インターン
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爆豪くんも謹慎が明けてようやくクラス全員揃い、今日は改めてインターンの説明があった。
1年生のヒーローインターンは協議の結果多くの先生がやめとけという意見だったらしい。でも今の保護下方針では強いヒーローは育たないという意見もあり、インターン受け入れの実績が多い事務所に限り1年生の実施を許可するという結論になったそうだ。仮免落ちてインターン行けない爆豪くんが苦虫噛み潰したみたいな顔してた。そんなに睨まないで。
みんな職場体験でお世話になった事務所に連絡してみるみたいだ。人となり知ってるしその方がやりやすいよね。でも私はそれができない。昨日もリストを見ながら唸ってたけどまだ決まってない。常闇くんにホークスのとこはどうかって言われたけどそこは最終手段にさせていただきたい。
ジーニストさんのところでは長所を伸ばす練習だったから今度はなるべく短所に焦点当てていきたいなあ。近接得意な人。寮のソファでリストを眺めていると後ろから障子くんと瀬呂くんがやってきた。
「お、まだ悩み中?」
「うーん意見求む。」
「まかせなさい。」
二人にリストを手渡す。ビッグネームが並んでたのもあって感嘆の声が漏れた。そういや前に緑谷くんにも驚かれたっけ。
「みょうじはどんなところに行きたいなどの希望はあるのか。」
「近接得意そうな武闘派のとこ行こうかなあって。体の使い方学びたくて。」
「あーね。でもフォースカインドもガンヘッドも今回は受け入れねえんだよなあ。切島が嘆いてたわ。」
「切島くん?」
「ああ。奴も悩んでいるみたいだぞ。」
切島くんも確かにゴリゴリの武闘派。行き先決まったら彼のことも誘ってみようかな。1年生を二人も受け入れてくれる心の広い事務所。うーん難しい。
「む、ここはどうだ。」
「ファットガム事務所?」
「なーる。確かにファットなら笑って許してくれそうだな。近接得意だろうし。」
なにわの大人気ヒーローファットガム。直接話したことはない。脂肪吸着の個性でふかふかになったお腹に敵を沈み込ませて捕らえる戦闘スタイル。腕っぷしもかなり強いはず。
「ファットガム、ぴったりかも。」
「お、決まった感じ?」
「うん!二人ともありがとう。切島くんと相澤先生のとこ行ってくる。」
「夜遅いから気を付けろ。」
「はーい。」
急いで切島くんに連絡する。何で見落としてたんだろう。無意識に面識のある人で選んでたのかもなあ。視野が狭くなってた。二人に聞いてよかった。
切島くんは喜んで誘いに乗ってくれた。消太くんにファットガム事務所に行けるか聞きに行くと、すでにインターンに行っている先輩がいるからその人を口説き落とせと言う指示があった。交渉から自分たちでやるの、やっぱりプロって感じがする。
次の日の昼休み、さっそく3年生の教室に出向いた。クラスの人に名前を伝えると呼び出してくれる。ものすごく嫌そうな顔をしながら、それでも無視も出来ずにかなり渋々出てきてくれた。
「ちわっス、天喰先輩!」
「お呼び立てしてすみません。」
私たちが挨拶をすると不安げに視線をさまよわせる。なぜ訪ねられたかわかってないようだった。
「今日はインターンのことでお願いに来ました。」
「俺らまだ行き先決まってなくて。近接得意なファットガムさんとこにお邪魔できたらって思ってるんスけど駄目ですか?」
「お、俺の一任ではどうにも……。ファットに直接聞いた方がいいんじゃないか。」
「でしたら、お手を煩わせるのもあれですので連絡先教えていただけますか。」
私がメモを取り出すと彼は眉を下げた。スマホから連絡先を探してくれていたけど、途中で手が止まる。
「いや、でも君たち二人が来たら俺の居場所が……。」
「え。」
「君たちみたいな優秀な人が来たら俺はいらなくなってしまう。」
「そ、そんなこと全然ありませんよ。」
「そうっスよ!俺は先輩からも学びてえっス!」
「ま、眩しい。」
目をしばしばさせる天喰先輩。これはなかなか苦戦しそうだけど切島くんの光属性パワーならいけるかもしれない。頑張れ。
「俺ら強くなりてーんス。そのためにはビッグ3の実力も間近で勉強しときたくて。駄目っスか?」
「駄目では、ないけど……。俺に学べるところなんてあるだろうか。」
「もちろんです。ファットガムさんや天喰先輩の力に少しでもなれるよう精一杯やらせていただきますので、どうかお願いします。」
切島くんと一緒に頭を下げる。天喰先輩は困ったようにため息を吐いた。
「……わかった。俺からファットに連絡しておくよ。」
「ほんとですか!ありがとうございます!」
「ありがとうございます!」
「も、もういいから頭を下げるのはやめてくれ。」
あわあわしてる天喰先輩が面白くて思わず笑ってしまった。切島くんと拳をぶつけ合って喜んでいると眉を下げっぱなしの先輩もちょっとだけ笑ってくれた。あ、笑顔可愛い。ふんわりとした表情になんだか見惚れてしまう。彼は私たちとの会話が終わると目立ちたくないと言わんばかりに急いで自分の席に戻っていった。
「やったな!」
「いいお返事来るといいね。」
「絶対来る!」
「ふふ、そうだと嬉しいなあ。」
教室に戻る途中もずっと嬉しそうな切島くん。やっぱり声かけてみてよかったな。二人の方が私も緊張しないし。
「ほんと誘ってくれてありがとな!感謝してもしきれねえぜ!」
「私も切島くんがいてくれたら心強いよ。よろしくね。」
「ああ!やったろーぜ!」
切島くんが拳を突き出して気合を入れる。私もつられてえいえいおーと右腕をあげた。
その日のうちにファットガムさんからお返事が来て、私たちは無事にインターンに行けることになった。ファットさんにも天喰先輩にも感謝だ。役に立てるようたくさん訓練しとこう。まだ見ぬ大阪での活動に胸が弾んだ。