二章
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嗚呼どうしてだろうか無性に腹が立つ。利吉さんにも鉢屋にも尾浜にも。彼女に愛しいという視線を向ける者全てが腹立たしくて気が狂いそうだ。
帰る帰らないの瀬戸際で揺れている彼女に何故ああも無神経に手が伸ばせる。その選択が彼女をこの世界に縛りつけ、輝かしい未来を食い潰すかもしれないというのに。
私もあのような感情を彼女にぶつけられたらと何度も思った。しかし出来ない。だってそうだろう。彼女が元の世界に戻れた方が幸せだというのは変えがたい事実。己の欲のままに手を引きその笑顔を曇らせるなど言語道断だ。
舌打ちを浴室に響かせ目の前の湯を乱暴に叩いた。あまりに誤算すぎる強敵の出現に私は少なからず動揺していた。
「なまえさん、もし許されると言うなら私は……その、貴方のことを……。」
あそこで私が言葉を遮っていなければ。利吉さんが最後まで思いの丈を告白していたならば。彼女は、何と答えたのだろう。私に向けてくれるような笑顔で利吉さんにも笑いかけただろうか。
「……らしくないな。」
深い溜息を吐き目を閉じる。過去のもしも話を考え込んだところで自身の問題が解決するはずもなかった。幾ら頭を悩ませたとしても私にできる事はただ一つ。今この時間を大切に生きる、それだけだ。
少しでも長く彼女の側にいられるよう。誰よりも早く彼女を守れるよう。多少自分を殺してでも彼女にとっての一番の席を譲るつもりはない。それで傷ついたとしても本望だ。
まあ、利吉さんのように行動に移し始める輩が出てきたというのなら私も決して黙ってはいないが。
「後輩だけで手一杯だというのに……。」
脱衣所に向かう為に立ち上がれば湯舟が波打つ。揺れる水面はまるで心を映しているかのようで思わず自身の我慢強さに苦笑した。