期末テスト
設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
次の日。やってきました木椰区ショッピングモール。県内最多店舗数を誇るだけあって大きい。何でも揃いそうだ。
「お、今日も可愛いな。」
「いやはや毎度褒めていただきありがとうございます……。」
「褒められると敬語になるのなんなのよ。」
今日はプリーツスカートっぽく見えるワイドパンツにセーラーっぽいブラウス。新しい服を見るたびに褒めてくれる瀬呂くんはスマートであまりに女心がわかっている。ちゃんと反応できなくてごめん。
昨日女子全員にデートするのがばれたことは言えてない。私たちを見守る生暖かい目線に彼は今日何度も首をかしげている。非常に申し訳ない。みんなニヤニヤやめて。
「とりあえずウチ大きめのキャリーバッグ買わなきゃ。」
「あら、では一緒に回りましょうか。」
「私も行きたい。」
「瀬呂さんのところはよろしいのですか。」
「オキニナサラズ。」
百ちゃんまで。なんでこうなったの。問題ないことを伝えると2人は快く受け入れてくれ、一緒に回ることになった。三奈ちゃんと透ちゃんは一緒にいると絶対おもちゃにされるのでなるべく避けたい。
ちらりと遠くを見ると緑谷くんとお茶子ちゃん。何かを話したあとお茶子ちゃんは突然顔を赤くさせて走って行った。緑谷くんはわけが分からないという表情をして取り残されてる。やっぱり青山くんの言葉完全に意識してるなあ。私も追い打ちみたいに一緒に聞いちゃって、悪いことした。
「なまえってメイクする?」
「うーん、あんまりしないかなあ。今日もチークとリップくらいだし。」
「デートではどうなさるんですか?」
「え、考えてなかった。」
旅行用グッズのコーナーでキャリーケースを物色しながら来週の話をする。なんか私よりみんなの方が真剣に考えてる気がしてきた。いや私もちゃんと楽しみにはしてるんだけど。
「んじゃ、あとでコスメも見にいこ。こういうのは三奈がいた方がいいと思うから合流してさ。」
「なんかほんと大事になってる。」
「私こういうの初めてでして。お力添えできるかわかりませんが精一杯頑張りますわ!」
「お手柔らかにお願いします……。」
百ちゃんが本気出したら有名なスタイリストですの!って言ってプロ連れてきそうだからなあ。何とかクラス内で収めたい。
「お、これにしよかな。」
「響香っぽくてかっこいいね。」
「素敵です。」
黒のシンプルなスーツケース。これからシールなどでデコるのだそうだ。パンクでいいね。3人で水着コーナーにも行き、ちょっと可愛らしい感じのビキニを半ば強引に買わされた。フリルがついたやつ。
三奈ちゃんと透ちゃんとも合流し、今は5人で化粧品を見ている。普段はナチュラルメイクしかしないけど、化粧品を見ること自体は好きだ。キラキラしてて綺麗で、特にシャドウとリップはほしくなってしまう。
「なまえ完全ブルべだよね。」
「あ、うん。前に診断したときブルべ夏だったよ。」
「じゃあメイクはラベンダーかローズピンク系ですかねえ。」
透ちゃんが博士みたいな口調でチークを選んでいく。みんな本気で考えてくれてるみたいで申し訳なくなる。情報筒抜けで瀬呂くんにも申し訳ない。
「わかってはいるんだけどオレンジ可愛いって思っちゃうんだよね。」
「あーわかる。……って今ののろけだったりする?」
「え?」
どういう意味だろって思ったけど、そうか。瀬呂くんのイメージカラー。完全に偶然だったけど指摘されて一気に顔に熱が集まる。百ちゃんも頬染めてこっち見ないで。
「ち、違う違う!ほんとにただオレンジのリップとか可愛いなって!」
「ほーう。」
「ほんとに違うからね……!」
「怪しいのう。」
「コラ、あんまからかわない。」
響香が助け船を出してくれて何とか2人の魔の手から逃れる。からかい甲斐があるなーって笑われた。やっぱりおもちゃにされてる。
「んー、こんなもんかなあ。」
「買った買った。」
みんなの腕には結構な量の化粧品。自分用のもあるだろうけどほぼ私のためだ。これ全部試すんだろうか。一体私の顔はどうなってしまうんだ。
「あ、いた!」
「尾白くん。」
私たちを呼び止めたのは尾白くん。焦った様子で走ってくる。どうしたんだろう。
「緑谷が、敵に遭遇した。」
「え、」
その言葉と同時に非常ベルが鳴る。楽しかった雰囲気が一変した。
私たちは警備員さんや警察の誘導に従って避難し、ショッピングモールは一時閉鎖されることになった。
緑谷くんが遭遇したのはなんと敵連合の主犯・死柄木弔。これほど人の多い場所に敵連合に死柄木がいただなんて。他のお客さんも含めみんな無傷だったのは奇跡だ。緑谷くんは事情聴取のために警察に連れていかれ、残された私たちも解散してすぐ自宅に帰った。
じわりと脅威が迫ってくるような、嫌な感覚がした。
10/10ページ