一章
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昨日の善法寺くんとの会話が思い出され、彼の姿を見た時少しどきりとした。
「おはようございます、なまえさん。」
「おはようございます。」
「おはよう、立花くん、潮江くん。」
動揺に気づかれないようなるべく平常心を装う。何気ない会話を交わしながら、彼らの注文を取った。
「最近忙しそうにされてますね。昨日は三年生と裏裏山へ行って来られたのでしょう?」
「よく知ってるね。みんな色々工夫して誘ってくれるから楽しいよ。」
豚汁を用意しながら話を続ける。潮江くんも口数は少ないが、穏やかに聞いてくれているようだった。
「私たちも計画を立てておりますので、楽しみにしていてください。」
立花くんが悪戯な笑顔を見せる。潮江くんもどこか嬉しそうな表情をしていて、思わず頬が緩んだ。
「ふふ、それは楽しみ。期待して待ってるね。」
オクラのおひたしにみょうがを盛り付けてお盆へと置く。あとはご飯をよそえば完成だ。
「今日は僕達の番なので、なまえさんは一年は組のことだけ考えててくださいね。」
「兵太夫。」
朝食を食べ終え食器を返しに来てくれた兵太夫くんが立花くんの後ろから顔を出す。
「ご馳走様でした!」
「ありがとう。」
並んで座っていた三治郎くんも続けてお盆を運んでくれた。
「今日は一年は組との約束があるのですね。」
「うん。結構前から誘ってもらってたの。」
「放課後にかくれんぼするんです!」
「え。」
「お部屋まで迎えに上がります!」
「ふふ、ありがとう。頑張って仕事終わらせちゃうね。」
可愛いよい子たちからのお誘い。たくさん働いて早く遊びに行きたい。今日の為にコツコツと書類の処理を終わらせていたので、そんなに量は多くないはずだ。
「楽しみに待ってます!」
「また放課後に!」
走っていく小さな背中を見送る。いつも楽しそうなからくりコンビだが、今日は一段と足取りが軽く感じた。
「立花くん達もお待ちどうさま。」
「ああ、ありがとうございます。あの……。」
お盆を受け取った二人の目は気遣わしげだ。そういえば先程兵太夫くん達と話をしていた時も微妙な表情を浮かべていた。どうしたのだろう。
「一年は組は、元気が良いですよ。」
潮江くんも黙って頷く。すぐに意図に気づき顔が青くなるのがわかった。
六年生がそれほど言うまでにか。途端に明日の足腰が心配になってきた。
「か、覚悟しておきます。」
「無理なさらないようにお願いしますね。」
「ありがとう……。」
「何も言わなければ満足するまで遊び回ると思いますので、休憩も挟んでください。」
「はい……。」
二人の言葉に段々と自信がなくなってくる。やはり一年生の遊び相手としては役不足だっただろうか。
溌溂と駆けて行った兵太夫くんと三治郎くんが思い出され、汚れてもいい袴があったかなと頭を悩ませた。