瓶詰めこぼれ話
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昼休み。昼食を済ませてトーナメント発表のため会場に戻っていると逆方向に走っていくみょうじを見つけて呼び止めた。
「あれ、みょうじどこ行くの。会場こっちよ。」
「あ、瀬呂くん!あの、これ。」
彼女が手に持っていたのは何やら派手な色の服。いやこれ、どう見てもチアガール的なやつだよな。何でこんなものをこのタイミングで?状況が上手く呑み込めず首を傾げればみょうじは俺の怪訝な視線を感じ取ったのか詳しい事情を教えてくれた。
「なんか午後は女子全員チアの格好しなきゃいけないんだって。上鳴くんたちから聞いたの。」
目の前の彼女は全然知らなかったよと朗らかに笑ってるがそんな話は俺も聞いてない。十中八九上鳴と峰田の企みなんだろうなこれ。とりあえずグッジョブと親指を立てたい。
「……うーん、ガンバッテ。」
「ありがと~。」
せっかく好きな子の可愛い姿が見られるチャンスだってのにそれを阻止する馬鹿はいない。純度100%でお礼を言われれば良心は痛むが俺だって健全な男子高校生だ。ここは一つあいつらの煩悩にあやからせてもらおう。
無垢なみょうじを見送って十数分後、最終戦出場者がミッドナイトのもとに集まった。案の定女子は上鳴たちを睨みつけながら恥ずかしそうにしている。南無三。
「その恰好似合ってんね。可愛い。」
早速頬を赤くしたみょうじに声を掛けると困ったように眉を下げた彼女に見上げられる。うわこの角度やばいな。鼻血出そう。
「う、あ、ありがとう。……瀬呂くんさっき気づいてたね?」
「や、ごめん。見たい欲が勝った。写真撮って良い?」
「やめてください……。」
照れる仕草に破壊力がありすぎて抱きしめたい衝動に駆られるが何とか堪える。気を紛らわせるためにおどけてスマホを構えればみょうじはさっと自分の顔を隠して抵抗した。何だこれ。余計に胸のあたりがざわざわする。思わぬ扉を開きそうになって必死で落ち着けと言い聞かせた。
その後レクリエーションから最終戦までの間女子たちに着替える素振りが見られなかったのでしっかりみょうじのポニーテールチア姿を堪能させてもらった。応援合戦でテンションが上がったのか最終的には一緒に写真も撮らせてもらえたし俺としてはこの上ないくらい満足だ。これで試合頑張れそ。
「おい……さっきのみょうじとの写真オイラにもよこせよ……。」
「んな血走った目の奴にやるわけねーでしょ。」
とか言って誰にもあげるつもりねーけど。特に峰田にはオカズになんかされたらたまんねーし。これは俺だけの宝物なの。
もう一度スマホに視線を落として楽し気な彼女の笑顔を見る。あーもうまじで頑張れそ。だらしなく緩む口元を押さえながら自分の出番に備えて観戦席へと急いだ。