二章
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きり丸と食堂のおばちゃんが血相を変えて戻ってきてからというもの学園全体に緊迫した空気が流れていた。
「つまりお主等とドクたま諸君の会話が八方斎に伝わったかもしれぬという事じゃな?」
「「「っはい、ごめんなさぁい……!」」」
きり丸の証言から彼女を攫った犯人はドクタケ忍者隊だと見当をつけ奴らの情報の入手先を探った。すると心当たりがあると名乗り出たのは乱太郎・きり丸・しんべヱの三人。一週間程前にドクたま達と遊んだ際みょうじさんの事を紹介したらしい。まさかそれが八方斎に聞かれていようとは。
己を責めながらわんわんと泣き喚いている三人を抱きしめ背中をさする。乱太郎は目を真っ赤にさせて私の服にしがみつきぼろぼろと涙を溢れさせながら祈るようにこちらを見上げた。
「土井せんせ……っ、なまえさん、なまえさんを……っ助けてください……!」
「ああ、大丈夫だ。直に彼女は戻ってくるさ。」
彼らが不安にならぬよう笑みを作り頭を撫でる。しかし心中は穏やかでなかった。彼女を敵に引き渡してしまった己の不甲斐なさ、外の世界に危険はないとタカをくくっていた認識の甘さ。我々の油断が招いた結果に腹の奥が煮えくり返る。
学園長の庵に集められた連中は皆一様に私と同じ顔をしていた。恐ろしい程に冷静な、光と温度を失くした忍びの瞳。そこら中に漂っている殺気に中てられそうだ。それ程彼女はこの学園にとって大切な存在なのだと今更ながらに思い知らされる。
「相手がドクタケならば話が早い。学園長、救出の許可を。」
「うむ。」
先陣を切ったのは六年い組の立花仙蔵。いつもと変わらぬ涼しげな目元だがその声は特段に低かった。その後ろで無言を貫いている鉢屋三郎と尾浜勘右衛門も唇をきつく噛みしめ俯いている。
「良かろう。六年い組と土井半助、お主等にあの子の救出を命じる。他の者もいつでも出動できるよう万全な状態で待機しておくのじゃ。」
「はっ。」
正式に出動命令が出され六年い組と視線を合わせる。まだ彼女を手放してなるものか。お互いの意志の固さが結束へと繋がり握る拳に力が入る。敵の本拠地にいざ参らんと夜の闇に消えようとしたその時学園長は不敵に笑った。
「運の良い事に今宵は雨。月の出る心配もなければ足音を隠す必要もない。天はあの子に味方しておるぞ。」
要は存分に暴れて来いという意味だろう。頼もしい言葉に頷いて頭巾をきっちり結び直す。最後にもう一度乱太郎達の頭を撫でるときり丸がいつになく真剣な面持ちで私の腕を掴んだ。
「なまえさん多分怖がってると思うんすよ。僕は一緒に行けないけど、でも、一人じゃないってちゃんと伝えてください。」
嗚呼、この子はいつからこんなに強くなったのだろう。全く子供の成長というのは早いものだ。
「……それは帰ってから直接お前が伝えてあげなさい。」
「!……そっすね、そうします。」
私の返事に口角を上げたきり丸はもう泣いてはいなかった。良い顔だ、これで残りの二人を任せられる。
不安要素もなくなり今度こそ雨の中へと駆け出した。さて一足先にドクタケ城へと向かった六年い組とどの辺りで合流できるか。
滴る雫によって湿っていく布が今の体には気持ち良い。沸騰した頭を冷やすかの如く雨は勢いを増し私の背中を押してくれた。