一章
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しばらく自習ということになったあと、息を切らしながら作兵衛が僕達のところにやってきた。
「悪い、左門と三之助来てねえか……?」
「き、来てないよ。大丈夫?」
迷子縄を持ちながら肩で息をする作兵衛に思わず同情してしまう。
「また迷子か?」
「ああ、事務員の人の説明があったろ。あれ聞いたあと未来人かどうか確かめてくるって走って行っちまったんだよ。」
「大変だね……。」
「教室内だったから油断してたぜ……。」
「それって、あの二人は間者だとは思ってないってことか?」
今の作兵衛にその話広げるんだ。
藤内はその場の空気を気にせず思ったことを何でも言ってしまうところがある。確かに僕も興味はあるけれど。
作兵衛はは組の教室を出ようとしていたところだったが足を止めて律義に答えてくれた。
「あ?ああ……俺は未来なんて信じらんねえし間者かもしれないから危ねえことすんなって言ったんだけど、嘘かどうかは目を見りゃわかるって左門が飛び出しちまったんだよ。三之助も可愛いかどうか確かめてくるってついて行っちまって……。」
二人らしいといえば二人らしいが、作兵衛には心中お察ししますとしか言えないな。
「まあ、事務員の人の説明受けてる時もあいつらは好反応だったし、悪い印象は受けてないんじゃねえかな。」
「そうか。僕は姫本人なんじゃないかと思ってたから意見を聞いてみたんだ。」
「まあ、まだ何とも言えないよね。」
そんなこと考えてたんだ、という驚きと同室の僕より先に作兵衛に言うんだ、という落ち込みを抱えながらも会話に入る。実は人間じゃないのではと自分が考えていたことは何となく恥ずかしくて言えなかった。
「ああ、ここにいたの。」
珍しく孫兵までやってきた。
「孫兵が自分から会いに来るなんて珍しいな。どうしたんだ?」
「いや、ろ組の教室に作兵衛がいなかったから探してたんだ。」
「俺?」
「ああ。さっき左門と三之助が学園の外に出ていくのが見えたからさすがにまずいんじゃないかと思って。」
「おまっ、それを早く言え!」
どうして事務員の人を探しに出てそうなってしまうんだろう。飛び出していった作兵衛の背中を見送りながら心の中でお疲れさまと声をかけた。
「そうだ、孫兵は事務員さんについてどう思った?」
「?どうって、新しく入った人だろう。」
「いや、そうなんだけど。ほら、怪しいとか信じられないとか思わなかった?」
「……特に何も。僕はジュンコとの仲を邪魔されなければ何でもいいよ。」
それじゃあ、と出て行ってしまった。毒虫や動物以外に全く興味がないというのも問題があるんじゃないだろうか。少しくらい人にも目を向けてくれと願いながら去って行く背中を見送った。