一章
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彼女の声は震えていた。
目の前の女の言っていることは俄に信じられる話ではなかったが、彼女が嘘をついているようには見えない。実際学園に来て彼女は一度も乱太郎達に会っていないのである。脈絡なく突然彼らの名前が出てくることはやはり不可解だ。
そういえば、ヘムヘムがお茶を運んできた時彼女は異様に動揺していた。あれは彼女自身が異世界に来たと気づいたからであったのだろうか。
過去に遡ってしまったのだと混乱しているところに自分の見知った物語の登場人物が現れ、さぞ驚いたに違いない。それどころかまさにあの瞬間、本来の世界でないことに確信を持ってしまったのではないか。
そんな精神状態であの威圧的な大人達に囲まれていたのか。
誰も自分を認識せず、自分の姿に違う人間を映しているあの状況に彼女はどれだけ不安だったことだろうか。その小さな体で殺気を一身に受け、静かに恐怖に耐えていたというのか。
いつのまにか彼女への疑念は消えていた。力なく笑う彼女の手を取り、強く握って真剣な表情で口を開いた。
「私は貴方を信じたい。そのために最後にもう一つ聞いてもよろしいか。」
突然の自分の行動に戸惑ったようで、一歩後ずさったが先程までと違う何かを感じ取ったのか踏み止まってくれた。
「ありがとう。何でも答えるよ。」
「貴方が姫とは別人であるという証明はできますか。」
彼女は一瞬どうしたものかと思案したがすぐに思い当たったらしかった。
「私、一人で着付けができないの。これもシナ先生に着させてもらって……。あと、文字がわからない。元いた世界で使ってた字なら書けるし読めるけど、この時代の文字は辞書がないと読めない。お姫様なら教養の為に読み書きくらいは身に着けてたかなって……思ったんだけど……。」
段々尻すぼみになっていく彼女の言葉に「なるほど」と返すとほっとしたように笑ってくれた。