合同訓練
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最終試合は緑谷くん・お茶子ちゃん・三奈ちゃん・峰田くんのA組チーム対物間くん・柳さん・小大さん・庄田くん・心操くんのB組チーム。体育祭を彷彿とさせる熱いチーム分けに興奮が高まる。心操くん、緑谷くんへのリベンジ戦だ。
『第5セット目!本日最後だ!準備はいいか!?最後まで気を抜かずに頑張れよー‼』
ブラド先生の声を合図に試合が始まった。A組チームはまず緑谷くんが飛び出して先頭を走る。
「緑谷くんたちのフォーメーション、第4セットの爆豪くんたちと似てるな。」
「バランスも似てるからなー。ただ索敵係がいない分、俺らよりも慎重に動かないとすぐやられそう。」
飯田くんの指摘に瀬呂くんも同意する。機動力と戦闘力の高い緑谷くんが先陣を切って前を進み、他の三人が後方でカバーする。確かに爆豪くんたちのスタイルと一緒だ。一人でも索敵に適した人がいれば相手の位置を把握できる分もっと楽に動けると思うけど、今回はそれができない。警戒を怠れば一気に投獄されてしまう可能性もある。さっきの爆豪くんみたいに自分が囮になって相手を誘い出すなら緑谷くんは彼以上の働きをしなくちゃならない。
緑谷くんがステージを動き回っていると『キャア!』というお茶子ちゃんの叫び声が聞こえた。でも別の画面を見ても彼女が危険に陥っている様子はない。じゃあ今の心操くんか。特訓の成果出てるなあ。彼が無表情のままキャアって言ってるの想像したら面白すぎるけど。
緑谷くんはお茶子ちゃんの声に一瞬反応したけど物間くんを見つけて動きを止める。物間くんは見つかったとわかれば相変わらずよく回る口でぺらぺらとしゃべり始めた。恐らく心操くんを警戒して黙ったままの緑谷くんを煽り、返事を引き出すためだろう。ということはこの近くに心操くんも隠れてるのかな?
物間くんと緑谷くんが話しているうちに他の三人はB組チームの位置特定に急いでいた。峰田くんのもぎもぎにロープを通しそれをあたりに張り巡らせる。そこに何か反応があれば相手が近くにいるってわけだ。
『なんかくっついた!』
峰田くんが異変に気づいた瞬間、彼らのところにナットや建物の部品が飛んでくる。柳さんのポルターガイストだ。三人に当たる前に三奈ちゃんがアシッドベールで壁をつくり部品を酸で溶かした。だけど恐らく部品の反応が消えた位置でA組チームの居場所が特定されてしまう。
防いだと思えば再び大量の部品が飛んできた。三奈ちゃんがもう一度酸で溶かそうとするけど、彼女が部品に手を伸ばした瞬間それが大きなサイズに変わった。あれはきっと小大さんの個性だ。どうやら部品だと思ってたものは彼女がサイズを小さくしていたパイプやドラム缶だったらしい。このままじゃかなり重量のあるものにみんなが押し潰されちゃう。危険に気づいたお茶子ちゃんが素早く通常サイズに戻った部品に触れていき、それらの重力をなくし宙に浮かせる。
ホッとしたのも束の間、お茶子ちゃんの個性でふよふよと浮かんだ部品たちが急にあちこち飛び跳ねた。庄田くんの個性、ツインインパクトだ。迫りくるドラム缶やコンクリート壁。危なすぎる。三人はなんとかそれを避けている。
もう一度緑谷くんのいる画面に視線を戻すとやっぱりまだ物間くんはおしゃべり中だ。しかもかなり棘がある内容。
『心操くんとこんな話をしたよ。恵まれた人間が世の中をブチ壊す。彼の友人なら教えてよ。爆豪くんさ!何故彼は平然と笑ってられるんだ?平和の象徴を終わらせた張本人がさァ‼』
これが作戦だってわかってる。物間くんが心操くんとこんな話をしたかどうかも怪しいし、彼だって本心でそんなこと思ってるわけないことも。でもやっぱり、緑谷くんは爆豪くんが悩んでいたのを知っているから。頭で理解していてもカッなってしまうことはある。私もギリと唇を噛んだ。
「……え?」
緑谷くんが物間くんの言葉に顔を歪めて攻撃しようと腕を構えたその時。ぶわりと黒い鞭のようなものが彼の腕から溢れ出た。新技だろうか。いや聞いてない。それに何か様子がおかしい。緑谷くんは苦しそうに自分の手を抑えている。
これもしかして、暴発。近くの爆豪くんと目が合った。
黒い鞭は緑谷くんの体を包んだあと物間くんのいる方向に飛び出した。物間くんは避けたけど、鞭が彼の近くのパイプを掴んで離さずミシミシと音を立てて建物が崩れていく。
『心操くん‼』
物間くんが壊れた建物に向かって彼の名前を呼んだ。心臓がどくりと跳ねる。心操くんが今、あそこにいるのか。
緑谷くんは姿を現した心操くんを前に必死で腕を抑えている。それは明らかに異様な光景で周囲も少しずつ違和感に気づき始めた。
『逃げて……!力が、抑えられない!溢れる……‼』
ドッという音と共に黒い鞭が辺り一帯に広がり、緑谷くんはそれに翻弄されるがまま体の自由が利かなくなっている。私は急いで後ろを振り向いた。
「消太くん止めて!」
「相澤くん、ブラド止めた方がいいおかしいぞ!」
オールマイトとほとんど同時に叫んだ。急いで先生たち三人はステージへと向かったけど、その間にも緑谷くんは危機にさらされ続けてる。止まれ止まれと繰り返しながら腕を抑える彼の体を、黒い鞭がぐるぐると渦巻く。どうしよう、どうしよう。
何もできることなく呼吸が浅くなってると、緑谷くんの元に一つ手が伸びたのが見えた。
「お茶子、ちゃん。」
迷いなく飛び出した彼女は怯むこともなく緑谷くんに抱き着き、彼の体を抑えながら叫んだ。
『心操くん‼洗脳を‼デクくん止めてあげて‼』
その呼びかけにきっと今心操くんも考えてる。どうすれば緑谷くんを救えるか。何て言えば彼に届くか。一瞬悩んだ末に心操くんはマスクを外して大きく口を開けた。
『緑谷ァ‼俺と戦おうぜ!』
その声に応えようと緑谷くんが必死にもがく。
『~~~~ん"ん"お"お"応‼』
なんとか返事を振り絞ってすぐがくんと緑谷くんの動きが止まった。黒い鞭が彼の腕の中に吸い込まれて消える。お茶子ちゃんに抱きかかえられたままぼんやりしている緑谷くんを見て、私はようやく肩の力が抜けた。へなへなとその場に倒れ込みそうになり、近くにいた障子くんが体を支えてくれる。
モニターを見つめれば緑谷くんは意識を取り戻していて、お茶子ちゃんが安全な場所にふよふよと彼を下ろしていた。彼女に傷を負わせてしまったことに慌てていた緑谷くんだったけど、すぐにその心配はかき消される。
『え!?まだ終わってないんだけど‼』
緑谷くんの背後から現れたのは物間くんだ。大きなナットを緑谷くんに向かって投げ、すんでのところで彼はそれを避ける。
お茶子ちゃんも応戦し、ガンヘッドさん譲りの動きで物間くんの動きを止めようとする。でも彼女が彼を捕らえる前に別方向から部品が飛んできた。どうやら柳さんがポルターガイストで物間くんを庇ったみたい。
B組チームがみんな集まってきてA組チームもそれに続く。一か所で全員分の攻撃が絡み合って乱戦状態だ。
「これ、続けるつもりなのかな。」
「そのようだな。」
一向にストップがかからない状況に苦笑が漏れる。みんなまだやる気の顔してるし続行したいのはわかるけど、先生たちまで止めないとは。いくら弟子の晴れ舞台だからって消太くんも甘いよなあ。また暴発したらどうするんだろう。
私の心配をよそに試合はどんどん展開していく。心操くんの捕縛布がお茶子ちゃんに伸びてきて、彼女を庇うように緑谷くんがそれを掴む。心操くんが捕縛布をぐっと自分の元に引き戻せば力に耐えきれず緑谷くんが倒れた。
もしかして緑谷くん、個性使ってないのかな。心操くんもかなり地力が強くなってるとはいえ、ワンフォーオールを駆使して力負けするとは考えにくい。また個性が暴発するのを恐れて使用できないのかもしれない。でも緑谷くんも心操くんが目の前にいる今が攻撃のチャンスだと思ってるはず。その目はまだ諦めてないように見えるけど、どうするつもりだろう。
一方で三奈ちゃんは酸の雨を降らせて小大さんと庄田くんを足止め中。だけどB組の二人もやられてばかりじゃなく隙をついてツインインパクトで彼女に向かって部品を飛ばした。当たりそうになったところに峰田くんが割って入り、もぎもぎをクッションにして攻撃を防ぐ。おお、いつになくかっこいい。って思ってたけど彼はその衝撃を利用して三奈ちゃんの胸に飛び込んだ。最初からそれが狙いだったのか。やっぱり最低。
怒った三奈ちゃんは峰田くんを投げ飛ばし、峰田くんは人間スーパーボールになってそこらじゅうを跳ねまわっている。柳さんは絶対当たりたくないという表情で必死になって避けていた。気持ちわかるよ。
でもなかなかどうして峰田くんボールは効果が出ている。庄田くん・小大さん・柳さんは彼が動き回るせいで上手く攻撃できずその場から離れられない。
再び別の画面に目を移すと物間くんが緑谷くんとお茶子ちゃんに向かって行ってるところだった。緑谷くんに触れた彼が大きな声で叫ぶ。
『君の力、貰ったよ‼』
一瞬息が止まった。ワンフォーオールの力をコピーされたんだ。器として鍛えられてない人があんな強大な力を使ったらどうなるか。加減なしに攻撃された相手も、もちろん本人もただじゃすまない。
ひっそり危機的状況になってる中、救ってくれたのはやっぱり彼女だった。お茶子ちゃんが物間くんから攻撃を受ける前にガンヘッドさん仕込みの動きで彼の体を地面に倒す。
『デクくんのパワーじゃないハッタリだ!行って!』
その言葉を聞いてほっと胸を撫でおろす。よかった。ワンフォーオールは前に彼が言ってたスカってやつだったんだ。物間くんは悔しがる素振りを見せたけどスカじゃなかったらどうなってたかわからない。彼が命拾いしてくれて心底安心した。
体を抑えられた物間くんを助けようと、反対側の建物にいる心操くんが捕縛布を投げる。でもそれが物間くんに伸びるより、緑谷くんが心操くんの元へ駆けつけ布を掴む方が早かった。どうやらお茶子ちゃんに無重力にしてもらって瞬時に心操くんの懐にもぐる作戦だったらしい。
緑谷くんが正面から体当たりして心操くんと一緒に建物の中へと倒れ込む。二人の取っ組み合いは体育祭ぶりだ。あの時と違うのは、心操くんが誰よりも必死に努力して強くなったってこと。
『あの時の俺とは違うぞ緑谷‼』
心操くんは一瞬の内に上にあった配管に捕縛布を巻きつけ、思い切り引っ張って緑谷くんの頭上に落とした。これはきっと彼も避けきれない。そう思ったのに。
「さっきの黒いの……!?」
緑谷くんはなんとさっき暴発した黒い鞭を使って配管を止めた。何これ、今度は暴走じゃないの?使いこなしてるように見える彼の行動に混乱する。
緑谷くんの黒い鞭はそのあと一瞬で消えた。どうやら使えるようになっても痛みはあるようで彼が膝をつく。その間に心操くんは緑谷くんから距離を取ろうと走っていった。
さっき動きを封じられていた物間くんはお茶子ちゃんに縛られて投獄された。緑谷くんは心操くんを追いかけすぐにその背中を捉える。どうしよう、心操くん捕まっちゃう。そう思った途端急に緑谷くんの顔が何かの衝撃で殴られた。周りを探しても人の姿は見つからない。
「ツインインパクト……?」
「いつの間に仕掛けてたんだよ!?」
全く気づかなかった仕掛けに上鳴くんも困惑の表情を浮かべてる。もしかしてこれ物間くん?さっき緑谷くんたちと戦ってた時に触ってたのか。誰にもばれないようこっそり。策士だ。
一瞬隙ができたと思ったけど緑谷くんは怯まなかった。彼を捕らえようとした心操くんの捕縛布を掴み距離を詰め、逆に心操くんの体を抑えつけた。これはきっと、緑谷くんの勝ちだ。
三奈ちゃんたちの方は峰田くんが庄田くんに捕まってピンチ。柳さんのポルターガイストがさく裂して三奈ちゃんも苦しんでたけど急にピタリと物の動きが止む。物間くんの投獄が終わったお茶子ちゃんがいつの間にか加勢に来てくれていた。柳さんの背後から手刀を落とし彼女の体がドサリと倒れる。それに気を取られた小大さんの隙をついてお茶子ちゃんは彼女の体も壁に取りつけておいたもぎもぎにくっつけた。
『小大さん!柳さ……』
二人に視線を向けた庄田くんの油断を見逃さず、三奈ちゃんの強烈なアッパーが彼の顎を打ち抜いた。お茶子ちゃんも三奈ちゃんもめっちゃかっこいい。
第5セット。途中ハプニングがありつつも四人全員の身柄を捕らえることができ、A組チームの圧倒的勝利となった。