合同訓練
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爆豪くんたちの見事な連係。講評もA組チームは特に指摘なしだった。あの消太くんがベタ褒めしててやっぱりプロの目から見てもすごかったんだなあと感動してしまう。
「かっちゃん!おめーやりゃできるのなァ!耳郎かんぜんヒロインだったわ!」
上鳴くんと一緒に労いに向かえば彼の言い方が気に入らなかったらしい響香は不満げに口を尖らせた。
「ウチヒーローだし。」
「ほんと響香もかっこよかった。」
こういうヒーローとしての自覚しっかり持ってるとこ好きだなあ。さっきの戦闘姿を思い出しながら抱き着けば頭を撫でてくれる。
「瀬呂くんもすごかったね。取蔭さんのパーツに爆弾くっつけてたの瀬呂くんでしょ?」
「当たり。よく見てくれてんね?」
悪戯な顔でこちらを覗く瀬呂くんに次の言葉を続けられなくなる。戦ってる姿がかっこよくて気づけば目で追ってましたとか、口が裂けても言えない。彼のことだから私の気持ちなんてお見通しなんだろうけど。
黙って先頭を歩く爆豪くんにオールマイトが「震えたよ」と声をかけたけど、彼は「風邪でも引いてんじゃねーの」とそっけない態度でその場を通り過ぎた。
「かっちゃん!」
「どけカス!」
「進行方向上にいないけど……‼」
続いて緑谷くんが彼の元に駆け寄っていくと尋常じゃない反応速度で暴言が発せられた。爆豪くんは脳の仕組みがなんかそういう風になってるのかな?前とどこか違うのは凄まれても緑谷くんが委縮しなくなったところだろうか。薄暗かったはずの二人の雰囲気が今は少しだけ穏やかになりつつある。私はそれが嬉しかった。
「俺ァ進んでんぞ。」
緑谷くんの前を通り過ぎながら低い声で唸る爆豪くん。それに緑谷くんは笑って返した。
「うん、凄かった!」
「てめーにゃ追いつけねえ速度でだ!」
「超えるよ!」
「うるせえな、んな事言いに来たんか!てめーには絶対超えられねえよボケゴミカスが!」
ボケゴミカス。最悪のコンボだなあ。爆豪くんの背中を追いかけながら苦笑いしてたけど、緑谷くんにとっては気合いを入れるきっかけになったらしい。
「見ててよ。」
思ったよりも力強い緑谷くんの声がしっかり私の耳にも届いた。多分爆豪くんにも聞こえただろう。まだその距離がいきなり近くはなったりしないけど、やっぱりこの幼馴染の関係は以前とは異なるものになっている。二人の進む先が明るい場所だったらいいな、なんてぼんやり思いながら「素直じゃないね」と爆豪くんの背中に投げかければ案の定「うるせえ」って怒鳴られた。
5試合目が始まる前に保健室に行っていた焦凍くんたちが帰ってきた。全部の傷が治ってるわけではないらしく、骨抜くんはまだちょっと顔が腫れてる。
「みんな大丈夫?」
病み上がりのはずなのに「反省会してくる!」と切島くんの方に元気に走っていった鉄哲くんとは話せなかった。他の四人は一緒に戻ってきてくれたので急いで駆け寄る。心配でみんなの顔をじっと見つめれば焦凍くんの手が頭に伸びてきた。
「大丈夫だ。心配かけたな。」
穏やかな表情にほっと胸を撫でおろした。焦凍くんもまだ少しかすり傷が残ってたけど、これくらいなら大丈夫そうだ。
「みょうじくんもあの後投獄されていただろう?怪我はなかったかい!?」
ビシッと腕をこちらに向ける飯田くん。さすが委員長、逆に心配されちゃった。投獄仲間の尾白くんも頬を掻きながら怪我がないか確認してくれる。
「ものすごい勢いで牢屋に入ってきたからびっくりしたよ。」
「いや尾白くんもあのスピードで消えてったよ?」
角取さんの速さ半端なかったよねと改めて二人で項垂れた。やばいと思った時にはもう牢屋にいたからね。機動力が段違いだ。あとで空中戦の秘訣とか聞いてみよう。
「骨抜くん、まだ顔腫れてるね。普通に歩いてて大丈夫なの?」
「うん。見た目が派手なだけでどうってことないよ。ありがとね。」
にこりと優しげな顔で笑ってくれる骨抜くん。合宿の時も思ったけど彼は気さくで話しやすいなあ。でも戦闘になればかなり頭が回るし正直一番の脅威。推薦枠になる人はやっぱりちゃんと理由があるんだなって実感した。
「骨抜くん何ていうかこう……すごかった。侮れないねほんとに。完敗って感じ。」
「いやみょうじさんの方こそ。判断力と機動力にやられたよ。厄介だと思ってハンデとして選んだのに完全に読み間違えた。」
実力者の彼に褒められれば素直に嬉しい。確かに後から参加したことで俯瞰してみんなの状況把握できたし助かった。ハンデが逆にアドバンテージになってくれて命拾いだ。
「あそこでなまえが尾白のとこ行ってくれてよかった。回原投獄できたのはでけえ。」
焦凍くんがふっと目を細めてもう一度頭を撫でてくれる。A組の面々はこの光景にも慣れてしまってるし私も全然気にしてなかったんだけど、骨抜くんだけは私たちを見て微妙な顔をした。
「えーと、二人って幼馴染なんだっけ。」
「え、うん。」
「そうだ。それがどうかしたか?」
脈絡のない質問が飛び出してきてわけもわからず首を縦に振ると骨抜くんはうーんと唸った。え、なに。
「いやに仲いいなと思ってさ。幼馴染だから名前で呼ぶのはあるかもしんないけど轟のそんな表情初めて見たし。」
最近指摘されることもなくなってた距離感の話に私は焦凍くんと顔を見合わせた。やっぱり近い、のかなあ。
「そうか?」
「うむ!轟くんはみょうじくんと会話する時が一番優しい顔をしているぞ!」
飯田くんが楽しそうに解説してくれるけどかなり恥ずかしい。尾白くんは慣れって怖いねって私に向かって苦笑いした。
「それは……気づかなかった。」
新発見みたいな顔で焦凍くんがぽかんと口を開ける。私は彼の目がふんわり緩むことに気づいてたけどあえて言うことでもないかなって黙ってた。そうか、焦凍くん無意識だったのか。安らぐ存在でいられてるのかと思うとどこかむず痒い気持ちになった。
「付き合ってないの?」
何度目だかわからない台詞にもうあんまり照れることもない。飯田くんと尾白くんもやれやれみたいな感じで肩を竦めていてちょっと面白い。
「なんかこの質問久しぶりな気がするね。付き合ってないよ。」
「ああ、付き合ってない。」
「あ、そうなんだ。ごめんね変なこと聞いて。」
すぐに二人揃って否定すれば骨抜くんはあっさり引き下がってくれた。透ちゃんや三奈ちゃんだったらこうはいかない。ありがたいなあなんて考えてたら今度は別の方向から思わぬ爆弾が落ちてきた。
「別に誤解されたままでも俺は問題ない。」
周りを気にもせずにはっきりそう言い放った彼に一瞬時が止まった。告白とも取れるその言葉に他の三人も驚いてる。私はというとびっくりしすぎて口がきけない。
「?どうした。何か変なこと言ったか。」
本人は思ったことをそのまま口にしただけのようで事の重大さには気づいてない。あれ、これ私普段通りにしてていいのかな。今の愛の告白じゃなかったってこと?ぐるぐると色んな思いが頭を駆け巡る。
でも焦凍くん全然顔色変わってないし本当に話の流れだったんだろうな。天然な彼のことだ。好きってはっきり言われたわけじゃないし余計なこと聞かずに黙っておくのが得策。何だか数秒でどっと疲れてしまい深く息を吐くと三人からは同情の目を向けられた。
「なんか、ごめんねみょうじさん。」
「いえ、おかまいなく。」
骨抜くんには謎に謝られてしまい尾白くんには肩をポンと叩かれた。色恋に疎そうな飯田くんですらそろそろモニターの前に戻ろうと気を遣ってくれる。当の本人は私たちのやり取りにいっぱいはてなを浮かべていて、小悪魔だなあと苦笑が漏れた。
いよいよ次は最後の試合。よくわからない感情に振り回されながら始まりの合図を聞いていた。