一章
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彼女が学園内で働くことになったと伝えられたのはそれから間もなくのことだった。昨日大体の状況を把握していた上級生から今日初めて知った下級生まで、反応は様々であった。
「喜八郎、お前はあの人についてどう思う。」
「別に。立花先輩の質問にもちゃんと答えてたし普通の人なんじゃない。」
「まあ別の世界から来た、と言っていることを除けば怪しい感じはしないからな。……しかし私は記憶を失くした姫ではないかと疑っておるのだ。」
「なんで?」
「よくぞ聞いてくれた喜八郎!それはな、この私と彼女が少し似ているからなのだ。」
「はあ?」
四年い組の部屋に集まって意見交換を行っていたらまた滝夜叉丸の病気が始まった。喜八郎も何言ってんだこいつという顔で見ている。
「昨日の夜の立花先輩とのやり取りを見ただろう!落ち着いた立ち振る舞い、思慮深い言葉、この高貴な平滝夜叉丸と似通っていると思わんか?溢れ出るカリスマ性は私には及ばんがあれはやはりどこかの城の「タカ丸さんはどう思いました?」
うるさかったので無理やり話を終わらせる。危うく意見交換会が滝夜叉丸の演説会場になるところだった。
「うーん、僕は忍たまになってまだ日が浅いからよくわからないけど、普通の可愛い女の子に見えたなあ。怖い感じはしなかったと思うけど……三木ヱ門は?」
「私も、普通の女性に見えました。嘘を言ってるようにも見えなかったですけど……。」
「けど?」
「潮江先輩が……。」
「潮江くん?」
「はい。早朝会計委員会に召集がかかったんですが、そこで今日紹介される間者には気をつけろ、と。」
「潮江会計委員長はあの人のことを確実に間者だと思っているということか。」
「ああ。」
滝夜叉丸の質問に肯定で返す。
そうなのだ。今朝の潮江会計委員長の様子はどうにもおかしかった。あの女性がこの学園に来てまだ一日と経っていない。不確定な情報が多い中、学園一ギンギンに忍者している先輩があの女性の正体を決めつけているということに些か違和感を覚えた。
熱くなるところはあるが、優秀な忍者として冷静さも兼ね備えておられるお人だ。普段の潮江先輩からは考えられないほど感情的な態度があまりに不思議だった。
「ふーん。まあ疑うのは忍者の本質だし潮江先輩ならあり得そうだけど。守一郎は?」
「俺?俺は……。」
喜八郎がつまらなさそうに相槌を打ち話題を振ると、突然守一郎が神妙な面持ちになり何故かぶるぶる震え始めた。
「俺はさ……ゆ、幽霊じゃないかって思うんだよ……。」
「はあ?」
本日二回目。再び喜八郎の何言ってんだという視線が刺さっている。
「だってそうだろ!?城は消失!みんな死んでる!なのに姫の顔と同じ人!だからさ……彷徨ってんだよ。死んだって気づいてない姫が無念の思いを晴らすために……。」
「いや、足あっただろう。」
あんなにしっかりとした幽霊がいてたまるか。
「最近の幽霊は足があるんじゃないか?」
「う、うーん。幽霊かどうかはわからないけど会話はできるみたいだったね。」
意外と天然で思い込みの激しい守一郎をタカ丸さんがやんわりと諫める。
「まあ、何にせよまだ様子見するしかないってところか。」
すぐに自分語りを始めるくせにこういう時は冷静だ。
「そうだな。」
自分はまだ潮江先輩の発言が気にかかっていたが、滝夜叉丸がまとめたのでとりあえず保留ということでその場は解散となった。