寮
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女子は全員部屋作りが終わり、みんなで共同スペースに向かっている。男子もほぼみんな終わっていたようで、1階に到着すると上鳴くんたちがソファに座って談笑していた。
「男子部屋出来たー?」
「うん、今くつろぎ中。」
「あのね!今話しててね!提案なんだけど!お部屋披露大会しませんか!?」
主に三奈ちゃんを中心にあれよあれよとまとまった話。せっかくだからみんなの部屋を覗いてみたいという好奇心らしい。人のおうち見るのちょっと楽しいよね、わかる。けどちょっと待って女の子だけかと思ってた。男子にも部屋見られるのか。これはまずい。
けれど特に拒否権もなく男子もされるがままさっさと緑谷くんの部屋に辿りついてしまった。三奈ちゃん、行動力の化身。展開の速さについて行けてない。
「わあダメダメちょっと待ー!!!」
抵抗も虚しく容赦なく開けられてしまう緑谷くん。中はオールマイトのグッズだらけでいかにも緑谷くんって感じだ。
「オールマイトだらけだオタク部屋だ‼」
「憧れなんで……恥ずかしい……。」
お茶子ちゃんにハッキリ言われて緑谷くんは照れてる。でも統一感があってなかなか楽しい部屋だ。これ、限定品のグッズとかいっぱいあるんだろうな。なんだか周りも面白くなってきたようですぐに次の部屋へと移動する。
「フン、下らん……。」
緑谷くんの次は常闇くんのお部屋。けど彼はどうやら開けられたくないようで。ドアの前で佇んで私たちの侵入を防いでいる。そんな常闇くんを三奈ちゃんと透ちゃんが無理矢理押しのけ構わず部屋に入る。こんなにされるがままの常闇くん初めて見た。二人ともなかなか強引だなあ。
「黒‼怖!」
「貴様ら……。」
イメージ通りというか常闇くんの部屋は本当に黒かった。どくろなんかも飾られていてなんて言うか全体的に暗い。目悪くしたりしないのかな。
「お部屋黒いってこういうことだったんだね。」
「あまり見るな。」
「素敵だと思うけどなあ。」
合宿で部屋の話をしたのを思い出す。こんなに言葉通り黒いとは思わなかったなあ。でも燭台とか一つ一つのアイテムはアンティークっぽくてちょっと憧れる。常闇くんは早く出て行けとすぐに私たちを追い出した。
次は青山くん。常闇くんとは対照的に光り輝いている。サングラスがほしいくらいだ。部屋の中にミラーボール二つあることある?
「思ってた通りだ。」
「想定の範疇を出ない。」
三奈ちゃんと透ちゃんのお眼鏡には敵わなかったらしい。一瞬で部屋を出て行ってしまう。次の部屋に向かおうとしたらドアの前で峰田くんがすごい顔をしていた。
「入れよ……。すげえの見せてやんよ。」
息が荒くて怖い。その中に何が隠されてるのか。満場一致でスルーして別の階に向かうことになった。次は尾白くん。シンプルで素敵だと思うんだけど、女性陣から普通という単語の嵐が吹き下ろされた。
「いいお部屋だと思うけど……。」
「いいんだみょうじさん。気遣ってくれなくても……。」
すっかり自信を無くしている尾白くん。いや本音なんだけど。傷心の彼を横目に飯田くんの部屋へと向かう。
「メガネクソある!」
「何が可笑しい‼激しい訓練での破損を想定して……」
「全部同じなの?」
「ああ!全く一緒だ!」
「ブフウ‼」
棚に並べられた大量のメガネがツボに入ったようでお茶子ちゃんがしばらく笑い転げていた。一つも違うメガネがないの逆にすごいな。他は整理整頓がきちんとされていて、いかにも真面目な飯田くんらしい部屋だった。
次は上鳴くん。バスケのボールがあったりスニーカーを飾ってたり。今時の男の子って感じの部屋だ。女子からはチャラいと言われて不評。本人はかなり不満そうに口を尖らせていた。確かにヒョウ柄のシーツってちょっと軽めのイメージかもなあ。
その後向かった口田くんの部屋にはなんとうさぎがいた。みんな部屋そっちのけでモフり始める。
「うさぎさんかわいいねえ。」
「ペット可なんやなこの寮。」
「ホグワーツみたい。」
三奈ちゃんとお茶子ちゃんと一緒にうさぎを愛でる。ほわほわと癒されまくり、なんかお部屋披露大会ここで終わりでいい気がしてきた。女子はみんな同じ気持ちのようで若干解散ムードが漂う。
けれどそうは問屋が卸さない。散々酷評をされた男子たちが不満を零し反撃に出た。
「釈然としねえ。」
「ああ……。奇遇だね。俺もしないんだ釈然……。」
「そうだな。」
「僕も☆」
普段文句を言ったりしない尾白くんや常闇くんまで上鳴くんに同意する。みんなかなり色々言われてたからなあ。
「男子だけが言われっぱなしってのはぁ変だよなァ?大会つったよな?なら当然!女子の部屋も見て決めるべきじゃねえのか?」
一番言葉に熱がこもっている峰田くん。いや、峰田くんはスルーされたんだから酷評もされてないじゃん。
「誰がクラス一のインテリアセンスか全員で決めるべきなんじゃねえのかあ!!?」
絶対女子部屋見たいだけな気がする。けれど男子たちの不満の表情を見るとそうは言いだせなかった。なぜか三奈ちゃんもいいじゃん!と提案に乗ってしまったし。いいのか。
というわけで急遽第一回A組ベストセンス決定戦が始まった。部屋王を決めるらしい。まさかの焦凍くんまで付き合ってくれてる。どういう状況なんだろうかこれ。
ちらりと瀬呂くんの方を見る。なんとか彼には部屋を見てほしくないけど、無理だろうなあ。楽しんでる皆をよそにこっそりため息を吐いた。
気を取り直して切島くんのお部屋。どうやら爆豪くんは先に寝てしまったらしい。早寝だ。おじいちゃんじゃんとか言うと絶対爆破されるから黙っておこ。部屋のドアを開けようとすると切島くんが女子にはわかんねえぞと前置きした。どんな感じだろう。
「うん。」
「彼氏にやってほしくない部屋ランキング2位くらいにありそう。」
「アツいね。アツクルシイ。」
「筋トレ部屋だね。」
サンドバッグが存在感を放ちダンベルが転がっている。そしてなぜか大漁と必勝の旗が貼られていた。応援団長かな?案の定女子からは散々な言われよう。確かに彼氏の部屋がこれだとちょっとびっくりするかもなあ。けど熱血な切島くんらしい部屋だ。
次は障子くん。本人が面白いものはないと言う部屋は面白いものどころか机と布団以外何もなかった。
「ミニマリストだったのか。」
「まァ幼い頃からあまり物欲がなかったからな。」
「確かに障子くんっぽいかも。」
意外というより言われてみればって感じだ。強欲故に物であふれかえった部屋の障子くん、全然想像できないもん。がらんとした部屋の中に私物とか置いていったら怒られるだろうか。
次は5階。瀬呂くんの部屋に行くらしい。さっきまで大丈夫だったのに急に緊張してきた。覗いてしまっていいんだろうか。内心ドキドキしていると響香に小突かれた。危ない危ない。顔に出さないよう気を付けないと。
瀬呂くんの部屋はリゾートホテル感のあるかなり素敵なお部屋だった。照明も凝ってる。家具も小物も統一感があってお洒落。ちょっとこれは。私今まで見てきた中で一番好きかも。
「エイジアン‼」
「ステキー!」
「瀬呂こういうのこだわる奴だったんだ。」
「へっへっへ、ギャップの男瀬呂くんだよ。」
何か心臓うるさくなってきた。あまりに好みの部屋過ぎて何も言えない。ギャップにまんまとやられてる。こういうとこもずるい。でも今は彼と目を合わせることができなくて、必死で顔が熱いのを誤魔化す。周りの女の子たちも私の反応を気にしてるみたいだったけど、結局何も言葉を交わさないまま焦凍くんの部屋へと向かった。
「さっさと済ましてくれ。ねみい。」
「えっ……え?」
焦凍くんのお部屋はなんと和室になっていた。フローリングはどういうわけか畳に変わっている。どうやったのこれ。一人だけ業者呼んでたとしか思えない。
「和室だ‼」
「造りが違くね!?」
「実家が日本家屋だからよ。フローリングは落ち着かねえ。」
「多分みんなが知りたがってるのそこじゃないと思うよ焦凍くん。」
「そーだよ!当日リフォームってどうやったんだおまえ!」
「……頑張った。」
そうか、頑張ったのか。頑張ったら和室に出来るものなんだろうか。イケメンのやることは違うなという謎の結論になって次の部屋へと向かう。みんな深く考えるのやめちゃったんだなあ。
砂糖くんの部屋はシンプルで綺麗な部屋だった。ドア開けた瞬間から甘い匂いが漂ってくる。なんかおいしそうな香り。
「ああイケね‼忘れてた‼大分早く片付いたんでよ、シフォンケーキ焼いてたんだ‼みんな食うかなと思ってよォ……。」
砂糖くんの言葉にみるみる明るい表情になっていく女子たち。私も例外じゃない。シフォンケーキってその響きだけでよだれ出てくる。
「ホイップあるともっと美味いんだが……食う?」
「食う~!」
女子全員で砂糖くんに群がる。切り分けてもらって早速口いっぱいにケーキを頬張った。ふわっふわでバニラの香りがしっかりしておいしい。料理男子最高。
「ん~染みる。」
「瀬呂のギャップを軽く凌駕した。」
「オオ、こんな反応されるとは……。まァ個性の訓練がてら作ったりすんだよ。」
絶賛の嵐で砂糖くん照れてる。それにしてもシュガーマンの名前は伊達じゃない。プロ顔負けのスイーツで女子のハートをがっちり掴んだ。お菓子ってみんなの心を一つにするから偉大だ。今度私も一緒に何か作りたいなあ。
「ちっきしょー、さすがシュガーマンを名乗るだけうまっ!」
「ここぞとばかりに出してくるな……うまっ……。」
「男子は以上……うまっ。」
女子だけじゃなく文句を言っている男子のハートも掴んで男子部屋は終了となった。次は女子部屋、いったん一階に降りて女子棟に向かう。みんな語尾がうまっになっていて、それは口の中からシフォンケーキが消えるまで続いた。