一章
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「あれ、仙蔵一人か?」
自室に戻って本を読んでいると、ろ組とは組の連中が訪ねてきた。
「ああ、文次郎は自習になってすぐ外に出ていったぞ。なんだ、作戦会議か?」
にやりと笑って問えばそうだ!と威勢のいい答えが返ってきた。
「まあ、あまり会議することもないんだけどな!私はなまえちゃんのこと信じてるし!」
おいおいもう名前で呼んでるのか。さすがに細かいことを気にしなさすぎる。
「私たちは城が燃える様をこの目で見ているからな。一応鉢屋達にも確認をとったが、彼女は焼け落ちた城に後付されたように綺麗な姿でいたらしい。」
「まあ、城の中にはじめからいたならばそんな状態で発見されることはまずないだろうな。」
私が最初に感じた違和感はそこだった。怪我人だと運ばれてきた彼女には傷一つなく、それどころか服が燃えた形跡もない。
綺麗すぎるのだ。いくら何でも城の中にいた姫と同一人物だと紐づけるには不自然だった。
それに加えて目を覚ましたあとの彼女の行動だ。大勢の人に囲まれて緊張はしていたようだが、火事を思い出して震える様子もなければ記憶を失くしたことに混乱し泣き出すこともない。突飛なことを言い始めた時は少々驚いたが、彼女の発言はどれも彼女自身を守るものではなく、むしろ窮地に追い込むものばかりだった。
自身の首を絞める嘘をつく利点は何処にも見つからず、嘘をついてないと考えた方が合理的であった。
どこからどう判断しても彼女は真実しか言っていない。
「僕たちも彼女が間者だとは全く思っていないよ。ただ、姫君であるという可能性が決してないとは言えないんだ。あまりにひどい経験をしてしまうと、身を守るために新しい人格を作ってしまうことは医学的にあるからね。」
「もし姫様なら丁重に扱わないといけないしな。失礼のないよう俺はとりあえず姫さまとして接することにした。」
まあ、この二人らしいか。彼女と接していけば事実は自ずとわかることだ。
「文次郎はどう思ってるんだい?」
伊作に問われて昨夜のことを思い出す。嫌に突っかかってきたがあれは何だったのだろうか。まだ情報の見定めの段階で、まるで彼女が悪であると決まっているかのような物言いをしていた。
普段の文次郎であれば間者だと独自で疑いにかかることはあれど、自分の意見を他人に押しつけるようなことは想像できない。彼女が悪でなければならない何かが、あいつにとってあるのだろうか。
「あいつはなぜだか彼女を悪者にしたいようだ。今の文次郎には何を言っても無駄だろう。」
「なに!昨日の仙ちゃんとのやり取りを見てもか?」
「ああ、彼女に味方することは学園への裏切りになるそうだ。何を意固地になっているか私にはさっぱりわからんがな。」
「……危険だな。」
長次が心配そうな顔を覗かせた。
「そうだな、文次郎が彼女に何かしているところに遭遇したらすぐに距離を取らせてほしい。今のあいつは何をするかわからん。」
「わかった。」
「おう。」
「……もそ。」
「わかった!」
結局集まるまでもなかった気がするが文次郎について共有できたので良しとしよう。
それにしてもひっかかる文次郎のあの態度。もしやあいつ……いやまさかな。