一章
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少女が去ったあとの学園長室は大荒れであった。
「学園長!あの娘が言っていたことを本気で信じておられるのですか!」
「そうじゃ。あの子の目は嘘をついている者の目ではない。」
「しかしあれくらいの演技手練れの者なら!」
「あれは演技などではない!もういいじゃろ、話し合うのは面子が揃ってからじゃ。聞いておったな、六年ろ組・五年ろ組の諸君。」
「はい。」
天井裏に身を潜めていた五人が部屋の中へと下りてきた。
「あの者の話を聞いて、お主らはどう思った?」
七松小平太は、間髪を入れずに口を開いた。
「私は、彼女の言っていたことは本当だと思います。私たちの気配にも全く気づいていないようでしたし、嘘をついている声色ではなかったです。」
「……右に同じです。」
長次も級友の意見に頷く。
「家族や城を失った姫が錯乱しているということはないでしょうか。着ている服には説明がつきませんが……うーん……。」
「雷蔵また悪い癖出てるぞ。そもそも彼女は人間なんですか?幽霊とか、妖とかいった類の可能性もあるのかなって思ったんですけど。」
「ふむ、まあそういうこともないわけではないじゃろうが……。鉢屋三郎、お主はどう思った?」
「私も雷蔵と同意見、と言いたいところですが彼女は姫とは別の普通の人間でしょう。言っていることも真実だと思います。」
「ほう、何故じゃ?」
三郎は整理しながら続けた。
「彼女は焼け跡の真ん中に立っていました。間者として私達にわざと助けられ、何かをするつもりならばもう少し体調に影響の出ない場所で待機していたはずです。私たちを油断させる為の作戦という線も考えてはいましたが、そこまで気が回る間者であるなら到底信じてもらえそうにない嘘は避けるのではないかと。」
「なるほどのう。」
「もう一つ挙げるならば、彼女の体つきですね。私達は三人で交替して彼女をここまで運んできたのですが、まるでくノ一だとは感じられない体つきでしたし武器も所持していませんでした。ここで間者ではないと確信しました。」
「それは俺も思ったけど、姫が記憶なくしちゃってるって可能性は捨てきれないんじゃないか?」
三郎の発言に八左ヱ門が不満を零す。
「いや、それはないな。私と長次は姫様と直接話をしているがしゃべり方が全然違う。あの子は自分の名前をちゃんと言えていたし記憶がないようには見えなかった。」
「……声も少し違っていた。」
「なるほどのう。この中で姫君と話したことがあるのはお主ら二人だけじゃ。信じよう。」
忍たまたちがひとしきり話したあと学園長は改めて彼女を信じるという決断を下した。もちろんそれには否定的な意見も飛んでくる。
「学園長、あの娘は怪しすぎます。何かあってからでは遅いですぞ!」
「仮に彼女が間者ではないにしても、どこの誰かもわからないような者を学園内においてよろしいのですか!」
身を乗り出して憤る安藤・野村・木下を一瞥し、学園長ははっきりとした口調で答えた。
「誰が何と言おうと儂はあの子を信じる。それにここはプロの忍者が集まる忍術学園じゃ。あの子が間者であったとしても野に放っておくよりここに置いていた方が安全ではないかの?」
三人は押し黙った。確かに彼女が監視下にあった方が周辺の城にとっても学園にとっても都合が良いように思えた。
「決まりじゃな。あの子にはこの学園で雑務をこなしてもらう。その中で各々正体を見極めるが良い。しかし危害を加えることは禁じるぞ。」
彼女の処遇が決まり学園長は満足気だった。
「そうじゃ。天井裏の忍たま達も聞いておると思うが今日一日は彼女への接触を避けるように。挨拶をするなら明日からじゃ。では解散!」
天井裏に隠れて話を聞いていた忍たまたちにも釘を刺し、学園長は煙と共に消えてしまった。