期末テスト
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試験が終わった次の日、教室には沈痛な面持ちの4人。条件達成が適わなかった三奈ちゃん、上鳴くん、切島くん、砂糖くんだ。
「皆……土産話っひぐ、楽しみに……うう、してるっ……がら!」
「だ、大丈夫だよ三奈ちゃん!多分、きっと!」
「まだわかんないよ。どんでん返しがあるかもしれないよ……!」
「緑谷それ口にしたらなくなるパターンだ……。」
緑谷くんと一緒に何とかフォローするけど4人の絶望顔はそのままだ。三奈ちゃん泣かないで。
「試験で赤点取ったら林間合宿行けずに補習地獄!そして俺らは実技クリアならず!これでまだわからんのなら貴様らの偏差値は猿以下だ‼」
「ひどい。」
「落ち着けよ長え。」
上鳴くんの目つぶしが緑谷くんを襲う。痛そう。
「わかんねえのは俺もさ。峰田のおかげでクリアはしたけど寝てただけだ。とにかく採点基準が明かされてない以上は……。」
「同情するならなんかもう色々くれ‼」
荒れてるなあ。瀬呂くんと峰田くんはミッドナイト先生と演習だった。さっき峰田くんに聞いたけど瀬呂くんはミッドナイト先生の眠り香にやられて制限時間の半分以上先生の膝枕で寝てたらしい。低反発枕のように包み込んでくれる感じだったんだそうだ。へー、ふーん。その話を聞いた時ちょっともやっとした。というか今もしてる。
「なまえ、なんか機嫌悪い?」
「全然。ミッドナイト先生のボディを堪能できて羨ましいなあ瀬呂くんって感じ。」
「ブフ、嘘じゃん。本人に言ってやればいいのに。」
「やだよ、めんどくさいと思われる。」
「可愛い言われるだけだと思うけど。」
響香によしよしと頭を撫でられた。モヤモヤを晴らすためにぎゅっと抱き着き心を静める。落ち着く匂い。
「予鈴が鳴ったら席につけ。」
勢いよく入ってきた消太くんに、教室内は一瞬で静まり返る。もはや特技。
「おはよう。今回の期末テストだが、残念ながら赤点が出た。したがって……林間合宿は全員行きます。」
『どんでんがえしだあ!!!』
教室内が沸き立つ。消太くんああ見えて盛り上げ上手だよね。とにかくみんなと一緒に合宿に行ける。嬉しい。
「筆記の方はゼロ。実技で切島・上鳴・芦戸・砂糖。あと瀬呂が赤点だ。」
「行っていいんスか俺らあ‼」
赤点には瀬呂くんも入ってた。どんでん返し無かったら彼とも一緒に合宿行けなかったのか。それは寂しい。
「確かにクリアしたら合格とは言ってなかったもんな……。」
「ドンマイだあ。」
落ち込んでしまった瀬呂くんの肩をポンと叩く。本人にはモヤモヤしてるの気づかれたくないから、あくまで普段通り。まあミッドナイト先生の個性じゃ男子はほぼ詰むだろうし、仕方ないことなんだけどね。
「今回の試験、我々敵側は生徒に勝ち筋を残しつつどう向き合うかを見るように動いた。出なければ課題云々の前に詰むやつばっかりだったろうからな。」
なるほどなあ。私たちも最初から13号先生に個性使用されてたら完全に負けてただろうし。何とかクリアできてよかった。
「本気で叩き潰すと仰っていたのは……。」
「追い込む為さ。そもそも林間合宿は強化合宿だ。赤点取った奴こそここで力をつけてもらわなきゃならん。合理的虚偽ってやつさ。」
「ゴーリテキキョギィィ―‼」
出た合理的虚偽。好きだなぁそれ。確かに実技で赤点取ったのに学校に残って授業っていうのもよくわかんないもんね。
「しかし!二度も虚偽を重ねられると信頼に揺らぎが生じるかと‼」
「わあ水差す飯田くん。」
正義感の塊みたいな飯田くんが消太くんに抗議する。まあ嘘は良くないもんね。なに信じていいかわかんなくなるし。
「確かにな。省みるよ。ただ全部嘘ってわけじゃない。赤点は赤点だ。お前らには別途に補習時間を設けてる。ぶっちゃけ学校に残っての補習よりキツイからな。」
はしゃいでいた赤点組の動きが止まる。完全に顔が青ざめてる。ドンマイみんな。
その後合宿のしおりが配られた。段々現実味を帯びてきてワクワクしてくる。夜の補習時間の日程を見て隣の瀬呂くんは撃沈していた。泣かないで。きっと寝る時間はあるよ。
放課後、みんなでしおりを見ながら結構大荷物になるなあという話になった。
「ウチ大きめのキャリーバッグ買わなきゃ。」
「私水着持ってないなあ。」
「オイラが選んでやるよ……!」
「結構です。」
峰田くんの危険な誘いをバッサリ断る。ろくな水着選ばなさそうだし。響香がドックンしてくれて事なきを得た。みんなそれぞれ持ってないものがあるようで、あれ買わなきゃと口々に話している。
「じゃあさ!明日休みだしテスト明けだしってことで、A組みんなで買い物行こうよ!」
透ちゃんの提案に胸が躍る。みんなで買い物。なんか高校生っぽい。最高だ。
「おお良い‼何気にそういうの初じゃね!?」
「私も嬉しい。」
「なまえと一緒に買い物行くの初めてだね。」
クラスのほとんどが賛同して、結局爆豪くんとお母さんのお見舞いのある焦凍くん以外は一緒に行くことになった。
「明日楽しみだね。」
響香と帰りながらみんなとの買い物に思いを馳せる。女の子の友達とウィンドウショッピングするの、実は憧れだった。
「ほんと。クラス単位で休日に買い物とか何気に仲いいよねウチら。」
「確かに。」
普通の学校より男女関係なく距離近めかもしれない。B組はどうなんだろう。この前の拳藤さんたち見ると仲良さそうだったけど。
「あ、そういえば響香さんにお伝えしなければならないことが。」
「え、なに。また怒りそうなこと?」
「ど、どうだろ……。」
そう言われると急に不安になってきたな。あれからちょくちょく個人チャットで計画を立てて、瀬呂くんとのデートの日取りが決まったのだ。でもなんとなく、気恥ずかしさから誰にも言ってない。本当は今も照れてる。
「実は瀬呂くんに、その。いわゆるデート?に誘われまして……。」
「は!?いつ。」
思った以上の勢い。腕をがっしりと掴まれ詰め寄られている。怖いです。
「勉強会の時……。」
「じゃなくて!デートいつ!」
「え、来週の土曜日?」
急に腕を離され、響香はよろよろと後ろに下がっていく。しばらくの無言の後、何かを閃いたようにスマホを手に取った。
「ウチだけじゃ駄目だ。」
「え。」
「みんな呼ぶ。いいね!?」
「あ、え?ちょ、」
ものの数秒でクラスの女子チャットに情報が流れてしまった。全員大盛り上がり阿鼻叫喚。みんなテンション上がりまくりで私だけ置いてけぼり状態だ。
「明日合宿の持ち物と一緒にデート用のあれこれも見とくよう頼むから。」
「ええ、いいよそんな。」
「よくない!一大事だから!」
結局押し切られてしまった。チャット内にその旨を流すと二つ返事でオッケー!の文字。みんな自分の買い物してよぉ。