一章
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左門くんがいなくなってしばらくすると、潮江くんを除いた六年生と学園長先生が医務室へとやってきた。
「……!起きていらっしゃったのですね。」
立花くんが私に駆け寄る。その顔は心底ほっとしているようだった。
「……ごめんなさい。」
上手く顔を合わせることができず俯く。
幾分か心は晴れやかになったものの、やはりひどいことを言ってしまった後悔は消えない。みんなに嫌われてしまったかもしれないという恐怖で、とても顔を上げられそうになかった。
しかし降ってきたのは思いがけない言葉だった。
「謝らなければならんのは儂らの方じゃ。」
学園長先生は、いつになく真面目な調子で続けた。
「わしらはお主の気持ちに全く気づいておらんかった。潮江文次郎のことも、いずれ収まるじゃろうと楽観的な見方をしてお主をさらに追い詰めてしもうた。本当にすまんかった。」
みんなが深々と私に頭を下げる。
「そんな、顔を上げてください!私が弱音を隠してしまったのは、自分の未熟さが原因です。皆さんが謝ることなんて何一つありません。」
それは本心だった。学園に来てから、私は返しようのない施しをたくさん受けてきた。追い出されるかもしれないと怯えていたのは私の勝手な思い込みである。
「そう言えるのはお主の強さじゃ。儂らはその強さに甘えすぎてしもうた。」
「そんなこと……。」
どう反応していいかわからない。合わせる顔がないと思っていたはずの彼らは私を罵るどころか、何か決意を固めたような顔でこちらを見ている。
「償いをさせてほしい。」
「償いって、」
どういうことだろう。謝らなければいけないのは私の方なのに。散々学園中をひっかきまわして迷惑をかけたのは私なのに。
「ここをお主の家とする。誰とでも気兼ねなく話せ、安心できる場所にする。それが儂らの償いじゃ。」
後ろの六年生達も深く頷いた。途端に胸が苦しくなり、温かいものが頬を伝う。どうしてこの人達はこんなにも優しいのだろう。
「っありがとう、ございます……!」
ぽたぽたと雫が膝へと落ちていく。それを立花くんが優しく拭ってくれた。
「みょうじさん、これを。」
「あ、これ……。」
差し出されたのは昨日捨てられたはずのスマホだった。
「壊れてしまったものを元通りにとはいきませんでしたが、持っていてほしくて。」
それは布の中に大切にしまわれており、小さな欠片さえも全て拾ってくれているようだった。
「ありがとう、本当に。」
一度泣いてしまって箍が外れたのか、涙が溢れて止まらない。その布をそっと胸に抱き、改めて彼らの温かさを実感した。
「今日はゆっくり休みなさい。足も怪我しておるから当分は医務室でできる書類仕事だけしかしてはいかんぞ。」
「え。」
「無理は禁物、ですよ。」
後ろで善法寺くんがにこりと微笑む。どこかその顔には圧が込められているようだった。
「はい……。」
「うむ、それでよし。それじゃあ積もる話もあるじゃろうから儂はこれで失礼するぞ。」
また煙玉でいなくなってしまうかもしれない。そう思って慌てて頭を下げた。
「学園長先生!本当にありがとうございます。」
「はて、なんのことじゃ。」
とぼけたような素振りで笑って答えると学園長先生はそのまま姿を消してしまった。