瓶詰めこぼれ話
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「なーにやってんの俺……。」
校舎の角を曲がってみょうじの姿が完全に見えなくなると俺はずるずると壁にもたれかかり口許を手で覆った。
ちゅー、しちゃったじゃん。って今さら頭抱えても遅いんだけど。
「はぁ~~~……。」
盛大なやらかしに思わずでかいため息が出る。最近の瀬呂くん我慢きかなくてほんとやんなっちゃうね。誰より一番大切にしたいと思ってんのは事実なのに。自分のあまりの欲深さに苦笑が漏れる。
みょうじとのデートがすげー楽しくて名残惜しそうにその場から離れようとしないみょうじがすげー可愛くて。ほんの一瞬理性のタガが外れた。やばいと思った時にはもう遅くて。物欲しそうな瞳も真っ赤な顔も、全部が俺だけに向けられてんだって実感すればいてもたってもいられなかった。まじで何やってんだろね。
「……やーらかかったな。」
自分の唇を指で触ってさっきの感触を確かめる。より近い距離でみょうじを感じられた喜びと衝動に身を任せてしまった後悔が混ざり合って本日二度目のため息が出た。今後普通に会話できればいーけど。
「や、無理だよな……。」
期間はどうあれ避けられる未来しか見えない。さっきも固まっちゃってたもんなあ。一か月とか口きいてくんなかったら冗談抜きでな泣くかもしんない。
段階踏まずに行動することがどんだけ己の首を絞めるか思い知る。つーかこれ絶対耳郎あたりに怒られんでしょ。自業自得すぎるからもちろん受け入れるけど。
親父さんとのこと決着つくまで待つって決めたっつーのにちょっと油断したらこの体たらくよ。我ながら情けない。愛想尽かされたらどうしようとか珍しく不安になってきた。
それでも驚きと戸惑いにほんの少し嬉しさが滲んだみょうじの顔を思い出せば頬が緩んでしまう。まあこればっかりは自然現象だし許してほしい。
俺と同じ火照りをみょうじも今抱えてくれてたらいいのに、なんて。都合の良いことを願いながら一人反省会はしばらく続いた。