エンデヴァー事務所
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少し落ち着いて考えてみると、私は万が一エンデヴァーさんが気づかなかった時の保険なのだと思う。ホークスさんの態度からしてマーカー部分に何かが隠されているのは明白で、彼はNo.1にそれを伝えたかった。けれど事情があってはっきりとは言葉に出来ない。だから知らない仲じゃない私に声をかけてきたのではないだろうか。
用意周到なホークスさんのことだ。種は多く蒔いておいた方がいいという考えで私をインターンに呼んだんだろう。普段の彼なら一人の学生にそんな大役を任せるなんてあり得ないはずけど、もしかしたらよほど切羽詰まってるのかもしれない。
思考を巡らせているとようやくエンデヴァー事務所に到着した。すごい。今まで見たどのプロヒーローの事務所より大きい。見上げれば首がもげそうなほどの高さ。一体何階建てなんだろう。
エンデヴァーさんの後に続いて恐る恐る中に歩みを進めると、すぐに何人ものサイドキックの方々が出迎えてくれた。
「ようこそエンデヴァー事務所へ!」
「俺ら炎のサイドキッカーズ!」
事務処理をしていた人たちも手を止めてこちらを見てくれている。さすがフレイムヒーローの下で働いてるサイドキック。みんな熱い。
エンデヴァーさんはそのまま社長室へと入っていった。さっきの本を手にして。彼もやっぱりホークスさんの態度が腑に落ちなかったんだなあ。私も今夜調べてみよう。
「爆豪くんと焦凍くんは初めてのインターンってことでいいね?今日から早速我々と同じように働いてもらうわけだけど‼見ての通りここ大手‼サイドキックは30人以上‼」
サイドキックの筆頭、バーニンさんが大きな声で軽く説明をしてくれる。なんていうか、エネルギーに満ちてるって感じ。彼女とは一応面識あるけど、前にお会いした時も挨拶の勢いにびっくりして後ずさっちゃったなあ。
「つまァり、あんたらの活躍する場は‼なァアい‼」
「面白ェ。プロのお株を奪えってことか。」
「そゆこと!」
爆豪くんはバーニンさんからの圧にも負けることなくにやりと口角を上げた。うーん職場体験と全く変わらない態度。あまりにふてぶてしくて緑谷くんの顔が引きつってる。わかるよ。私も前は胃が痛かった。もう慣れたけど。
「爆豪くんって敬語使うと死ぬ病気だったりする?」
「ンなわけねェだろーが‼」
思わず口を挿むと案の定キレられた。いや全然説得力ないけど。エンデヴァーさんにも即タメ口きいてたし。年上への敬意どこに落としてきたの?
「かっちゃんあんまり大きな声は……。」
「こいつの方がうるせェわ‼」
「バーニンさんのことこいつ言わないの。」
緑谷くんがどんどん真っ青になっていくのでとりあえず私も注意する。まあ効果なんてあるわけないから爆豪くんはゴーイングマイウェイなままなんだけど。大丈夫、一日経てば結構慣れるよ。そんな気持ちを込めてげっそりした緑谷くんの肩にポンと手を置いた。
そういえばベストジーニストさんのことはあんたって呼んでたなあ。戦闘能力は成長しまくりなのに失礼度は全然変わってなくてちょっと笑える。思わずにやけそうになるのをこらえていると、バーニンさんが咳払いをして仕切り直した。
「ショートくんも‼息子さんだからって忖度しないしなまえちゃんも‼顔馴染みだからって容赦しない‼せいぜいくらいついてきな‼」
「はい‼」
一度しか会ったことないのに名前覚えててくれた。嬉しすぎて元気のいい返事をすれば響いたのは私の声だけ。え、なんでみんな何も言わないの。恥ずかしくなって俯いたらバーニンさんは「威勢がいいな!」と褒めてくれた。うん、好き。
サイドキックの仕事は主にパトロール。その他に緊急要請や警護依頼、イベントオファーなど一日100件もの仕事をこなしているんだそうだ。もちろん有事の際にすぐ動けるよう、事務所で待機するメンバーもいる。最大手ならではの働き方。隅々まで目が行き届いてる。
「そんじゃあ早く仕事に取り掛かりましょうや。あのヘラ鳥に手柄ブン奪られてイラついてんだ。」
「ヘラ鳥ってホークス!?」
「んふ。」
「みょうじさん笑ってる!?」
「ごめ、ぴったりすぎてちょっと、ふふ。」
的確なあだ名に我慢できなかった。爆豪くんが絶妙にセンスあるのが悪い。次ホークスさんの顔見たら絶対思い出しちゃうなあこれ。我慢できる自信がない。
「威勢は認める。エンデヴァーの指示を待ってな!」
バーニンさんじゃないサイドキックの方がやんわり宥めてくれる。これだけ爆豪くんが横柄な態度なのに大人だ。だけど謎の待機時間に彼のイライラは募る一方。
「100件以上捌くんだろ何してんだよ。」
「エンデヴァーさんも忙しいんだよ。No.1だし。」
「ならその忙しいところ見せろって話だろうがよ。」
「学生に見せられない仕事もあるんじゃない?機密的な。」
「ンなもん事前にやっとけや!」
「私に怒鳴られても困るんですけど……。」
理不尽大魔王がいうこと聞いてくれない。貴重なインターンの時間無駄にしたくないのはわかるけどね?そろそろ緑谷くんの胃に穴が開きそうだからやめてあげて。
「口悪すぎると人気出ないよ。」
「出すわここにいる奴らよりもな‼」
「かっちゃんもうやめてヤバイ。」
「ハッハッハ、いい加減にしろよおまえ!」
もはや緑谷くん半泣きだしバーニンさんは笑いながら爆豪くんにげんこつしようとしてるし。何この状況。さっきから全然しゃべらない焦凍くんはじっとその様子を見守ってる。これ止められるの焦凍くんだけだと思うので早くエンデヴァーさん呼んできてください。
「まーしかしショートくんとなまえちゃんだけ所望してたわけだし、たぶん二人は私たちと行動って感じね!」
爆豪くんと攻防を繰り広げたあとバーニンさんは二人を指さした。え、そんな露骨に差つけるんだ。当然4人一緒に行動できるものだと思ってた。ちょっとショックで眉を下げていたら焦凍くんと目が合う。彼も同じような顔で困っていた。
「No.1の仕事を直接見れるっつーから来たんだが!」
「見れるよ!落ち着いてかっちゃん!」
憤慨する爆豪くんを緑谷くんがなんとか抑えようとする。そりゃ怒るよね。どうにかならないものか。
「でも思ってたのと違うよな。俺から言ってみる。」
「私からもお願いしてみるよ。」
さすがにこれは二人に申し訳ない。私絶対おまけで呼ばれてるはずだし。でもお願いすると言っても焦凍くんみたいな発言力があるわけじゃない。何て言えばエンデヴァーさん聞いてくれるかなあ。うーん。ぐるぐる頭を悩ませているとようやく社長室の扉が開いた。
出てきたエンデヴァーさんは、先ほどよりも怖い顔。
「ショート、トルネード、デク、バクゴー。4人は俺が見る。」
彼の纏う熱が上がっている気がした。