職場体験
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体育祭が明けて、今日は学校。朝から雨だ。個性の影響なのかわからないけど、気圧が下がると頭重くなるんだよなあ。結構降ってるし替えの靴下とタオル持っていこう。
家を出てちょっと歩くと、道路の脇でランドセルを背負った女の子が座り込んでいる。傘が横に転がってしまっていて、服は少し濡れていた。
「何かお困りですか?」
警戒されないようなるべく優しく声をかける。見ると女の子は泥で服を汚し目に涙をためていた。
「うぇ……。」
「こけちゃった?もう大丈夫だよ。」
同じ目線になるように座り、これ以上濡れないように傘を傾ける。タオル持って来ててよかった。さっと泥を掃い、ハンカチで水気も拭いた。
「どこも痛いところはないかな?」
「……うん。ありがとう。」
女の子の涙は少しずつ止まり、安心したのか元気が出てきたようだった。
「この傘可愛いね。」
拾っておいた女の子の傘を渡す。薄い青色の綺麗な傘だ。女の子はそれを受け取り、窺うように私の顔を見た。
「うん!あの、お姉ちゃん体育祭の人?」
「え?あ、うん。そうだよ。見てくれたの?」
「見てたよ!すっごくかっこよくて、私も、お姉ちゃんみたいなヒーローになりたいの!」
「!」
ほらこれも!と傘を見せてくれる。もしかしてこの青、私の髪の色……?
「ずっと応援してるよ!」
「……ありがとう。私も、頑張る!」
バイバイと嬉しそうに手を振って行く名前も知らない女の子。なんだかとてつもない勇気をもらった。改めて自分と向き合わなくちゃ。踏みしめる足に力がこもった。
結局足元はびしょびしょになってしまった。多めにタオル持って来ててよかった。自分の席で足をふいて靴下を新しいものに替える。
「なまえちゃんおはよー!」
「あ、おはよう透ちゃん。雨大丈夫だった?」
「ちょっと濡れた!けどそれよりも電車での視線がすごかった!」
「視線?」
「あー、体育祭のだろ。俺なんか小学生にいきなりドンマイコールされたぜ。」
「ド、ドンマイ。」
隣の瀬呂くんが項垂れる。どうやらみんなも反響があったらしい。体育祭ってすごい。さっきの女の子も、私のことを知ってくれていた。身が引き締まる思いだ。
みんなでわいわいやっていると後から教室に入ってきた焦凍くんが、自分の席に着く前に私のところへやってきた。
「なまえ、おはよう。」
「お、おはよう焦凍くん……。」
少し微笑んで何事もなかったかのように席につく焦凍くん。しかもちょっと満足げだ。とりあえず後ろの空気がヤバイ。
「ちょっとした知り合いって言ってませんでしたみょうじさん?」
「敬語やめて怖い。」
肩に置かれた見えない手が恐ろしい。待って待って私も処理追いついてないから。
「何あれ!?付き合い始めた!?」
「らぶな話じゃん!」
「ち、ちがうから!ほんとに!」
恋バナ大好きコンビがかつてなく盛り上がる。渦中の本人は何食わぬ顔で座ってるけど。助けて。ちらりと隣を見ると瀬呂くんが複雑そうな顔をしていた。
「体育祭前と全然違くない?」
「なにがあったのさー!」
「いや、ほんとに色々あって和解しただけです。元は仲良かったから。10年越しの友情。」
「ええ~らぶでなく?」
「らぶでなく。」
2人はなかなか納得してくれなかったけど、消太くんが教室に入ってきたので強制終了となった。
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