大学四年生
設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……あ。」
「どったの?」
カフェでお茶をしているとスマホに通知が届き、送り主の名前を確認してしてすぐトーク画面を開いた。「会えました!」の文言と共に送られてきたツーショット写真はどちらの顔も幸せに満ちていて、こちらも自然と頬が緩む。
「これ。」
「お、草太の奴やぁっと鈴芽ちゃんとこ行ったのか。俺らには連絡の一つも寄越さねぇくせによ。」
「まあまあそう拗ねないの……あ。」
スマホを見せると朋也はふ、と目を細めたあと宗像くんへの文句を吐きながらコーヒーに口付けた。可愛い焼きもちを宥めていると続けてまた通知が届き、飛び込んできた「宗像草太」の文字に思わず声を漏らす。
「宗像くんが芹澤にもよろしく言っといてくれって。」
「だから何で直接俺に連絡してこねえんだよあいつは!」
ご立腹の彼が残り少ないフルーツタルトを自棄になって頬張る。宗像くんも揶揄いのつもりでわざとやってるんだろうなと、彼らの独特な友情を少し羨ましく感じながらこちらもショートケーキにフォークを刺した。
「宗像くんこれからどうするのかな。」
「とりあえず鈴芽ちゃんと環さんに顔見せたらこっち戻っては来んじゃん?卒業式は出るとか何とか言ってたし。」
「良かった、単位足りてるんだ。」
「その辺は一応計算してたらしいぜ。あいつ教授からの信頼も厚いんだよなぁ……。出席ある授業もあの顔でごり押しすりゃ許してもらえるみてぇでさ、まじ不公平の極み。」
「まあ、勤勉な態度にあの美貌だし鬼に金棒だよね……。」
彼の整った造形に思いを馳せているとふと朋也の長い前髪が視界に入った。この柄の悪そうな見た目とも春にはおさらばだ。これはこれで格好良いからちょっと勿体ない気もする。
「にゃぁになまえちゃん見惚れてんの?」
「んー、まあそんなとこ。」
「えっ。」
正直に答えると肩を跳ねさせ赤くなる朋也。こういう可愛さをもっと全面にアピールすればモテるだろうに、というのは変に女子人気が高まっても困るので言葉にしてあげない。
ティーポットから紅茶のおかわりを注ぎカップに手をつける。飲む度に漂ってくる茶葉の香りが安心感をくれ、ゆっくりと流れる時間に息を吐いた。
「朋也、こっち見て。」
「ん、おお。」
他のお客さんの迷惑にならないよう気をつけながら、二人で同じ画角に収まりシャッターボタンを押す。我ながらよく取れた写真をフォルダから選び、すぐさま彼女のアカウントに送った。
「俺のこと褒めてる?」
「いやまだ既読ついてないから。」
そわそわと何かを期待してる朋也を一旦落ち着かせ話を宗像くんの進路に戻す。大学卒業はできるとして彼は今後どうするつもりだろう。堅実な宗像くんのことだから私たちが心配などしなくとも自力で逞しく生きていくのだろうが。
「草太教師になんのは諦めねぇって。」
「そうなの?」
「ああ、一年浪人してまた教員試験受けるらしい。家業とバイトの傍らで勉強し直すんだってさ。」
「そっか、良かった。」
家業のせいで宗像くんが夢を諦めなくてはならないというのは、私たちが一番望んでいないことだった。宗像くんは人に助言する割に自分の扱いが雑なので、いつかこれまで積み重ねてきた努力を簡単に手放す日が来るのではという懸念がずっと拭えなかった。恐らく今彼が自分の人生を捨てずにいられているのは、鈴芽ちゃんとの出会いがあったからなのだろう。本当に彼女には感謝してもしきれない。
「あ、ふふ。」
「お、返信きた?」
「ほらこれ。」
「あ~、やっぱお似合いに見えちゃうんだわ俺ら。」
「素敵カップル!!!」と興奮した返事が届きハートを持っている熊のスタンプが三つも投下される。無垢な反応に「可愛いねえ」と二人で勝手に癒され、それから空になったお皿を眺めて立ち上がった。
「そろそろ行くか。」
「うん、結構時間余裕あるね。」
今日はこれから映画館デートだ。彼から貰ったクリスマスプレゼントのコートを着て首元が冷えないようしっかりとマフラーを巻く。「よし、おっけい」とスマホを鞄に入れ準備完了の合図をすると、朋也がじっと私を見つめて口元を手で覆った。
「俺の彼女可愛い~。」
「何をしみじみと。」
急に惚気始めた彼の脇腹を軽く叩きレジへと向かう。お会計を済ませ店を出ると北風が頬に差し、私たちはたまらずぴったりと寄り添った。
「さっぶ。」
「映画館まで三分くらいだっけ。」
「それすらきつくね?」
「わかる、耐えられない。」
季節に対する文句を言い合っていればあっという間に目的地に到着する。下りてくるエレベーターを待ちながら、素敵カップルの名に恥じぬようポケットの中でお互いの指を絡めていた。