個性把握テスト
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個性把握テスト。その名の通りらしい。
中学までは体力テストで個性を使うことは禁止されていたが、ここではガンガンに使っていいってことだ。
さっき眼鏡の人と言い合いをしていたヤンキーの彼は爆豪くんというらしい。消太くんに促されて個性を使用した状態でソフトボールを投げた。
「死ねえ!!!」
死ね?
いや怖すぎる。怖すぎるけどめちゃくちゃ飛んだ。個性使用可の体力テスト、面白いかも。
そう思ったのは私だけではないようで、あちこちから面白そう!と聞こえてくる。
「面白そう……か。ヒーローになるための3年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?」
消太くん顔怖い。爆豪くんに負けるとも劣らない。
私たちのお気楽気分が癇に障ったようで、体力テスト最下位の人は除籍処分になってしまった。生徒の如何は先生の自由。何とも雄英らしい仕組みだ。恐ろしい。
それにしても8種目かあ。私の個性が使えるのは4種目くらいかな。残りは地力に頼るしかない。
1種目目は50m走。スタートと同時に風を起こし、自分の体をゴールまで持っていく。一切地面に足はついてないけど、個性使用ありだから大丈夫だ。
「4秒12!」
まずまずだ。2種目目の握力はどうしようもない。立ち幅跳びは行こうと思えばどこまでも飛んで行けるのでかなり良い得点になった。
ソフトボール投げは風を起こせる範囲に限界があるため、∞という前代未聞の記録を出した女の子には及ばなかった。
「みょうじさん、すごいね。」
「えっ。そんな、∞の方がすごいよ。」
突然名前を呼ばれて驚く。さっきの可愛い子だ。
「ウチ、麗日お茶子。みょうじさん50m走からずっと高得点で目離せへん!」
「み、見られてた……!」
「なんやろ、かわええから目で追っちゃうんかな。」
「いやいや、いやいや!」
「あは、しゃべれてへん~。」
急な褒めに顔が熱い。どうしていいかわからずいやいやbotになってしまった。
「……あれ、緑谷くんどうしたんやろ。」
「ん?」
麗日さんの視線の先にはもさもさの髪の人。ボール投げをしているはずだけど飛距離的に個性使えてない……?
「個性を消した。」
ああ、消太くんか。幼くてまだ個性制御が上手くいかなかった頃、個性を消すことができる彼に私も何度か消してもらったことがある。
「見たとこ……個性を制御できないんだろ?また行動不能になって誰かに助けてもらうつもりだったか?」
また?入試で何かあったのかな。
「ウチ、実技試験で緑谷くんに助けてもろてるんよね。」
「そうなの?」
「動けんくなったところを0ポイント敵倒して助けてくれて、でも緑谷くん自身は手も足も折れとったみたいで……。」
「ひぇ……。」
人を助けることに躊躇をしないというのはヒーローにとって長所だ。それでも手足を折ることも顧みず敵に突っ込んでいけるものだろうか。
ボール投げは2回。先ほどから彼はあまりいい成績を残せていないように見える。ここで高得点を取らなければ、恐らく除籍は彼だ。
緑谷くんは何かブツブツと独り言をしゃべり始めた。分析だろうか。
1回目と同じ構えに見えたため捨て身の投球かと思ったけれど、どうやら違うらしい。彼は増強系の個性を指先に集中させ、骨折を人差し指1本に抑えてボールを投げた。
入試で行動不能になって今も怪我をしているってことは、個性を制御できていないのだろう。使うたびに骨が折れるほどの強い個性。自らその痛みに飛び込んでまで、彼はヒーローになりたいのか。
まだ動けると涙をためながら笑った緑谷くんが、私は少し怖かった。