけど。
どうして義賊なのかって聞いたら、零はこう言ってた。
『一度死んだ人間、いつでも死ねる人間、そんな人間だからこそできることもある。そんな人間だからこそできる救いも、あるんじゃないかなあと思いまして』
「何の話ですか?」
咲ちゃんが聞いてきた。
「俺たち、義賊の話」
ヒロシ氏が何だかかっこつけたような言い方をした。なにそれ、全然かっこよくないよ。
「え~?」
咲ちゃんが可笑しそうに笑った。
「うああああ!し、死んでる…!!」
末崎さんの裏返った叫び声で、僕たちは凍りついた。
見えてしまった悲惨な光景に耐えきれず顔を背けた。
僕たちみたいに隙間を作ることができない、5のサークルにいた人たちは、鉄球によって、押しつぶされていたんだ。
咲ちゃんに見せないように彼女の視界を遮る。不安そうな咲ちゃんに、首を横に振って「見ちゃダメ」って伝えた。
鉄球がゆっくりと、元の位置に戻っていく。サークルにかけられた鍵は外され、扉が開かれた。
「サークルの中にいた人間は全員合格。本大会への出場権利を獲得したことを認めます」
女の人が、下に降りながら、説明する。
「この中にいたやつはって…」
「ぜ、全員合格って言っても…」
5のサークルにいた人たちは、担架で運ばれて行った。そのほとんどが、きっと、もう…。
「ただし、何人かの生存確認と、ルールの確認が必要な者が若干1名いるようね」