インターン
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久しぶりのホームルーム。消太くんから今学期の軽い説明と諸注意等を受ける。
「じゃあまァ……今日からまた通常通り授業を続けていく。かつてない程に色々あったがうまく切り換えて学生の本分を全うするように。今日は座学のみ。だが後期はより厳しい訓練になっていくからな。」
相変わらず簡潔で合理的。でも気になってた事柄についての言及はなかった。何人か同じことを考えていたようで、梅雨ちゃんが質問の為に手を挙げてくれた。
「ごめんなさい。いいかしら先生。さっき始業式でお話に出てたヒーローインターンってどういうものか聞かせてもらえないかしら。」
ヒーローインターン。職場体験の進化版のようなものだろうか。みんなも興味津々の様子で教室内がざわつき始める。
「そういや校長が何か言ってたな。」
「俺も気になっていた。」
「2・3年生が取り組んでるんだよね?」
瀬呂くんと常闇くんと一緒にひそひそ話。先輩たちがやっているということは私たちもいずれ経験するものだろう。詳細について知っておいて損はない。どうやらその説明は今日する予定ではなかったらしく、消太くんは頭を掻きながら少し考える素振りを見せた。
「それについては後日やるつもりだったが……そうだな。先に言っておく方が合理的か……。平たく言うと校外でのヒーロー活動。以前行ったプロヒーローの下での職場体験、その本格版だ。」
やっぱりそうなのか。予想通りの答えに納得する。私たちは予定を繰り上げて仮免取得したので、1年生の内からインターン参加のチャンスがあるのかもしれない。急にワクワクしてきた。
「そんな制度あんのね。」
「知らなかった。」
「あれ?でもこれ……」
「体育祭の頑張りは何だったんですか!!?」
「おわ。」
びっくりした。すごい勢いで挙手したお茶子ちゃんが今言おうとしたことを代弁してくれた。体育祭の時はスカウトたくさんもらうために必死で頑張ってたけど、インターン制度があるならあれは何だったのか。合理的虚偽なわけでもなさそうだしなあ。お茶子ちゃんはかなり納得いってないようで、麗らかとは真逆に憤ってる。
「ヒーローインターンは体育祭で得たスカウトをコネクションとして使うんだ。これは授業の一環ではなく生徒の任意で行う活動だ。むしろ体育祭で指名を頂けなかった者は活動自体難しいんだよ。元々は各事務所が募集する形だったが雄英生徒引き入れの為にイザコザが多発し、このような形になったそうだ。わかったら座れ。」
「早とちりしてすみませんでした……。」
消太くんの説明にみんな納得。立ち上がっていたお茶子ちゃんも大人しく座った。なるほどなあ。体育祭のスカウトと繋がってる活動だったのか。確かに雄英って名前だけでブランドあるし事務所同士の攻防ありそうだもんな。争いの種を摘んだってわけだ。
「まァ体験談なども含め後日ちゃんとした説明と今後の方針を話す。こっちも都合があるんでな。」
この話は終わりと言わんばかりに切り上げられた。インターン、もし参加できるとしたら私どこに行くことになるんだろう。ベストジーニストさんは活動休止中だ。他のスカウトくれた事務所から選んでいいのかな。うーん悩ましい。
どうしたものか首を捻っていたけど、ひざしくんが教室に入ってきたので思考は中断となった。そういえば一限目英語だった。久々の登場にテンション爆上がりのひざしくん。とりあえず考えるのは詳しい説明があってからにしよ。ノートを開いて目の前の授業に集中することにした。
放課後、相変わらず心操くんと鬼ごっこしている。仮免も取得して気合十分。もちろん逃げるのもお手の物、と言いたいところなんだけど。なんだか今日の彼は一味違う。
「う、わっ!」
「あとちょっと……!」
動きのキレが以前より増してる。この前訓練したばかりなのにもう別人みたいだ。体格も大きくなってきて仕上がってるって感じ。成長具合が著しすぎる。正直さっきから何度も背中にかすってる気がする。
崖を跳び下りると彼も迷わず追ってくる。別の崖を上っていると他の道から先回りされた。彼の脚力も向上してるし、私のスピードに慣れたのもあるだろう。前より逃げる動作に余裕がなくなって運動量が一気に増えた。息が上がりっぱなしだ。
先回りされたのでもう一度飛び降りて今度は向かいの崖を上る。片足をかけると土壁が崩れてバランスを崩した。何とか着地するとすぐそばに心操くん。急いで立ち上がって別方向に逃げる。けど。
「う、そ……!」
「……っし!」
心操くんの加速がすごすぎた。彼の手はしっかり私の背中を捉えついに決着がつく。鬼に捕まってしまった。私の負けだ。
「そこまで。心操、よくやった。」
「あー、やられた!」
ぜえぜえ言いながら二人で倒れ込む。心操くんは見たことないくらいに顔を綻ばせていた。
「やっと追いついた。」
「悔しい……。」
「心操はもう地力ならヒーロー科と遜色ないということだ。みょうじ、励めよ。」
「はい……。」
勿論前進あるのみです。最近筋トレの量も増やしたんだけどなあ。心操くんだけじゃなくて消太くんもなんか機嫌良い。愛弟子だもんね。私も彼の努力が報われていく過程を見られるのはすごく嬉しい。でもめちゃくちゃ焦ってる。追い抜かれないよう頑張らなきゃ。
「じゃあ次の段階だ。今日はとりあえずこれで終わりだが、次回はお互い試してみたい技を使って対人訓練。もちろん個性使用ありだ。いいな。」
「わかりました。」
「え、いいの?」
横を見ると不安そうな顔の心操くん。彼は私があっけらかんと返事したことに驚いてるようだった。
「何が?」
「いや、個性使用ありってことは俺に洗脳されるかもしれないだろ。」
「対人訓練だからその可能性はあるね。」
「怖くないのか?」
「うん、心操くんのこと信用してるし。どういう個性なのか気になってたから一度体験してみたかったっていうのもちょっとある。」
「呑気だな……。」
若干呆れられてしまった。でもこれが本音だ。洗脳系の個性なんて、敵と対峙した時じゃなければまずかけられることはない。訓練の中で安全に体験しておけるならこんな絶好の機会はないでしょ。対処の仕方もわかるかもだし。私は私で個性使って心操くんに怪我させるんじゃないかって不安はあるけど、今の彼にそんなこと言ったら失礼だ。
「お互い全力でやろ。危なくなったら相澤先生いるし大丈夫だよ。」
「ああ、その為の俺だ。上手く使え。」
「……お願いします。」
どうやら納得してくれたようで心操くんはぺこりと頭を下げた。真面目だ。彼の勤勉さは本当に見習うべきところだなあ。今日は負けちゃったし、私も気合入れて訓練しないと。
心操くんと解散して寮に戻る。みんなまだ帰ったばかりのようで制服だった。ちょうどインターンの話をしていたので混ぜてもらう。
「あ、なまえちゃんおかえり~。」
「ただいま~。インターンのこと?」
「そう。ウチとか体育祭の時指名なかったけど参加できないのかなって。」
「職場体験させてもらったところでは無理なのかなあ。」
響香と透ちゃんが困ったように腕を組む。消太くんのことだから何かしら全員に用意してくれてそうだけどなあ。
「それで言うと私もジーニストさんとこ行けないから……どうなるんだろう。」
「他に指名来てたとこ行く感じ?」
「わかんない。でもそうなるとちょっと気まずいよね。」
「職場体験じゃその事務所選んでないんだもんね……。」
尾白くんが一緒に眉を下げてくれる。ベストジーニストさんのところに行けなくなったからうちに来たのかって思われるのかなり気まずい。どう返せばいいんだろ。別に気にすることないのかもしれないけど余計なことばかり考えてしまう。
謹慎中の緑谷くんは私たちの会話が気になるようで終始そわそわしていた。でもごめん。消太くんに口止めされてるから何があったのか言えないんだ。ヤキモキしている彼に心の中で謝罪する。
それにしても本当にインターンどうしよう。とりあえず部屋戻ってスカウトのリスト見返してみようかな。疲れた体を引きずって共同スペースを後にした。
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