入試
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ひざしくんの説明を聞き終え割りふられた演習会場へと向かう。相変わらずテンション高かったなあ。おかげでちょっと緊張とれたかも。
仮想敵が相手だしそれほど難関だとは思わないけれど何が起きるかわからないのが雄英入試だ。
その予感は的中で、スタートの合図もなく試験が開始された。
一斉に駆けだした大勢の人たちに埋もれないようすぐに空中に浮かぶ。空気を階段のようにして全体が見渡せる高さまで移動し、とりあえず敵の配置を確認した。なるほど、あれがギミックってやつか。
位置が分かれば簡単なので、とりあえず近くのビルに着地する。風圧を利用しながらビルを移動し、狙いを定めていく。圧縮した空気を飛ばして軽く3体。順調だ。
ずっと空中を移動できれば楽なのだけれど、個性の使いすぎで体調に問題が出るためそういうわけにもいかない。何があるかわからないし小出しに使っていかないと。
あれ、何か向こう騒がしい。方向的に0ポイント敵がいるところだ。土煙がかなり上がっている。
少し近くに行ってみると、予想通りの巨体が暴れまわっていた。え、あれビル倒壊しない?
下を確認すると結構人がいる。これは危ない。迷ってる暇もなく飛び出していた。
同じように動いた人が何人かいたようで、テープらしきものが別の方向から飛んでくるのが見えた。瓦礫が落ちないよういくつも固定してくれている。器用だ。
「間に合わねえ!」
焦った声が響く。見るとテープが捕らえ損ねた瓦礫が今にも落ちそうだった。下には、人。
風力を上げてなるべく安全にその瓦礫を吹き飛ばす。幸いコントロールがぶれずに下にいた紫色の髪の人は無事だった。仮想敵から離れていくのが見えたためもう大丈夫だろう。
「助かった!サンキューな!」
「こちらこそ!」
試験中のためそれ以上は交わさず別れる。このギミック、やっぱり厄介だな。人がいないのを確認して上から風圧をかける。巨体はすぐに地面へと沈み動かなくなった。ポイントにはならないけど動き封じとくに越したことはない。危ないし。
その後も何体か仮想敵を倒し、結構あっけなく試験は終わった。ちょっと疲れたなあ。頭がクラクラする。帰る準備をしているとさっきの紫色の髪の毛の人に声をかけられた。
「あの、さっきありがとう。」
「いやいや、大したことしてないよ。無事でよかった。」
「……じゃあ、それだけだから。」
また会えるといいねと言う前に彼はさっさと行ってしまった。クールだ。
一応怪我してないかの確認もしたかったんだけど。まあリカバリーガールさんのところに行く様子もなかったし、大丈夫かな。
「あ、さっきはどうも。」
今度は背の高い男の子に挨拶された。誰だろう。
「0ポイント敵の時の、わかる?」
「あっ、テープの人?」
「そそ。」
あの時は別の建物から声だけ聞こえて姿が見えなかった。どうやら彼からは私が確認できていたらしい。
「俺一人じゃやばかったから、かなり助かった。」
「私も一人じゃ無理だったよ。ありがとう。」
背高いなあ。羨ましい。雰囲気は飄々としていて爽やかで、やっぱり雄英受験するだけあってヒーローっぽい。
「試験どうだった?」
「うーん、まずまずかなあ。そちらは?」
「俺もまあまあってとこです。今日よりも筆記が心配なんだよなあ。」
「ふふ、雄英偏差値高いもんね。」
「ヒーローになる壁は高いってことかね。」
深いため息を吐いて項垂れる彼に思わず笑みが零れる。この人、話しやすい。
「春に、会えるといいね。」
「ほんとに。会えるよう祈っといて。」
「ふふ、たくさんお祈りしとく。」
校門を出ると、まさかの帰る方向が真反対だったためまたねと言って別れた。結構話してた気がするけど名前聞きそびれちゃったな。
また会えるだろうか。会えるといいな。
まだ見ぬ高校生活に思いを馳せた。
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