大学四年生
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次の日の朝、私も彼も随分早くに目が覚めた。決して眠れなかったのではない。ただ行かなければという思いがどちらの胸にもあったのだ。今日こそ宗像くんを探し出すのだという、強い思いが。
昨日と同じパーキングに駐車し、迷うことなく彼の部屋までの道を辿る。薄い木製のドアの前に並んで立ち、朋也が声を掛けるのを待った。
「草太、いるのか?鈴芽ちゃん?」
何度かノックを繰り返すも中はやはり無人のようで誰からも返事はない。試しにドアノブを回せばいとも簡単に扉は開き、私たちは頷き合ってそこに足を踏み入れた。
「わ……。」
「すげえな。」
宗像くんの八畳ほどの書斎はめちゃくちゃに荒れていた。三つある本棚のうち一つの木棚が倒れ、畳には大量の本が散らばっている。昨日の地震のせいか、とすぐにその惨状の理由に気づき落ちていた一冊の古文書を手に取った。破れかけたページが揺れの大きさを物語っており、部屋の薄暗さがより不安を増幅させた。
「片づけよっか。」
「ん、そうだな。」
それから私たちは本棚を元の位置に起こし、散乱している本をあるべき場所に収めていった。大学のテキストや参考書に交ざる古い和装本。他の棚にもぎっしりと並べられているこれらは、恐らく彼の家業に関係しているものなのだろう。宗像くんが私のバイト先で買っていったものもいくつかある。開いて中身を読んでみるとそのどれもが災害に関連するものだとわかり、さらに胸は騒めいた。
「……ね、これ。私たちがやっちゃっていいのかな。」
「え。」
半分ほど片づけたところでふとある思いが頭を過った。鈴芽ちゃん。宗像くんと同じような強い目をした女の子。この部屋の片づけは、本来彼女がやるべきなのではないだろうか。本当にこのまま自分たちが全てを綺麗にしてしまって良いものだろうか。何故だか唐突に、そんなことを思った。
「……だよな。」
奇妙なことを口走っている自覚はあったが、朋也から帰ってきたのは意外にも肯定の言葉だった。彼もまた、私と同じことを考えていたらしい。私たちは本に伸ばしていた手を引っ込め、ゆっくりと立ち上がった。
私にも馴染み深い宗像くんの部屋。本に囲まれた小さな隠れ家のようなこの部屋で、彼はきっと毎日勉強をし、努力を続け、教師という夢を追いかけてきたのだろう。それを、理由はどうあれこんな形で終わらせるなんて。
「……待ってろよ草太。」
珍しく宗像くんに対して素直な気持ちを吐露した朋也が私の手をぎゅっと握った。こちらも「行こう」と力を込め彼の決意に同調を返す。
片づけは途中で放棄されたまま。私たちは足早に車へと戻った。