一章
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その城が陥落する様を、遠くから見つめる二つの影がある。忍術学園六年ろ組、七松小平太と中在家長次だ。
話は二週間ほど前に遡る。学園長は教師陣と忍たま五・六年生を自身の庵に招いた。
「悪名高いスギヒラタケ城が勢力拡大の為、周辺の城に多くの間者を送り込んでおるという情報を極秘に入手した。この事態を学園が見過ごすわけにはいかん。おぬしらには緊急に潜入捜査を行ってもらう。よいな?」
忍たまたちは次々と該当の地に配置され、六年ろ組が担当したのはヤマイグチ城という小さな城だった。武器商人に扮した彼らは城の内外で聞き込みを行い、間者の動向を探った。
情報収集は概ね上手くいき、スギヒラタケ城の目論見は失敗に終わったかのように見えた。
しかし相手の数は予想以上に多かった。叩き損ねた間者があろうことか城に火をつけたのだ。放たれた火は予想以上に回りが早く、逃げ切れたのは兵士数人であった。
「ここまでするとは思わなかった。私たちの推測不足だ。」
帰路を辿っていた小平太が悔しさを滲ませる。
「……大手を振って勢力を拡大できないのならばいっそ敵を減らしてしまおうと、そういうことなのだろう。」
二人は小さいながらも温かみに溢れていたその城を思いながら、自分たちの無力さを噛みしめた。
「あの姫様も、死んでしまったのだな。」
小平太がぽつりと呟いた。
ヤマイグチ城の姫君は、その立場でありながら商人や従者にも気さくに話してくれる寛容さを持ち合わせていた。あまりに普通に接してくれるものだから、はじめは少し面食らってしまったほどである。
何事にも好奇心旺盛に知りたがる姿は微笑ましく、姫君との会話は緊迫した状況の中で二人の心が和らぐ数少ない時間だった。
「今は全体の状況整理が先だ。学園へ急ぐ。」
任務を遂行することが最優先事項。幾度となく訪れる後悔といつまでたっても慣れない喪失感を残しながら、二人はその場を後にした。