仮免試験
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その後眠れずにいると来客があった。ドアを開けるとボロボロの緑谷くんと爆豪くん、それにオールマイトが立っていた。
どうやら私の予想は当たっていたようで、爆豪くんはすでにオールマイトから秘密の全てを聞いていた。三人を部屋の中に引き入れ、私も詳しい説明をしてもらう。オールマイトと緑谷くんの個性はワンフォーオールというものだということ。それは巨悪に立ち向かうため代々受け継がれてきたものだということ。オールマイトが傷を負って限界を迎え、後継として緑谷くんを選んだこと。
緑谷くんと爆豪くんは私が元々トゥルーフォームを知っていたことや自力で答えに辿り着いたことに驚いている様子だった。申し訳なさそうな顔で緑谷くんが静かに口を開く。
「……みょうじさんまで気づいてたなんて。」
「ちょっと言いにくいんだけど……二人とも隠すのうまくないと思う。」
「う。」
「何普通にばれとんじゃ。」
こんな重大なこと簡単にばれたら危ないからね。オールマイトも緑谷くんも嘘つくの下手だからしっかり気をつけてもらいたい。とにかく秘密を共有してるのは今のところ私・爆豪くん・緑谷くん。プロヒーローでも一握りしか個性譲渡のことは知らないらしい。
「それにしても二人ともぼこぼこだね。」
「あはは、謹慎になっちゃった。」
「謹慎!?」
「夜中にうるせえ。」
いや声大きくなるでしょ。爆豪くんは四日、緑谷くんは三日間の謹慎になったそうだ。消太くんはかなりお怒りだったらしい。私だけお咎めなしで申し訳ない。
「とにかく今日はもうみんな休むんだ。みょうじ少女も、こんな時間にすまなかったね。」
「いえ、オールマイトもお気をつけて。」
三人におやすみを言って扉を閉める。再びごろんとベッドに横になった。仮免試験があって合格してオールマイトの秘密を知って緑谷くんと爆豪くんが謹慎になって。今日だけでいくつ重大なことがあったかわからない。
先ほどまで全然眠くなかったのに、二人の喧嘩に決着がついたと知って肩の力が抜けた。段々瞼が重くなってくる。色々考えすぎていた頭を休めるように、気づけば眠りに落ちていた。
夜が明けて今日は始業式。緑谷くんと爆豪くんの謹慎はすぐにみんなの知るところとなりなかなか騒がしい朝だった。因縁の幼馴染が二人で掃除機をかけてる姿はかなり変な感じ。それでもなんだか、ほんの少しだけ二人の空気感が変わっている気がした。
始業式に向かう途中物間くんに絡まれた。B組は全員仮免合格したらしい。こちらは二名落ちてしまったので煽りと自慢を兼ねて近づいてきたんだろう。相変わらず集団になるとテンション高いなあ。
「ブラドティーチャーによるゥと、後期ィはクラストゥゲザージュギョーあるデスミタイ。楽シミしテマス!」
物間くんと打って変わって角取さん可愛い。余計に癒された。B組と一緒に授業かあ。楽しみだ。
「へえ!そりゃ腕が鳴るぜ!」
「つか外国人さんなのね。」
切島くんと上鳴くんも友好的に返す。だけどそんなほわほわした空気が気に入らないとばかりに物間くんが角取さんに何か耳打ちしていた。碌なこと言ってない気がする。
「ボコボコオにウチノメシテヤア……ンヨ?」
やっぱり。意味が分かってない彼女になんてこと言わせるんだ。高笑いする物間くんは拳藤さんに目潰しされて沈んでいった。さすがです。
「オーイ、後ろ詰まってんだけど。」
「すみません‼さァさァ皆私語は慎むんだ!迷惑かかっているぞ!」
後ろに並んでいた普通科から声がかかる。心操くんだ。訓練のこと言っていいのかわからないので、関係がばれないよう手を振るのは控えておく。代わりににこりと笑うと向こうもほんの少し頭を下げた。
「あれ……なんかあいつ、なんとなくゴツくなった気が。」
瀬呂くんの言葉にニンマリする。心操くんは私との鬼ごっこ以外にも消太くんと個人訓練してるのだ。彼の努力の成果がこんな風に目に見えてくると私も嬉しい。とはいえ追い抜かれないようこっちも必死なんだけど。
始業式は初めに校長先生のお言葉。唐突に自身の生活習慣の話をされたのでみんなわけがわからないという顔をしてたけど、神野区の事件に触れたことでその空気は一変する。
「柱の喪失。あの事件の影響は予想を超えた速度で現れ始めている。これから社会には大きな困難が待ち受けているだろう。特にヒーロー科諸君にとっては顕著に表れる。2・3年生の多くが取りくんでいるヒーローインターンもこれまで以上に危機意識を持って考える必要がある。」
身の引き締まる話の途中に気になる単語。ヒーローインターンって何だろう。職場体験とかとはまた違うものなのかな。クラスのみんなも頭にはてなを浮かべている。あとで消太くんに聞いてみよう。
「暗い話はどうしたって空気が重くなるね。大人たちは今その重い空気をどうにかしようと頑張っているんだ。君たちには是非ともその頑張りを受け継ぎ発展させられる人材となってほしい。経営科も普通科もサポート科も、皆社会の後継者であることを忘れないでくれたまえ。」
オールマイトが引退した今、社会は大きく揺らいでる。私たちはその狭間で、新たな抑止力にならなければいけないのだ。校長先生の言葉を重く受け止め、先を見据える行動をしなければと強く思った。
始業式の最後、ハウンドドッグ先生から注意を受けた。緑谷くんと爆豪くんの喧嘩のことについてだ。ハウンドドッグ先生はブチギレていてほぼ人の言葉をしゃべっていなかった。ブラドキング先生が通訳してくれて、慣れない寮生活だけど節度を持って行動をと言っていたのだとようやく理解できた。感情が昂ると犬語になっちゃうのか。怖い。
それにしても緑谷くんと爆豪くん、問題児扱いだなあ。あれだけ怪我するまで殴り合ってたのなら仕方ないかもしれないけど。私もオールマイトを呼びに行ったとはいえ夜中に抜けだしたわけだしお咎めなしなの本当申し訳ない。二人がボコボコになるまでオールマイト足止めしちゃってたし。菓子折り持って行かなきゃなあ。
ぼんやり考えていると始業式は終わっていた。これから久しぶりの授業。教室に戻って消太くんから伝達事項を聞くことになっている。
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