一章
設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「聞いたか?未来から来たとかいう女の話。」
三朗次たちが二年は組の教室に走ってやってきた。
先程各教室で新しい事務員さんを雇ったという説明があった。彼女が元いた世界は僕らの時代よりもっとずっと未来であるらしい。彼女の正体について僕たちが考える時間の為に、今は全学年自習になっている。
「うん、さっき聞いたよ。びっくりしたあ。」
ほわほわと話す学友の反応が面白くなかったのか、三郎次は少し強めの口調になった。
「呑気にびっくりしてる場合かよ!あんなの嘘に決まってんじゃん、なあ?」
「ああ、学園長先生はきっと監視の為に学園に置くことにしたんだろう。」
「ええっ、曲者ってこと?」
さも当たり前かのように決めつけている二人に四郎兵衛は驚きの声を上げた。
「そうだよ!まあ、僕ならもっとましな嘘つくけどね。」
三郎次と久作の言葉に四郎兵衛はうーんと考え込んでしまった。
「僕は……お姫様と同じお顔なら、お姫様なんじゃないかって思うんだけどなあ。」
「何言ってんだよ。そんなの鉢屋三郎先輩みたいに変装名人なのかもしれないだろ。」
「それはそうだけど……。」
反論されるとまた四郎兵衛は考え始める。
「ねえ、左近はどう思うの?」
先程から何かを思案している様子の左近に声をかける。
「え、ああ。僕も姫なんじゃないかと思うんだけど。」
「はあ?左近までそんなこと言うのかよ。」
三郎次は不満そうだ。
「極限の状態にさらされたときって、記憶がなくなることがあるらしいんだよ。姫様の城って全部燃えてたんだろ。それで一時的に記憶を失くして、自分を守る為に頭の中で書き換えたんじゃないかと思ってさ。」
「……確かに一理あるな。」
先程まで三郎次派だった久作も意見が揺らぎ始めたようだ。
「石人は?」
聞きっぱなしだった僕にも順番が回ってくる。
「僕は紹介された通り、偶然未来から来てしまった人なんじゃないかって思うんだ。」
「なんで!?」
「だって僕がもし間者だったら、そんな嘘つかない。三郎次もさっき言ってたけど、もっとましな嘘は山ほどあるもの。わざわざ未来から来たことを伝えたのは、逆にあの人が嘘をつきたくなかったからなんじゃないかな。あんまり僕には悪い人には思えないけど。」
まあ僕の憶測だけどね、と付け足す。三郎次は不服そうに口を尖らせたが先程間者だと言い切っていた勢いはなかった。
新しい事務員さんが学園長先生を信じて訳を話したのなら、きっと彼女は敵じゃない。人を信じることができる人が悪人なわけがないって、僕はそう思うんだ。
その後も話し合いは続いたけれど、四郎兵衛は考え込んだままだった。