きっと、大丈夫だよ。
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side:スナオ
「へっ何っ!?」
離れたところから、裏返った声が聞こえた。
急に部屋に人が溢れたことに驚いた咲ちゃんが声をあげたみたい。
サークルから人が出たことを理解したらしく、胸に手をおいて、ふーと息を吐いている。
咲ちゃんはさっきからいろんなサークルに入ったり出たりを繰り返して意味わかんないし、零は2のサークルに入ってからずっと考えっぱなしだし、僕たちはどうしたらいいかわからなかった。
「何で2?」
1から大勢の人が出て行った後も、零はこの2のサークルの中をウロウロしてて、ついには檻に背をもたれ掛けた。ここに決めるつもりなのかな?
「2が正解なのか?」
ヒロシ氏が確認する。
「それは…」
頭上の鉄球を見ながら、何か言葉を選んでいるのか、零ははっきりと言ってくれない。
「それは?」
僕はもどかしくて、続きを催促した。
「落ちてみないと分かりません」
零はとんでもないことを言った。
「えええぇぇ…!?」
零の言葉に自分がものすごく落胆したのがわかる。
なんだよそれ…
「落ちてみないとって…」
「落ちたら死ぬだろ」
「でも、これしかないと思うんです…たぶん…」
「わけわかんねぇ」
僕とヒロシ氏が狼狽えていると、零は咲ちゃんのいる方を見た。
え、まさか咲ちゃん呼んじゃうの?嘘でしょ、まだここが正解だっていう確証がないのに?
「咲っ!こっちにおいで」
本当に呼んだ…。
「はーい」
こちらを振り向いた咲ちゃんは、兄から呼ばれて嬉しいのか笑顔で駆けてきて、躊躇うことなく零のいる2のサークルに入った。
え、いやいやいや…!
「ちょちょ、ちょっと、咲ちゃん、よく迷いなく入れるね」
「へ?1人より、お兄と一緒の方がいいですから」
「いや、そうじゃなくて…」
どうして零も咲ちゃんも、こんなに平然としていられるんだろう。答えを聞けたら納得するかもしれないのに、それができないのがもどかしかった。僕がもっと賢かったらよかったのに…。
咲ちゃんは零の隣に並ぶと、腰を下ろした。
「まあ、2人も座ってください」
そう言いながら、零は体育座りをする。
「何言ってるんですか…」
「スナオさん、ほら、どうぞ」
咲ちゃんまで、自分の隣の床を叩いて僕を呼ぶ。
僕の隣ではヒロシ氏が両腕で頭を抱えている。
「んあああああ!!!しゃあない!!」
突然雄叫びをあげると、ヒロシ氏はサークルの中に入って行った。
えっえっヒロシ氏待ってよ、もーー!!
「うあああ!!」
意を決して僕もサークルの中に飛び込んだ。言われた通り咲ちゃんの隣に座る。
「よかった」
咲ちゃんは僕を見て、にっこり微笑んでいる。そんな可愛い顔されても今は癒されないよ…。
「2が正解なんですか?そうなんですか?」
僕たちがサークルに入るのを見ていたチカラ氏が、駆け寄ってきた。チカラ氏の顔には、すがりたい気持ちと、恐怖がにじみ出ていて、いつもより険しい表情をしていた。王になれるかもと言っていた時とは全然違う。そりゃそうだ。命がかかっているんだから。
「いや…それは、まだわかりません」
「え…?じゃあ、咲氏は?」
「すみません、チカラさん。わからないんです」
不明瞭な解答に、チカラ氏の顔がみるみるうちに青くなっていった。
「じゃあさっきのは、1が出るって説を否定しただけ…」
「はい」
零は視線を下げたまま答えた。
「そんな無責任な!」
「だったらなんだよ。命救ってくれた、零の言葉だぞ。わかんないつったって、信じるしかないだろ」
ヒロシ氏がチカラ氏に突っかかる。
「俺は、零に賭ける」
ヒロシ氏が力強く言った。
「賭けるって…スナオ氏は?」
「えっ…」
僕に振られて、正直答えに困った。でも、ヒロシ氏が信じるって言ってるから…。
「う、うん…」
僕は頷くことしかできなかった。
「…騙されるのもいい加減にしたらどうですかあ?」
チカラ氏が顔を歪めながら言った。何を、言いだすんだ?チカラ氏…?
「騙されるって、俺たちが?零に?」
ヒロシ氏が聞き返す。
「騙したじゃないですかあ。世界を救うとか出来もしない青臭いこと言って…」
チカラ氏、それは…。ほら、零が下向いちゃったじゃないか…。
言った後で、チカラ氏は自分がまずいことを口にしたってことに気づいたような顔をしてた。顔背けたし…。分かってるなら、言わなきゃいいのに…。
「救ってもらっといて、その言い方はないだろ」
ヒロシ氏が立ち上がった。
「救ったっていうか、死ぬの邪魔されただけでしょう」
「お前なあ…」
ヒロシ氏の声に少しずつ怒りが込められていくのがわかる。チカラ氏もだんだん意地になってきてる気がする…。
「義賊なんて、偽善じゃないかってずっと思ってました。見ず知らずの他人を助けて何が嬉しいんですか?一番助けてもらいたいのは僕自身ですよ!清新な空気なんて僕はいりません…僕は、お金が欲しいです」
そう言い残すと、僕たちのいるサークルから離れて行った。
「何が義賊だ、だよな?」
チカラ氏にあの末崎さんとこの弟が近寄った。
「相手が馬鹿だったから金取り返せただけだろ」
大きな声で、こっちに聞かせるようにセイギくんは言った。
「その、馬鹿な詐欺やってたの、あんたの兄貴。さっきまでこれはグラサイだって騒いでたおっさんだよ」
座りながら、ヒロシ氏は言った。
絶対、ヒロシ氏はイライラがマックスになってる。普通ならあの末崎さんの弟みたいな人に突っかかったりしないのに。そんな笑いながら言ったらセイギくん怒るって…!ああ、ほら来ちゃったよ!
「んだと?」
「零を見くびってると痛い目見るって言ってんだよ。兄弟揃って」
セイギくんめちゃくちゃこっち睨んでるし…。ヒロシ氏が余計なこと言うからああー!まあ確かに言いたいことはわかるけど…。
「締め切り5分前!」
女の人が残り時間を言ってくれたおかげで、セイギくんはそこから離れてくれた。
「お兄?大丈夫?」
「…ああ」
咲ちゃんが零の顔を覗き込んでいる。
「咲ちゃん、零のことあんなふうに言われて腹立たないのか!?」
チカラ氏の言葉に対して、何も反論しなかった咲ちゃんに、ヒロシ氏が怒りをぶつけているようだった。
「ヒロシ氏…」
「怒れないですよ」
咲ちゃんはどことなく悲しそうな声を出した。ヒロシ氏が眉間に皺を寄せる。
「なんで…」
ヒロシ氏が呟いた。
「事情は分かりません。けど、命を絶とうとするほど思い詰めてたんですよね。ヒロシさんだって、スナオさんだって。そこに突然現れたお兄によって、人生が変わってしまった。義賊のことも、私はよく知りません…でも、なんて言ったらいいか分からないんですけど……チカラさん、さっきすごく苦しそうでした。そんな人を責めるようなこと、私にはできません。責めたところで、チカラさんのことをさらに苦しめるだけだと思うんです」
咲ちゃんはそう言って、曲げた膝に顔を伏せた。
ヒロシ氏は、咲ちゃんの言葉にただ呆然としていた。
零は咲ちゃんの頭を静かに撫でた。
この2人は、兄妹揃って、なんてお人好しなんだ…。
「へっ何っ!?」
離れたところから、裏返った声が聞こえた。
急に部屋に人が溢れたことに驚いた咲ちゃんが声をあげたみたい。
サークルから人が出たことを理解したらしく、胸に手をおいて、ふーと息を吐いている。
咲ちゃんはさっきからいろんなサークルに入ったり出たりを繰り返して意味わかんないし、零は2のサークルに入ってからずっと考えっぱなしだし、僕たちはどうしたらいいかわからなかった。
「何で2?」
1から大勢の人が出て行った後も、零はこの2のサークルの中をウロウロしてて、ついには檻に背をもたれ掛けた。ここに決めるつもりなのかな?
「2が正解なのか?」
ヒロシ氏が確認する。
「それは…」
頭上の鉄球を見ながら、何か言葉を選んでいるのか、零ははっきりと言ってくれない。
「それは?」
僕はもどかしくて、続きを催促した。
「落ちてみないと分かりません」
零はとんでもないことを言った。
「えええぇぇ…!?」
零の言葉に自分がものすごく落胆したのがわかる。
なんだよそれ…
「落ちてみないとって…」
「落ちたら死ぬだろ」
「でも、これしかないと思うんです…たぶん…」
「わけわかんねぇ」
僕とヒロシ氏が狼狽えていると、零は咲ちゃんのいる方を見た。
え、まさか咲ちゃん呼んじゃうの?嘘でしょ、まだここが正解だっていう確証がないのに?
「咲っ!こっちにおいで」
本当に呼んだ…。
「はーい」
こちらを振り向いた咲ちゃんは、兄から呼ばれて嬉しいのか笑顔で駆けてきて、躊躇うことなく零のいる2のサークルに入った。
え、いやいやいや…!
「ちょちょ、ちょっと、咲ちゃん、よく迷いなく入れるね」
「へ?1人より、お兄と一緒の方がいいですから」
「いや、そうじゃなくて…」
どうして零も咲ちゃんも、こんなに平然としていられるんだろう。答えを聞けたら納得するかもしれないのに、それができないのがもどかしかった。僕がもっと賢かったらよかったのに…。
咲ちゃんは零の隣に並ぶと、腰を下ろした。
「まあ、2人も座ってください」
そう言いながら、零は体育座りをする。
「何言ってるんですか…」
「スナオさん、ほら、どうぞ」
咲ちゃんまで、自分の隣の床を叩いて僕を呼ぶ。
僕の隣ではヒロシ氏が両腕で頭を抱えている。
「んあああああ!!!しゃあない!!」
突然雄叫びをあげると、ヒロシ氏はサークルの中に入って行った。
えっえっヒロシ氏待ってよ、もーー!!
「うあああ!!」
意を決して僕もサークルの中に飛び込んだ。言われた通り咲ちゃんの隣に座る。
「よかった」
咲ちゃんは僕を見て、にっこり微笑んでいる。そんな可愛い顔されても今は癒されないよ…。
「2が正解なんですか?そうなんですか?」
僕たちがサークルに入るのを見ていたチカラ氏が、駆け寄ってきた。チカラ氏の顔には、すがりたい気持ちと、恐怖がにじみ出ていて、いつもより険しい表情をしていた。王になれるかもと言っていた時とは全然違う。そりゃそうだ。命がかかっているんだから。
「いや…それは、まだわかりません」
「え…?じゃあ、咲氏は?」
「すみません、チカラさん。わからないんです」
不明瞭な解答に、チカラ氏の顔がみるみるうちに青くなっていった。
「じゃあさっきのは、1が出るって説を否定しただけ…」
「はい」
零は視線を下げたまま答えた。
「そんな無責任な!」
「だったらなんだよ。命救ってくれた、零の言葉だぞ。わかんないつったって、信じるしかないだろ」
ヒロシ氏がチカラ氏に突っかかる。
「俺は、零に賭ける」
ヒロシ氏が力強く言った。
「賭けるって…スナオ氏は?」
「えっ…」
僕に振られて、正直答えに困った。でも、ヒロシ氏が信じるって言ってるから…。
「う、うん…」
僕は頷くことしかできなかった。
「…騙されるのもいい加減にしたらどうですかあ?」
チカラ氏が顔を歪めながら言った。何を、言いだすんだ?チカラ氏…?
「騙されるって、俺たちが?零に?」
ヒロシ氏が聞き返す。
「騙したじゃないですかあ。世界を救うとか出来もしない青臭いこと言って…」
チカラ氏、それは…。ほら、零が下向いちゃったじゃないか…。
言った後で、チカラ氏は自分がまずいことを口にしたってことに気づいたような顔をしてた。顔背けたし…。分かってるなら、言わなきゃいいのに…。
「救ってもらっといて、その言い方はないだろ」
ヒロシ氏が立ち上がった。
「救ったっていうか、死ぬの邪魔されただけでしょう」
「お前なあ…」
ヒロシ氏の声に少しずつ怒りが込められていくのがわかる。チカラ氏もだんだん意地になってきてる気がする…。
「義賊なんて、偽善じゃないかってずっと思ってました。見ず知らずの他人を助けて何が嬉しいんですか?一番助けてもらいたいのは僕自身ですよ!清新な空気なんて僕はいりません…僕は、お金が欲しいです」
そう言い残すと、僕たちのいるサークルから離れて行った。
「何が義賊だ、だよな?」
チカラ氏にあの末崎さんとこの弟が近寄った。
「相手が馬鹿だったから金取り返せただけだろ」
大きな声で、こっちに聞かせるようにセイギくんは言った。
「その、馬鹿な詐欺やってたの、あんたの兄貴。さっきまでこれはグラサイだって騒いでたおっさんだよ」
座りながら、ヒロシ氏は言った。
絶対、ヒロシ氏はイライラがマックスになってる。普通ならあの末崎さんの弟みたいな人に突っかかったりしないのに。そんな笑いながら言ったらセイギくん怒るって…!ああ、ほら来ちゃったよ!
「んだと?」
「零を見くびってると痛い目見るって言ってんだよ。兄弟揃って」
セイギくんめちゃくちゃこっち睨んでるし…。ヒロシ氏が余計なこと言うからああー!まあ確かに言いたいことはわかるけど…。
「締め切り5分前!」
女の人が残り時間を言ってくれたおかげで、セイギくんはそこから離れてくれた。
「お兄?大丈夫?」
「…ああ」
咲ちゃんが零の顔を覗き込んでいる。
「咲ちゃん、零のことあんなふうに言われて腹立たないのか!?」
チカラ氏の言葉に対して、何も反論しなかった咲ちゃんに、ヒロシ氏が怒りをぶつけているようだった。
「ヒロシ氏…」
「怒れないですよ」
咲ちゃんはどことなく悲しそうな声を出した。ヒロシ氏が眉間に皺を寄せる。
「なんで…」
ヒロシ氏が呟いた。
「事情は分かりません。けど、命を絶とうとするほど思い詰めてたんですよね。ヒロシさんだって、スナオさんだって。そこに突然現れたお兄によって、人生が変わってしまった。義賊のことも、私はよく知りません…でも、なんて言ったらいいか分からないんですけど……チカラさん、さっきすごく苦しそうでした。そんな人を責めるようなこと、私にはできません。責めたところで、チカラさんのことをさらに苦しめるだけだと思うんです」
咲ちゃんはそう言って、曲げた膝に顔を伏せた。
ヒロシ氏は、咲ちゃんの言葉にただ呆然としていた。
零は咲ちゃんの頭を静かに撫でた。
この2人は、兄妹揃って、なんてお人好しなんだ…。