大学四年生
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鈴芽ちゃんがいなくなったあと、我に返った私たちは宗像くんの部屋の窓と扉を閉め彼女を追いかけた。しかし想像以上に現役高校生の足は速く、どこにも姿が見つからない。宗像くん宅の最寄り駅である御茶ノ水から水道橋を中心に走り回るも疲労ばかりが蓄積され全く成果は得られなかった。
「はあ……。」
汗を拭い空を見上げるとすでに陽が傾きかけている。せめて彼女の連絡先を聞いておくべきだったと自分の迂闊さにため息を漏らしていると、次の瞬間足元が大きく揺れた。
「ぅ、わ!?」
体が浮いてしまうような縦揺れが一回。私は衝撃で思わず声を上げた。どこか安全な場所に移動した方が良いだろうかと周囲を確認したが幸いにも次の揺れが来る様子はない。一先ず胸を撫で下ろし、タイミング良く鳴ったスマホをポケットから取り出した。
「もしも「なまえ今どこ!?怪我ねえ!?」……ふふ。」
声量から心配が伝わってきて笑みが零れる。「笑い事じゃねえって」という彼の言葉に何だかさっきまでの緊張が解け、私はその場に屈み込んだ。
「大丈夫、ありがとう。」
「ん、なら良いけど。」
「そろそろ合流する?」
「……そうだな、一旦飯食ってあとは車で探そうぜ。」
「賛成。」
通話を終了させゆっくりと体を持ち上げる。自分を奮い立たせるためわざと「よし」と深く頷き、呼吸を整え気合を入れた。車を停めてあるパーキングまで戻ると朋也が駐車料金を払っている最中で、「これでまた金が飛ぶ……」とげっそりした顔で嘆いていた。
それから私たちは某ハンバーガーショップで腹ごしらえをし、時間も気にせず夜の街を走り続けた。賑わう歩道を車内から注意深く眺め、似ている女の子を見つける度車を路肩に寄せた。しかし、どれだけ探しても鈴芽ちゃんが見つかる気配は一向になかった。
「……明日また出直すか。」
まだ諦めきれないといった様子で朋也が悔しそうにそう呟いたので私も納得するしかなかった。確かに明日になれば鈴芽ちゃんもあの家に帰ってきているかもしれない。可能性は限りなくゼロに等しいだろうが、望みを捨てるわけにはいかなかった。宗像くんに会うには、絶対にあの子が必要なのだ。
「帰ろう。」
私がそう口にすると朋也は思いつめた表情でアクセルを踏んだ。流れていく景色を横目で見ながら、私たちは何も話さなかった。