一章
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「あの、大丈夫ですか。」
眠気と格闘していたところ、上から綺麗な声が降ってきた。見上げると紫の忍装束を着た可愛らしい顔立ちの男の子がこちらを覗いている。
「できれば、助けてほしいです……。」
眉を下げてそう言えば一瞬のうちに彼は穴へと降りてきて、私を抱えた。あっという間に外である。
私とそれほど背丈も変わらず腕も細く見えたのに、あまりに軽々と持ち上げられた。やはり忍者だ、普段から鍛えているのだろう。
「ありがとうございます。本当に助かりました……えっと、」
「田村三木ヱ門です。四年ろ組の。」
「田村くん。本当にありがとうございます。何とお礼を言って良いか。」
「いえ、みょうじさんが穴に落ちてしまったのはこちらにも責任がありますので。」
「え?」
はてどういうことだろう。三木ヱ門くんはたった今ここに来たと思ったが、彼が掘った穴なのだろうか。
「これは十中八九同じ学年の綾部喜八郎が掘った落とし穴です。」
「落とし穴……。」
「普段から校庭に掘るなと言っているんですがどうにも聞かなくて。入ったばかりの方にご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。」
そう言って頭を下げてくれた。自分が掘ったわけじゃないのになんて礼儀正しい子なんだ。というかこの穴かなり深い気がするけど、その子が一人で掘ってるのか。信じられない。
「あれ、みょうじさん。怪我されてるじゃないですか。」
「え?ああ、そうかもしれないです。」
そういえばあちこちすりむいてるんだった。思い出した途端痛みが戻ってきたようだ。ヒリヒリする。
「とりあえず医務室へ行きましょう。お運びします。」
「え!?大丈夫です、自分で歩けるので!」
とんでもない申し入れに慌てて首を振る。助けてもらっただけでありがたいのにこれ以上迷惑をかけるわけにはいかない。そもそも足は怪我してないし。
いやそれを抜きにしてもこのまま運ばれるのはハードルが高すぎる。色々と気にする。しかし田村くんは私の断りをなかなか聞き入れてくれない。
「捻挫しているかもしれませんし、用心するに越したことはないですから。」
「いやいや、本当に足は痛くないのでお気になさらず!」
「……それでは助けたお礼、ということで運ばせていただけませんか。」
「それは、全然お礼になっていないような……?」
冗談かと思いきやその目は頑なだ。有無を言わさぬ雰囲気に圧され、思わず承諾してしまった。
「あ、私掃除してたんだ。どうしよう。」
「それなら私が吉野先生の方に伝えておきます。医務室に行くまではみょうじさんは動いちゃ駄目ですよ。」
話を逸らそうとしたが先手を取られた。どうやら本当に歩かせてくれないらしい。