合宿
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声を抑えながら夜の闇を進む。みんなお互いが戦った相手は気になるようで、私にも焦凍くんから質問が飛んでくる。
「ガスの敵、どんなだったんだ。」
「なんか多分……中学生かなぁ。ガスマスクして拳銃持ってたよ。」
「け、拳銃!?みょうじさんも相当危なかったんだね……。」
「結構きつかった。でも鉄哲くんと拳藤さんが頑張ってくれたから、なんとか倒せたよ。」
自分の方がボロボロだろうに、労ってくれる緑谷くん。彼は洸汰くんの両親を殺した増強型の敵と遭遇したらしい。無事洸汰くんは助けられたみたいだけど、あまりに戦いは壮絶だったようだ。彼の折れた両腕がそれを物語っている。
それにしても、眩暈が増してきている。足元もおぼつかない。このままだと焦凍くんあたりにはばれるかもしれない。なんとか不調を悟られないよういつも通りを装う。
森を突っ切っていると私たち以外の声が聞こえてくる。誰だろう。敵かもしれない。警戒していると障子くんが声のする方へと駆け出した。
「麗日!?」
必死で足を動かしながら後を追う。するとお茶子ちゃんが敵を抑えつけているところだった。梅雨ちゃんは髪を木に貼り付けられ身動きが取れなくなっている。
相手の敵も女の子。制服を着ている。この子も敵連合なのか。一体どうなってるんだ。私たちと変わらない年齢の子たちが、平気で人を殺そうとしている。
「障子ちゃん、皆……!」
「あっ、しまっ……!」
私たちに気づいた敵がお茶子ちゃんを押し抜け森の中へと入っていく。
「人増えたので殺されるのは嫌だから、バイバイ。」
「!?」
やけにあっさり引き下がる。そういう指示のもと動いているのだろうか。彼女はじっとこちらを見たあと夜の闇に消えて行った。お茶子ちゃんが追いかけようとするけど深追いは危険だ。梅雨ちゃんが制してくれたこともあり、ようやく一息ついて合流する。
「2人とも大丈夫?」
「何だ今の女……。」
「敵よ。クレイジーよ。」
「麗日さんケガを……‼」
「梅雨ちゃんも口元血ついてる……!」
お茶子ちゃんは腕と脚から血が出ている。さっきの子、この2人相手にここまで攻撃できたのか。かなり脅威だ。あんなに華奢に見えたのに。恐らく体の使い方が上手いのだろう。
「大丈夫全然歩けるし……。っていうかデクくんの方が……!」
「立ち止まっている場合か。早く行こう。」
障子くんに促され再び歩き始める。そうだここでじっとしてたらまた敵に襲われるかもしれない。円場くんや爆豪くんが心配だし先に進んだ方がいい。私も早く施設で休まなきゃ。
「とりあえず無事でよかった……。そうだ、一緒に来て!僕ら今かっちゃんの護衛をしつつ施設に向かってるんだ。」
「……ん?」
「爆豪ちゃんを護衛?」
緑谷くんの誘いに2人が首をかしげる。どうしたんだろう。何か変なこと言ったかな。
「その爆豪ちゃんはどこにいるの?」
「え?」
その言葉にばっと後ろを振り返る。体温が下がっていくのがわかった。
「何言ってるんだ。かっちゃんなら後ろに……。」
振り向いた緑谷くんも顔が真っ青に変わる。この非常時に油断する人なんていない。みんな細心の注意を払っていたはずだ。それなのに。
後ろにいたはずの爆豪くんは忽然といなくなっていて。呆然とただ誰もいない夜の闇を見つめる。足の火傷がじわりと痛んだ。