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リューキュウさんが男を抑えつけてくれている間に私たちもサポートに入る。えーと確かこの男は活瓶力也。人に触れて吸息することで活力を吸い取り巨大化する個性。先ほど目を通したリストを思い出しながら攻撃に備える。ペストマスクらしきものをつけてるけどこれは個性には関係ないらしい。リストに載ってる組員ほとんどみんなマスクつけてたし。
「フロッピー、このまま拘束頼めるかしら。」
「了解よリューキュウ。」
梅雨ちゃんが舌を伸ばして男の両腕に巻き付ける。これで身動きは取れなくなったはずだ。けれどホッとしたのも束の間、リューキュウさんの足元に抑えつけられていたはずの男はじわじわと体を起こし始めた。
「何なんですかァ……もう~~~‼」
嘘でしょ。活瓶は圧倒的パワーのリューキュウさんを跳ね除けて自らの足の力だけで立ち上がった。身体を勢いよく振って拘束から逃れようとする。体重差のある梅雨ちゃんは踏ん張りが利かず思わず舌を緩めてしまい、そのまま空へと投げ飛ばされた。
「トルネード!」
「受け止めます!」
すぐさま私も空中へ上がり飛ばされた梅雨ちゃんの腕を掴む。無事彼女を腕の中に収めることができてほっとした。
「ありがとうなまえちゃん。お姫さま抱っこね。」
「ふふ、ちょっと照れちゃうね。」
すぐに地上に梅雨ちゃんを降ろす。活瓶はまだ暴れ回っていて、リューキュウさんと波動先輩がなんとか攻撃を防いでいた。
「お茶子ちゃん、活瓶のところまで運ぶからゼログラビティいける?」
「できるよ!」
奴の重力をなくしてしまえば抑えつけるのも楽になる。形勢逆転できるはずだ。お茶子ちゃん自身の重力もなくしてもらい、しっかりと彼女と手を繋ぐ。
「じゃあ、飛ぶね。」
「うん!」
地面から足を離し一気に活瓶の横を通り抜けた。その間にお茶子ちゃんもばっちり活瓶の背中に触れる。これで体格のハンデは消えた。
「ありがとうウラビティ、トルネード!」
重力がなくなった活瓶をリューキュウさんがすぐさま抑えつける。私はお茶子ちゃんを地面に降ろし波動先輩と一緒に空中へ上がった。
「先輩、風のせます!」
「すっごく素敵!」
先輩の衝撃波に合わせて私も威力の高い直線状の風を放つ。二つの個性が合わさって強くなった攻撃が、下にいる活瓶の顔に直撃した。
「すごいねなまえちゃん、あのねこれって難しいよ。体格差のある相手にビクともしないのどうして?」
「あはは、作戦勝ちですね。リューキュウさんとこ行きましょう。」
下に降りると活瓶は気絶してしまっていた。体大きいから風効かなかったらどうしようかと思ってたけどなんとかなった。波動先輩のおかげだなあ。
活瓶が動かなくなったのを確認してから警察の人が拘束器具を持ってきた。ばっちり体に巻き付けて自由を奪う。
「トルネード、素晴らしかったわ。機転が利くのね。」
「皆さんが意図に気づいてくれたおかげです。ありがとうございました。」
「こちらこそよトルネード。受け止めてくれて助かったわ。」
リューキュウさんに褒められて照れていると梅雨ちゃんまで労ってくれた。活瓶の重力をなくしてリューキュウさんに動きを止めてもらったところを、私と波動先輩が攻撃に回って気絶させる。咄嗟の作戦だったけどうまくいって良かった。
「よし!ちょっと出遅れたけど私たちも行くよ!」
「インパクトのわりにあっけなく捕まってくれましたね。」
「こっからが本番って事やな……!」
リューキュウさんが出発を告げるとお茶子ちゃんが意気込んだ。これから私たちも本拠地に入っていくのだ。一層身が引き締まった。
「あとは任せました。気を失ってるうちに隔離させて下さい。」
警察の人に処理を任せて突入に向かう。中ではかなり派手にやっているようで喧々囂々と声が聞こえてくる。
「中も荒れてるよ急いだ方がいいよ。」
波動先輩を先頭に門まで走る。だけど突然後ろのお茶子ちゃんと梅雨ちゃんの身体が傾いた。
「トルネードちゃん飛んで!」
「!?」
波動先輩の言葉にわけもわからず反応して二人で空中に上がった。下を見ると立ち上がっている活瓶の姿。嘘でしょ、あの拘束器具壊したの。他のみんなは警察の人も含めてぐったりしている。そうか、周りの人から活力を吸ったんだ。
「入中から貰ったブースト薬がやっと効いてきた……。呼吸してるだけで吸ってるぞ!」
ここに来てまたブースト薬。もっと長い時間気絶させられてれば。いや反省はあとだ。
「すごく元気が湧いてきたァ‼」
活力を吸い巨大化した活瓶はリューキュウさんより大きくなってしまった。そのまま門に一撃を沈み込ませる。
上からめちゃくちゃ破壊してるのを見てこれ八斎會の邸宅なんじゃないのかと思ったけどツッコんでる余裕もない。他のみんなは無気力状態になってダウンしてるし私と先輩で何とかしなきゃ。
とにかく動きを止めたくて、先輩と逆方向に回り挟み撃ちにして風を放つ。けれど私と波動先輩のちょうど真ん中にいる活瓶は攻撃をもろに受けてるはずなのにビクともしない。巨大化した腕で防御され、まるで効いていないようだった。ブースト薬ってこんなに力が増幅するものなのか。本拠地にある薬だからより質が高いものなのかもしれない。
今度は足に向かって攻撃してみる。こけてくれれば隙ができる。人のいない方へ倒せれば被害も出ない。なんとか事態を好転させたい。
活瓶の軸足に向かって威力の高い風を放つ。けれど活瓶はそれを巨大化した足で受け止め、私の方に蹴り返してきた。自分の風がキックによって攻撃力を増す。咄嗟に防ごうとしたけど間に合わなかった。
「う……!」
「トルネード!」
凄まじい向かい風に耐えきれずそのまま吹き飛ばされる。波動先輩の心配してくれる声が聞こえたけど今彼女の意識を割くわけにはいかない。私たちは二人とも余裕のない状況に立たされていた。自分のことは自分で対応しなきゃ。なんとかバランスを保って落下を防ぐ。
それからしばらく攻防が続いた。活瓶が巨大化してからどれくらい時間が経っただろうか。20分ってとこかもしれない。けれど状況はまだ何も変わっていなかった。他の人や建物に攻撃されないよう注意を逸らしてるけど正直イタチごっこだ。まだみんな回復してないしこのままじゃまずい。相手の力が強すぎてみんなを避難させることもままならない。
もう一度波動先輩と一緒に風を放つ。もう何度目だろうか。相手はこれをずっと防ぎ続けている。
「ハッハッハッ!薬が切れた。触らせろカワイ子ちゃん!」
「お断りします。」
「ムゥー、嫌っ!」
気持ちの悪い言動に顔を顰める。でも活瓶は薬が切れたと言った。巨大化を留めておけるのも時間の問題だろう。こうなってくると耐久戦だ。久しぶりに喉の奥から血の味がした。
「麗日さん‼」
ふいに緑谷くんの声が聞こえた。どうしたんだろう。あんまり気にしてる余裕もないけど中で戦ってるはずの彼がいきなりここにいるのは少々不可解だった。
「応援を呼びに来た!あっちの十字路の真下に目的がいる!プロが戦って足止め中だ!加勢を!」
それを聞いてすぐにリューキュウさんが動いた。身体ごと活瓶へと突進し私たちに指示を出す。
「皆‼指示通りに!ウラビティ‼浮かす‼フロッピー!移動を‼手伝って!」
それに反応してお茶子ちゃんが活瓶の体に触れる。重力をなくしたところでリューキュウさんが巨体を掴んで飛び上がった。さらに梅雨ちゃんが活瓶の身体に舌を巻きつけ十字路までの移動を助ける。活力吸い取られてるからみんなしんどいはずなのに、必死で今できる最善策に食らいついていた。
「ネジレ!トルネード!ありったけを私ごと!」
言葉通り私と先輩は十字路の真上に移動する。諦めない私たちに活瓶が吠えた。
「なんで動けるんだこの女共ォ‼」
「「「「毎日言われてるから。」」」」
更に向こうへって。それこそ耳が痛くなる程。
リューキュウさんが所定の位置についた。指示通り私のありったけの風を彼女に向けて放つ。その威力で地面には穴が開き、リューキュウさんは活瓶もろとも地下へと沈みこんだ。