期末テスト
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その後しばらくドキドキしていたけれど、本当に瀬呂くんが普段通りだったのでいつの間にか慣れた。というよりテストが始まって他のことを考える余裕がなくなっていった。多分彼もそうだろう。筆記試験中隣でずっと項垂れていた。一夜漬けした人の顔だ。寝てほしい。
全ての筆記試験が終わって今日は演習試験。どうなるんだろう。やっぱロボ演習なんだろうか。
「それじゃあ演習試験を始めていく。この試験でももちろん赤点はある。林間合宿行きたきゃみっともねえヘマはするなよ。」
筆記試験はとりあえずみんな赤点はないだろう。テスト終わった後上鳴くんと三奈ちゃんにめちゃくちゃお礼言われたし。だから赤点が出るとするなら恐らく今日。みんなと合宿行くために頑張らなくちゃ。それにしても。
「先生多いな……?」
響香の言葉通り、消太くんの他にずらりと並んだ先生たち。ひざしくんもいる。勢ぞろいって感じ。
「諸君なら事前に情報を仕入れて、何するか薄々わかってるとは思うが……。」
「入試みてえなロボ無双だろ‼」
「花火!カレー!肝試ー‼」
意味深な消太くん。三奈ちゃんと上鳴くんは余裕の様子ではしゃいでる。ロボじゃないかもと話していた障子くんと目が合い頷く。
「残念‼諸事情あって今回から内容を変更しちゃうのさ!」
消太くんの捕縛布から突然飛び出してきた校長先生。確かにそこ居心地よさそう。消太くんもまんざらでもない。森の仲間たちを連れた無精ひげの男。うーんシュールな絵面。
突然の内容変更にみんなから困惑の声が漏れる。先ほどまではしゃいでいたはずの2人は完全に動きが止まってしまった。菩薩顔再び。
どうやら職員会議の結果ロボとの戦闘訓練は実践的ではないと結論付けられたらしい。今後敵活性化が懸念される中で、より実践に近い対人戦闘・活動を重視することになったのだそうだ。何とも雄英らしい。
「というわけで……諸君らにはこれから二人一組、三人一組でここにいる教師一人と戦闘を行ってもらう。」
根津校長に代わって消太くんからの説明。いや、先生たちと戦闘って。プロと戦うってことだよね。対人の中でもかなりハードルが上がる。
「尚、ペアの組と対戦する教師はすでに決定済み。動きの傾向や成績、親密度……。諸々を踏まえて独断で組ませてもらったから発表していくぞ。」
みんなの顔が不安そうだ。かくいう私も不安。ものすごく。
まず発表されたのは焦凍くんと百ちゃん。成績優秀コンビは消太くんが相手だ。最近百ちゃん自信無くなってるみたいだから心配だけど。消太くんはそれがわかってて組んでるのかもしれない。頑張れ百ちゃん。個人的には消太くんと対戦じゃなくて心から良かったです。
その後も爆豪くん緑谷くんの幼馴染チームがオールマイトと対戦になったりとかなりきつい組み合わせが発表されていく。私はお茶子ちゃんと青山くんと一緒に13号先生と戦うことになった。上位互換すぎる。全然勝てる気がしなくてちょっと笑ってしまい消太くんに睨まれた。
制限時間は30分。試験の達成条件は各チームに配られたハンドカフスを先生にかけるか、チームのうち誰か一人がステージから脱出する事。全員一緒にゴールしなくてもいいみたいだ。
今回はより実践に近い状況での試験ということで、先生たちを敵そのものと考えて行動する。会敵したと仮定し、戦うか逃げるかを選ばなければいけない。チーム内での作戦が重要になってくるわけだ。
先生たちにはハンデが課され、体重の約半分の重量の重りを身に着けるのだそうだ。単純に動きは鈍くなるだろうし、戦闘を視野に入れるのも可能になってくるかもしれない。
私たちはUSJエリア。反対側の出口にゴールが見える。開始の合図が鳴るまで、作戦会議だ。
「13号先生、中央くらいにおるね。」
お茶子ちゃんの言う通り、13号先生はステージのちょうど真ん中くらいで待ち構えている。フォルム可愛いのに今はなんか怖いなあ。
「戦闘向きじゃない個性だから、一気に吸い込んで動きとめようってことなのかな。」
「初めからピンチ、万事休すさ☆」
「弱気アカン!」
不吉なことを言う青山くんにお茶子ちゃんがツッコミを入れる。でもどうしよう、風と無重力とレーザーかあ。
「ね、ちょっと思いついちゃったんだけど。お茶子ちゃん私たちのこと浮かせてくれない?」
「え?ええけど……。」
「で、青山くんにはこうしてもらって。」
「ナイスなアイディア。協力するさっ。」
3人で意見を出し合い作戦を調整していく。そろそろ時間だ。スピーカーからリカバリーガールさんの声が聞こえる。
『みんな位置に着いたね。それじゃあ今から雄英高校1年期末テストを始めるよ!レディィーー……ゴオ!!!』
合図とともにお茶子ちゃんと手を合わせる。3人とも無重力状態になったところで私はお茶子ちゃんを抱えて片手で一直線の風を放ち、青山くんは後ろ向きでネビルレーザーを噴出する。自分たちの重量がない分面白いくらい速く飛んだ。
「わあ!」
13号先生の目の前に一瞬で移動する。長期戦になると圧倒的にこちらが不利だ。お茶子ちゃんに一度個性解除してもらい地面に降り立つ。
「なまえちゃん、青山くん、今や!」
「了解☆」
「まかされた!」
13号先生が面食らってる間に3手に分かれる。私が左お茶子ちゃんが正面青山くんが右。急にばらけた私たちに先生は少しでも気が散るはず。そこを利用して。
「打つ!」
結構な威力で13号先生めがけて風を打つ。真面目に戦闘したら絶対威力じゃ勝てないけど、混乱してる今ならできる。私の放った風は見事に命中してくれ、13号先生は後ろ向きに倒れた。その隙にお茶子ちゃんは空中へ飛び、私と青山くんは普通にダッシュで突破。あとはゴールまで走るだけだ。
「楽勝だねっ。」
「油断アカンよ!」
「その通り。」
「ひ、」
目の前にカラフルなゴールの文字が見えてきたと思ったのに、いつの間にか後ろに13号先生。
「復活はやない!?」
「みょうじさん、ちょっと躊躇したでしょう。衝撃はあったけど普通に立ち上がれるくらいだったよ。」
「あ、そうかもしれないです!みんなごめん!」
まずったなあ。まだ対人での力の調節ができてないから、どうしても加減してしまう。何せ岩をも粉砕する力。人を粉々にはしたくない。
段々と後ろに体が引き寄せられる。13号先生が個性を使い始めた証拠だ。これはもしかしなくてもめちゃくちゃピンチ。
「ご、ごめぇん!」
「手すり!手すり掴まろ!」
「ウィ!」
3人でゴール脇の柵につかまる。風の勢いがすごすぎる。さすが個性ブラックホールの13号先生。上位互換どころの話じゃないぞ。
「ぬおおおあと少しだったのにィ‼」
「逃がさないぞー!」
「怖い!吸いながら近づいて来る!」
後ろからの吸い込みに耐えられず足がブラブラしてる。何とかかろうじて柵につかまっている状態だ。
「僕は戦闘は苦手だけど、捕り物には一家言あるんだ!」
あ、これ完全にチリにされちゃう。明るい口調で近づいて来る先生に恐怖を覚えた。
「フフ……吸引力の変わらない唯一つの個性……。」
「呑気!」
「言いたいだけやん!ピンチだよこれぇ!」
ダイソンしてる場合じゃないから!マイペースすぎる青山くんにお茶子ちゃんがキレてる。
「僕のコスチュームね。」
「へ!?」
「オヘソから伝導するんだよね。つまり……、」
青山くんの膝がキラキラと光り出す。伝導って体のどこからでもレーザー出せるのかな。便利だ。
「こんなのピンチでもなんでもないんだよねっ。」
「光も飲み込むぞ!」
青山くんの膝から後ろに放たれた渾身の一撃は一瞬でチリになった。
「分子レベルで崩壊するぞ!」
ついでに風で取れてしまった青山くんの目元を覆うサングラスみたいなのも分解された。ブラックホール脅威すぎる。本物の敵じゃなくてよかった。
「シャレにならない☆」
「何なん青山くん!?」
「僕は僕さっ。」
「貫く姿勢、イイネ!」
「なまえちゃん諦めに入っとらん!?」
いや、大丈夫。青山くんのMr.ポジティブが羨ましくはなってるけど。うーんどうしようか。次の一手。完全に私の風だと押し負けるし。結構これ本気で詰んでる。
「ねえ。」
「ちょっと待って今……」
同じく作戦を考えているであろうお茶子ちゃんに青山くんが声をかける。彼は何か思いついたのだろうか。この際なんでもいい。できることは試したい。
「青山くん何か作戦……」
「緑谷出久なら、って考えてたろ。」
「え。」
お茶子ちゃんに尋ねたのは全く作戦とかではなく。いまいち意図がわからない。今の状況わかってるのか。
「君、彼のこと好きなの?」
「え、そうなの?」
突然の恋バナに思わず興味が出て一緒に聞いてしまった。お茶子ちゃんの顔がみるみるうちに赤くなる。
「はあ!?」
「「「あっ。」」」
青山くんの鋭い指摘に思わず赤くなった顔を両手で抑えてしまったお茶子ちゃん。柵から手が離れた。当然吸い込まれていく体。まずいまずいまずい。
「へ!?」
「わ!?」
後ろで待ち構えていた13号先生もお茶子ちゃんを吸い込みそうになって思わず個性を解除してしまう。生徒チリにするわけにはいかないもんね。
「今だ!」
その隙をついて風を一直線に放ち13号先生の体を倒す。青山くんもすぐに反応してくれ先生が立ち上がれないよう足を抑えてくれた。最後にお茶子ちゃんがガンヘッドさん譲りの体術を使いカフスをかける。
「敵のフィールドでなく己のフィールドで戦うべし。」
「か、かっこいい……!」
「チームプレーさ☆」
急なピンチだったにもかかわらず完璧な身のこなしで13号先生を捕らえたお茶子ちゃんに拍手を送る。3人で拳をぶつけ合い、条件達成のアナウンスを聞いた。
『麗日・青山・みょうじチーム、条件達成‼』
演習からの帰り、改めて青山くんが「で、彼のこと好きなの?」と聞いたけど、お茶子ちゃんが顔を赤くさせながら「チャウワ!チャウワ!」と浮かび始めてしまったのでそっとしておくことにした。