合同訓練
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1組目は心操くん・梅雨ちゃん・切島くん・上鳴くん・口田くんのA組チーム対鱗くん・塩崎さん・円場くん・宍田くんのB組チーム。鱗くんのコスチュームチャイナっぽくて可愛いなあ。モニターから目を離さずじっと戦況を見守る。
A組チームはバラけるのは得策じゃないって判断したのか、保護色で壁に溶け込んだ梅雨ちゃんを先頭に固まって様子を探ってる。お互い広範囲攻撃可能な人から潰したいって思ってるだろうし、上鳴くんの周り警戒しつつ塩崎さん探す作戦なのかな。
口田くんの元に鳥が下りてきて索敵が成功したのだとわかる。塩崎さんの居場所が特定できてA組チームがそちらに向かおうとするけれど、宍田くんに先手を取られた。
「梅雨ちゃん……!」
猛獣のような大きな手に彼女が投げ飛ばされて思わず名前を呼んでしまった。続けて切島くんも建物に沈められる。宍田くん、なんてパワーなの。
B組チームはどうやらA組チームの作戦を逆手に取ったらしい。口田くんの索敵で塩崎さんの居場所が把握されるのは時間の問題と踏んで彼女を囮に使ったのだ。A組チームが近くまで来たところで鼻の利く宍田くんが先陣を切り、捕獲に有利な個性の円場くんと一気に攻め込もうという算段だろう。やっぱりB組のみんなも頭が回るなあ。
口田くんが円場くんの空気凝固に閉じ込められ声を出せない状況に追い込まれる。彼の個性を考えればかなりのピンチだ。梅雨ちゃんたちもまだ起き上がってない。ここで上鳴くんを投獄されるのはあまりに痛手だけど、どうなるかな。
焦りながらモニターを見つめているとそのピンチを救ったのは初参加とは思えない度胸の彼だった。
『よっしゃ蹴散らせ宍田ー‼』
『任されましたぞオオオ‼』
勇ましく友の声に応えた宍田くんの動きがピタリと止まる。
「もう一つの声帯、ペルソナコード。」
心操くんの新たな武器に私はにやりと口角を上げた。
「何それかっこいいー!」
「簡単に言うとボイスチェンジャーだって。」
「え、今心操くんがしゃべっとったん?」
透ちゃんとお茶子ちゃんに軽く説明するとB組のみんなも興味深そうに耳を傾けてる。あちらこちらからすげーという声が聞こえてきてそうでしょそうでしょとドヤ顔してしまった。だけどこれでボイスチェンジのネタも割れた。ここからはそれをどう活用するかだ。
視線を戻すと捕縛布を使おうとした心操くんが円場くんに動きを読まれ、先ほどの口田くんのように空気凝固で閉じ込められていた。防音性の空気の壁が立ちはだかり彼のペルソナコードも通用しなくなる。円場くんはその隙に急いで宍田くんの頭を叩き正気に戻させた。
『暴れろ!』
円場くんの合図とともに宍田くんが周りの建物を壊そうと腕を振りかぶる。だけどそこに上鳴くんが突っ込んだ。上鳴くんは攻撃をモロに受け壁に向かってふっ飛ばされる。だけど宍田くんの手はしっかり彼を触ってた。大きな体がビリビリと電気をまとい、一瞬動きが止まる。
その隙を見逃さなかった梅雨ちゃんが宍田くんの背中に乗っていた円場くんを舌で拘束しそのまま牢獄へと直行。電気で痺れているはずの宍田くんが凄まじい耐久力を見せて彼女の後を追ったけど、切島くんと口田くんが足止めしてくれた。時間を稼いでくれた二人のおかげもあって梅雨ちゃんは無事円場くんを牢に入れることに成功。とりあえず一人確保だ。
だけど油断もしてられない。宍田くんはビーストモードと人モードを駆使して体格を大きくしたり普通サイズに戻したりと器用に二人の攻撃を避ける。彼は切島くんと口田くんをガッシリ掴んだかと思えば切島くんを空高く投げ、それに気づいた塩崎さんがツルで切島くんを拘束した。捕まったままの口田くんも目一杯暴れて抵抗したけど宍田くんのパワーが勝る。切島くんと口田くんが牢屋に入れられA組チームはあっという間に逆転されてしまった。
残るは梅雨ちゃん・上鳴くん・心操くんの3人。相手も同じ数だから振出しに戻ったも同然だ。
『我が教え子の猛撃が遂に‼A組を打ち砕くのか!?』
妙に偏りのあるブラド先生の実況にA組からブーイングが起こってる。先生がこんなに熱血だったなんて知らなかったなあ。
心操くんがようやく円場くんの空気凝固の中から抜け出しここから仕切り直し。チームの人数が減って明らかに動揺してる上鳴くんを見て、捕まったのがブレーンの梅雨ちゃんじゃなくて本当によかったとしみじみ思った。
「なまえはどう見る?この後の展開。」
「ペルソナコードも警戒されるやろうしなあ。」
「んー、むしろ警戒してくれて大正解かな。」
「「え?」」
響香とお茶子ちゃんの声が重なる。目を丸くする二人に私はにっこり笑って見せた。
お互いのチームがもう一度作戦会議してたけど、先に動いたのはA組だった。どうやらB組チームの居場所をすでに特定しているようでまっすぐそちらに近づいていく。すると鼻の効く宍田くんがいち早くそれに気づき妙なことを叫んだ。
『蛙吹氏が3人!向かって来てる!』
「何言ってんだあいつ。エクトプラズム先生じゃあるまいし……。」
その言葉を受けてモニターを見ていたB組からも怪訝な声が漏れる。何だろ、梅雨ちゃんの個性かな。彼女の匂いのするものを他の二人の体にもつけたのかもしれない。宍田くんの個性を逆手にとったわけだ。これなら居場所が割れていようと誰の攻撃がくるのか予測がつかない。やっぱりすごいなあ。見習いたいほど冷静で頭が切れる。
意表を突かれたB組チームは対抗しようとすぐ行動に出た。塩崎さんがツルを伸ばして誰かを捕らえる。上鳴くんの姿がモニターに映し出されて拘束されたのが彼だとわかった。うーん、B組としては梅雨ちゃんか心操くんを捕らえたかったんだろうなあこれ。彼に放電されたらチーム全滅もあり得るもんね。
上鳴くんはB組チーム全員の前で広範囲攻撃をしかけようと電気を纏い、塩崎さんがそれに反応してツルの中に彼を閉じ込めた。だけど上鳴くんの本命はどうやら宍田くんに取り付けておいたポインターだったらしい。ツルの隙間から宍田くんめがけて電撃が放出された。ついに宍田くん倒せるかもって思ったけど鱗くんがすぐに気づいて鱗を飛ばし、ポインターを宍田くんの足から切り離した。
「反応はや……。」
「冷静だよね!」
「あ、でも見て。」
響香と透ちゃんの感想を受けながらモニターを指さす。『早くツル張り直せ』という鱗くんの声に反応してしまった塩崎さんの動きがピタリと止まった。
『おい!?今のは俺の声じゃねえよ‼』
焦る鱗くんを見て思わず唸る。心操くんやるなあ。初めてなんて嘘でしょって言いたくなるような立ち振る舞い。彼が仕掛けたのを見ると多分上鳴くんが捕まったのはわざとだ。B組チームが彼のアクションに気を取られてる間に梅雨ちゃんと心操くんが距離を詰めたんだろう。二人とも姿は見えないけどきっと近くに隠れてる。
『宍田、敵の位置を―…』
鱗くんが体勢を立て直そうとすれば宍田くんは何も言わずに指さしだけして心操くんの声が聞こえた方向に走っていく。うんうん、ペルソナコードがじわじわ効いてる。いい傾向だ。
鱗くんは宍田くんの単独行動に焦りながらも塩崎さんを正気にさせようと鱗を飛ばす。でもその鱗が当たるより先に梅雨ちゃんの長い舌が塩崎さんの体を拘束した。そのまま彼女の体は高い建物の上へと移動させられる。ここで一番厄介な塩崎さんの洗脳を解かれるわけにはいかないもんね。
鱗くんは保護色で壁を動き回る梅雨ちゃんを何とか地面に降ろそうと攻撃したけど結局彼女はその場から逃げ果せた。
『宍田!蛙吹だ!隠れた‼心操より蛙吹を!位置を‼』
必死で叫ぶ鱗くんの呼びかけを無視して別方向に突進する宍田くん。また心操くんの作戦だったらと疑心暗鬼になってるのだろう。
「なあなあ、もしかしてさっきなまえちゃんが言うてたんってこれ?」
ソワソワ顔のお茶子ちゃんに私は深く頷いた。
「そう。心操くんかもって警戒すればするほどお互いの声を信用できなくなる。コミュニケーションが取れなくなれば連携だってぐずぐずになるからね。宍田くんの注意深い性格がいい具合に作用してくれたって感じかなあ。」
心操くんは全然お荷物なんかじゃない。ヒーロー科の一員としてしっかり戦力になるってことを私は誰より知ってる。説明を聞いたあとのクラスメイト達の反応は、これまでの彼の努力に対する賛美のようだった。
相手の綻びを見逃すことなく梅雨ちゃんが鱗くんに蹴りを入れる。激しい一撃に彼はひとたまりもなかった。
そして心操くんを追いかけて行った宍田くん。心操くん一人なら力で自分には及ばないと踏んでのタイマン勝負なんだろうけど、彼は梅雨ちゃんに負けず劣らずクレバーだ。
宍田くんがすぐに心操くんの姿を捉える。でも、多分それは想定内。もちろんちゃんと居場所を特定されてしまった時の対策がしてあった。消太くん直伝操縛布。大きなパイプに巻き付けておいた布を思いっきり引っ張れば重量のあるそれは宍田くんの頭にばっちりクリーンヒット。普通の人なら気絶してしまうような衝撃、なはずなんだけど宍田くんが怯んでくれない。あれ食らって立ってられるってどうなってるんだろう。
『避けろオオ黙示録ゥ‼』
梅雨ちゃんに飛ばされたらしい鱗くんが必死で叫んでる姿がモニターには映ってるけど、宍田くんは再び心操くんに手を伸ばしたまま全く後ろを振り向かない。恐らくペルソナコードだと思ってるんだろう。だけど心操くんは宍田くんが黙示録って呼ばれていることを知らない。きっと冷静な判断ができていればすぐに気づけたはずだ。心操くんのかく乱はしっかりB組チームを追い詰めた。
梅雨ちゃんの舌でふっ飛ばされた鱗くんがものすごい勢いで宍田くんの後頭部にぶつかった。予想外の方向からの攻撃に対処できず大きな体が地面に沈む。塩崎さんに洗脳をかけたまま拘束を手伝ってもらい、3人まとめて牢屋に入れることができた。
『第1セット、ぐぬぬぬぬ!A組+心操チームの勝―――利‼』
変更実況で悔しさを滲ませるブラド先生の声が響き、初戦の勝利を噛みしめた。