大学四年生
設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「っ鈴芽!」
夜の終わりを告げる光が差し、ふいに環さんが立ち上がった。薄らと目を開けると眩しさの向こうからこちらに歩いてくる二人の影が見える。嗚呼、帰ってきたのだ。
「おーい!環さーん!」
「芹澤?みょうじさんまで……?」
元気よく手を振る鈴芽ちゃんといる筈のない友人の姿に驚く宗像くん。夜明けと共にやってきた二人は穏やかな顔で肩を並べ、しっかりと大地を踏みしめていた。きっと彼が、彼女が、私たちに朝を連れてきてくれたのだ。そんな風に思った。
「鈴芽!無事!?」
「何も問題なし!環さんたちずっとここで待っててくれてたの?」
「当たり前やがね!ほんま無茶ばっかりしてこん子は……!」
「ご、ごめんなさい~。」
勢いよく駆け出した環さんはそのスピードを緩めることなく鈴芽ちゃんを抱き締めた。力が込められた両腕は大事な宝物を抱えるみたいに彼女の背中に回り、大人の全体重を乗せられた鈴芽ちゃんが反射的に一歩後ずさる。しかし昨日とは違って彼女が環さんからの愛を蔑ろにすることはなく、踏み止まった両足でしっかりとその涙を受け止めた。
「……ありがとう、環さん。」
二人の抱擁に何だか私まで視界が潤んでいると、宗像くんがゆっくり近づいてきて頭を下げた。彼はいつも通り涼し気で整った造形をしていたが、纏う雰囲気はまるで別人のようだった。それが鈴芽ちゃんのおかげだということは言うまでもない。寂しさの抜け落ちた宗像くんの素顔は、目が眩む程に美しかった。
「まさか二人がいるとは思わなかった。」
「第一声それかよ!」
「いや……ありがとう。心配してくれてたのか。」
「誰が。」
「教員試験来なかったってずっと膨れてたよ。宗像くんの様子気になりすぎて家まで行って。」
「なまえちゃん!!!」
宗像くん相手にはどうにも素直になれない朋也の気持ちを代弁すると慌てて制止を掛けられた。私が肩を震わせると宗像くんもつられるように笑みを零し、本音をばらされ照れていた朋也も安心したのかくしゃりと顔を綻ばせた。
一頻り再会を喜んだ鈴芽ちゃんと環さんが私たちの元に集まってきて、温かな空気が辺りに漂う。私は改めて二人に向き合い、どうしても直接伝えたかった言葉を漸く口にした。
「二人とも、おかえり。」
「「ああ/はいっ、ただいま。」」
溌溂とした声ととびきりの笑顔が返ってきて思わずこちらの頬も緩む。二人の目の奥にあった薄暗さはとうにどこかへ消えていて、晴れ空のような澄み切った青だけが世界を映していた。