期末テスト
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時が流れ6月最終週。期末テストまで残すところ一週間を切っている。
「全く勉強してね―――‼」
焦り顔の上鳴くんが頭を抱え、その横の三奈ちゃんが諦めの菩薩顔をしている。成績ワースト1位を争う2人だ。
「中間はまー入学したてで範囲狭いし特に苦労なかったんだけどなー……。行事が重なったのもあるけどやっぱ、期末は中間と違って……」
「演習試験もあるのが辛えとこだよな。」
肩肘ついて足を組んでる、余裕の表情の峰田くん。彼は意外にも中間成績21人中10位なのである。人は見かけによらない。
「あんたは同族だと思ってた!」
「おまえみたいな奴はバカではじめて愛嬌出るんだろが……!どこに需要あんだよ……‼」
「世界かな。」
散々な言われようだなあ。本人気にしてなさそうだからいいけど。上鳴くんも三奈ちゃんも完全に絶望ムードだ。
「芦戸さん上鳴くん!が、頑張ろうよ!やっぱ全員で林間合宿行きたいもん!ね!」
「うむ!」
「普通に授業うけてりゃ赤点は出ねえだろ。」
「言葉には気をつけろ!!」
3人の天然が上鳴くんを襲う。主に焦凍くん。励ましているように見えて緑谷くんも飯田くんも中間5位以内に入ってる。勉強できる組の言葉はナイフより鋭い。
「お二人とも、座学なら私、お力添えできるかもしれません。」
「ヤオモモ――‼」
まさに蜘蛛の糸。中間堂々1位の百ちゃんがいれば百人力だ。2人が縋りついてる。
「演習の方はからっきしでしょうけど……。」
珍しく自嘲気味に笑う百ちゃん。最近ちょっと元気ないよなあ。背中が悲哀に満ちていていてもたってもいられなくなり、少し緊張しながらも後ろからぎゅっと抱き着いた。
「百ちゃん、一緒に勉強していい?その時に演習の作戦も立てよ?」
「まあ、なまえさん……!もちろんですわ!」
百ちゃんからもぎゅっと抱きしめられる。こちらへどうぞ!と膝を差し出されたので大人しくその膝に座ることにした。後ろから腕を回されて密着状態だ。いい匂いがする。
「お二人じゃないけど……ウチもいいかな?2次関数ちょっと応用つまづいちゃってて……。」
「え。」
「数学難しいよね。」
「わりィ俺も!八百万古文わかる?」
「え。」
「百ちゃん大人気だねえ。」
俺も私もとみんなが百ちゃんの机に集まってくる。良いデストモ‼と万歳して喜んでる姿を背中に感じながら私も一緒に万歳した。感激してる百ちゃん可愛い。ちょっと元気を取り戻したみたいで良かった。
「では週末にでも私の家でお勉強階催しましょう!」
「え、こんなにいっぱいで行って大丈夫?」
私、瀬呂くん、響香、三奈ちゃん、上鳴くん、尾白くん。全部で6人。一戸建てだとしてもかなり大人数だ。さすがに迷惑がかかる。
「ええ、心配いりませんわ。まずお母様に報告して講堂を開けていただかないと……!」
『講堂!?』
「皆さんお紅茶はどこかご贔屓ありまして!?我が家はいつもハロッズかウェッジウッドなのでご希望がありましたら用意しますわ!」
『あ!?』
なんか全然心配いらなかったみたい。講堂って何?どんなおうち?
「あの、百ちゃん。私チョコの香りのする茶葉が好きなんだけど、お願いしてもいいかな。」
「もちろんですとも!」
私の我儘なお願いにもすぐに手配しておきますわ!とぷりぷり喜んでくれる百ちゃん。おうちに行けるなんて一気に仲良くなれた感じがして嬉しい。
「必ずお力になって見せますわ……!」
こんなに張り切っているところを見るのは初めてだ。ぷりぷりプリティ百ちゃんを、私含め全員が微笑ましい顔で見守っていた。
「そういやみょうじは中間何位だったんだっけ?」
「ん?2位だよ。」
ぴしりと固まる上鳴くん。質問に答えただけなんだけど。どうしたんだろうと思っていると急に両肩を掴まれる。
「みょうじさんも俺たちを助けてください‼」
「え?う、うん。私にできることなら。」
三奈ちゃんも一緒に深々と頭を下げられた。というかなんか祀られてる。1位様2位様の座られるお席、まさに神座というわけのわからない文言と共に。宗教じみててちょっと怖い。
「ウチのクラスの1位2位揃ってんなら楽勝っしょ!」
「勝ち確!」
わーいわーいと手を取り合ってる上鳴くんと三奈ちゃん。ちゃんと自分でも勉強しなさいよと瀬呂くんにツッコまれている。こんなに喜んでもらえるならもっと早めに言い出せばよかったなあ。
そういえば私、焦凍くん以外の友達の家に行くの初めてだ。お茶子ちゃんや障子くんとは一人暮らし談義をよくするけど、実際家には行ったことがない。どうしよう。何着てこう。
なんだか楽しくなってまた百ちゃんにぎゅーっと抱き着いた。