大学三年生
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バイト先で宗像くんと別れてから二週間。結局私は彼の言いつけ通り芹澤くんにあの日のことを話さなかった。宗像くんの不在であからさまに不機嫌になっていく芹澤くんには申し訳ないとも思ったが、正直彼が何を隠したがっているのかもわからなかったし二人の間に私が踏み込むべきではないと判断した。余計なことをして彼らの関係を拗らせてしまうのはこちらも本意ではない。
「……あいつ既読すらつけねえんだよ。」
「ああ、ライン?」
講義後、心底不満げな芹澤くんが唇を尖らせながらパソコン画面と睨み合っている。ここのところ眉間に皺が増える一方の彼は荒々しくキーボードを叩き、機械を壊す勢いでエンターを押した。荒んでいる原因は無論宗像くんである。
「せめて安否確認くらいさせろっての。あークソ許さん絶対飯奢らせてやる。」
芹澤くんは宗像くんが消えてからずっと連絡を取ろうと試みているが彼からの応答は一向にない。通話はおろかラインも一文字たりとも返ってこず、最早自宅にスマホを置いていっているのではと疑うレベルだ。それ故芹澤くんはこれ程までに憤慨しているのだが、宗像くんを突き放すなどという発想が微塵も浮かんでこないところが二人が友達である所以。
「とか言いながらゼミのPDF作ってるの愛だよね。」
「んな気色悪いもんじゃねえって、最近暇なだけだし。」
講義前から開きっぱなしだったパソコンは宗像くんが休んでいる間の資料をまとめるためのもの。腹を立てながらも態々面倒くさい作業を買って出る。こういうお人好しな部分をきっと宗像くんも好ましく思っている筈で、彼が芹澤くんを手放せない理由の一つでもあるのだろう。
「すぐばれる嘘吐かないの、目の下隈できてるし。」
「……これはあれだ、アイライン?」
「だとしたら塗りすぎだから。」
今日のレジュメをファイルに仕舞いつつ吹き出すと芹澤くんの口元もほんの少しだけ緩んだ。私との会話が彼の気分転換になれたら、だとか。そんな烏滸がましい考えを頭の中で振り払って一足先に教室を出た。