一章
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不意に名前を呼ばれたような気がした。
ほとんど直感だったが声の聞こえた方向へと急ぐ。するとそこには泥まみれで倒れ込んでいる彼女の姿があった。
「……熱い。」
慌てて抱き上げるとこれほど雨に打たれているというのに体は燃えるようだった。己の未熟さを省みるのは後にしてすぐに学園へと帰る。
「立花先輩、なまえさんは。」
「話は後だ喜八郎、今すぐ伊作の所に連れていく。」
変わり果てた彼女の姿に喜八郎は顔を引きつらせていたが、今はそれを気にする余裕がなかった。腕の中の彼女はぐったりとしていて、呼びかけてもまるで返事がない。
「ひどい熱だ。とにかく体を拭いて着替えさせないと。山本シナ先生を呼んできてくれ。」
「ああ。」
彼女を見るなり伊作は顔色を変える。緊迫した雰囲気だった。動かなくなっている彼女の足は痛々しいほどぼろぼろになっている。
こんなになるまで追い詰めてしまったのは、同室の男を止めることができなかった自分の甘さが原因だ。
「君も、あまり思い詰め過ぎちゃ駄目だよ。」
医務室へと彼女を運ぶ伊作が、去り際に忠告してくれた。
そうだ、どれだけ後悔してもこれまでの時間は取り戻せない。私が今すべきことは他にあるのだ。それはもう明確に。
自室へと向かう足に自然と力がこもった。