一章
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食堂はたくさんの忍たま達で賑わっていた。毒が入ってないことがわかったからか、朝よりも好意的な人が増えたような気がする。
「なまえさん、僕大盛りにしてください!」
「僕は普通でお願いします。」
「私も普通でお願いします!」
「はーい、ちょっと待ってくださいね。」
乱太郎くん、きり丸くん、しんべヱくんがにこにこと注文をする。一年生はいつ見ても和む存在だ。
「はい、お待ちどうさま。」
「ありがとうございます!」
「あ、なまえさんだ。」
不意に名前を呼ばれた方を見てみると、次屋くんがいた。後ろには同じ色の忍装束を着た男の子が二人こちらを覗いている。
「こんばんは、次屋くん。」
「こんばんは。焼き鮭定食お願いします。作兵衛と左門は?」
「ああ、同じ焼き鮭定食で。」
「僕は角煮定食ください!」
「はい、ちょっと待っててくださいね。」
ご飯をよそっていると、三人の会話が聞こえてくる。
「な、なまえさん可愛いだろ。」
昨日からずっと褒め倒しだ。うっかりお茶碗を落としそうになる。
いつのまにか下の名前呼びになっているところも彼の無自覚な男前を象徴しているようだった。
「確かに可愛い!そして優しい。」
「ああ。全然悪い人には見えねえな。」
会話の内容に胸を撫でおろす。こうやって少しずつ悪い印象がなくなっていけばいいな。とりあえず初めからずっと優しい次屋くんに心の底からお礼を言いたい。
「はい、お待たせしました。」
「ありがとうございます。いただきます。」
他の二人もぺこりと頭を下げて席を探しに行った。いい子達である。
食堂はほぼ満員だが後から来る人はほとんどいなくなっている。このピークが終わったら私も晩御飯にありつけそうだ。
「みょうじさん、こんばんは。」
「あ、立花くん。こんばんは、さっきぶりだね。」
「ええ。焼き鮭定食いただけますか。」
「もちろん、いっぱい食べてね。」
「はい。」
立花くんはどうやら一人で来たようだった。
「お待たせしました。」
「ありがとうございます。喜八郎は叱っておきました。怪我されてるんですからあまり無理なさらないでくださいね。」
喜八郎……落とし穴の綾部くんか。やっぱり怒られている。本当に申し訳ない。
「ありがとう、もう少ししたら忙しいのも終わるから大丈夫だよ。」
私の言葉に立花くんが何か返そうと口を開いた時、その人が現れた。
「……文次郎。」
今朝ぶりの「文次郎くん」である。目が合うとあからさまに舌打ちをされた。
「お前、夜もいるのか。」
ぎろりと睨んでそのままどこかへ行ってしまった。どうやら私が食堂にいるのは朝だけだと思っていたらしい。段々と気軽に話せる人が増えている中、彼だけは依然明確な敵意を持って私を見ている。心が濁っていくのがわかった。
「すみません、ここのところどうにもおかしい様子でして。」
「ううん、私が悪いんだと思うから。」
「そんなことは、」
「良いの、大丈夫だから。ほら、お味噌汁冷めちゃうよ。」
心配させないように、なるべく明るい調子で答える。立花くんは納得がいっていないようだったが、渋々お盆を持って行った。
そう、私が悪いのだ。文次郎くんに疑われる余地がまだあるのだ。
少しずつできることが増えて、役に立てることが多くなればきっと話は変わってくる。害がないと理解してもらえれば彼の警戒心も和らぐだろう。
今はそんな風に考えるしかなかった。