一章
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今日はしおりちゃん・トモミちゃん・恵々子ちゃんと時間が被り、一緒にお風呂に入っている。三年生全員と出掛けたことを伝えると、羨望の声が上がった。
「伊賀崎先輩もいたんですか?いいなあ。」
「伊賀崎くん人気なの?」
「はい!毒虫は勘弁って感じですけど圧倒的に美形じゃないですか。」
確かに彼はとても整った顔立ちをしている。しかしくのたまの子たちの歯に衣着せぬ物言いは聞いていて気持ちいいものがあるな。
「なまえさんはここにきてずいぶん日が経ちますけど、好い人いました?」
お風呂の度に投げかけられるこの話題。一カ月経過した今でも恋バナからは解放されていなかった。
「だから~、そういう人はいません!」
きっぱり言い切ると残念そうな声が返ってくる。
「でもでも、立花先輩や鉢屋先輩と良い感じじゃありません!?」
トモミちゃんが鼻息荒く顔を近づける。その勢いに圧倒され、思わず後ずさる。
「仲良くしてもらってるだけでやましいことはありませんよ。」
「えー、なまえさんになくても向こうにはあるんじゃないですか?」
「ええ?」
「下心、あるかもしれませんよ。」
しおりちゃんの核心を突くような言葉に恵々子ちゃんもおっとりと頷いた。私より遥かに年下だというのに、みんなませてるなあ。
「いや、いやいや。みんな親切にしてくれてるだけだよ。」
「そうでしょうか!もし想いを告げられたらどうするんです?」
今日はなかなかトモミちゃんの圧が強い。他の二人も興味津々といった様子で逃げられそうにない。どうしたものか。
「ないと思うけど、誰であってもその時は断るかなあ。」
「えっ、断っちゃうんですか。」
「まあ、もったいない。」
「うん。いつ向こうへ帰るかもわからないし……。私と一緒になっても幸せにしてあげられそうにないから。」
ここへ来た時も唐突だった。いずれ帰る時も同じかもしれない。突然どこかへ消えてしまうような女を愛したところで彼らの未来に影を落とすだけだ。
「一緒にいられる間だけでも幸せにしてもらえばいいじゃないですか。」
「んん、立場上無責任なこと言えないからなあ。ってこれ仮の話だよね?」
上手く乗せられて余計なこと話しちゃったな。内緒ね、と一応口止めする。
いずれ来るであろう別れ。そのことを考えると、特別な感情に踏み出せるはずもない。誰かを自分が縛ってしまうことも、この時代に囚われてしまうことも恐ろしかった。
今はただ、平穏な日々が過ごせますよう。彼らとの愛しい思い出を手放さぬよう。
熱いお湯に浸かりながら、そっと目を閉じた。