一章
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「ほんっとに、ありがとうございました!お前らも頭下げろ!」
「ありがとうございました!」
「え、なんで?」
先程からずっとお礼と謝罪を繰り返している富松くん。左門くんもそれに続いて頭を下げていた。一方次屋くんはまるで把握できていないようだった。さすが無自覚。
「いや、本当に大丈夫だよ。二人と散歩できて楽しかったし。」
「ほんと、楽しかったですよね。」
「お前は黙ってろ!」
呑気な様子の次屋くんに富松くんが怒鳴る。まるでコントのようでちょっと笑ってしまった。
「今度必ずお礼させていただくんで……!」
「気にしないで。ほら三人ともお風呂混んじゃうよ。」
私は手を繋いで帰ってきただけなのに、必死で探し回っていた彼に何かもらうわけにはいかない。話題を目先のものに変え、何とか意識をそちらに逸らしてもらう作戦に出た。
「あ、やべ。あの、本当にありがとうございました!今日はこれで失礼させてもらいますけど、改めて伺いますんで!」
「ありがとう。本当に気にしなくていいからね。」
「なまえさんおやすみなさい!」
「おやすみなさい。」
「うん、左門くんも次屋くんもおやすみなさい。」
二人に付けた縄を引っ張りながら富松くんは慌ただしくお風呂に向かった。私も準備してこようかな。
自室に戻り、着替えをまとめて風呂敷に包む。ここに来てからというもの風呂敷の可能性に目覚めてしまい、結構包み方のバリエーションも増えた。何でも収納できて持ち運びやすい。とても便利だ。
お風呂に向かっている途中、すでに寝着姿の勘ちゃんに呼び止められた。
「なまえさん。」
「あれ、勘ちゃん。」
「今日ってこのあと予定あります?」
「ううん。お風呂入ったら寝るだけだよ。どうしたの?」
「私たちの会合に招待されてくれませんか?」
「会合?」
どんなものかわからず聞き返すと、彼は急に声を潜めて耳打ちした。
「良いお酒が手に入ったので。」
「お酒?」
しー、と口元を抑えた勘ちゃんの顔は悪戯っ子のようだった。会合というのはどうやら飲み会のことらしい。そういえばこの時代はこれくらいの年の子でもお酒飲むんだっけ。
「なまえさんお酒飲めます?」
「飲める。というかむしろ好き。」
「え、意外。」
「よく言われる。」
内緒話のようにひそひそと話す。
あまりそうは見られないが私は生粋の酒好きだ。ワインやビール、カクテルなど基本的に何でも飲む。無理な飲み方はしないが元の世界にいた頃は毎晩嗜んでいた。
中世における酒と言えば清酒だ。何を隠そう私の大好物。どぶろくのような濁り酒も好んでよく飲んだ。
「それじゃあ、風呂から上がったら五年ろ組の部屋に来てください。」
「本当に私も参加していいの?」
「勿論。だから誘いに来たんです。」
「嬉しい、ありがとう。急いで入って来るね。」
「ゆっくりで大丈夫ですよ。」
「楽しみだから私が早く行きたいの。」
「ん゛ん……お待ちしてますね。」
「うん、誘ってくれてありがとうね。行ってきます。」
お風呂へ向かう足取りが軽くなり鼻歌まで漏れてくる。
久々のお酒。しかも仲のいい五年生とだ。心がふわふわと踊るようだった。