体育祭
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『カァウゥンタァ~~!!!』
観客席に戻ってきた。次の試合が盛り上がっているらしく、ひざしくんのテンションも上がっている。
「どんな感じ?」
「お、お疲れ。」
「切島さんと爆豪さんのぶつかり合いですわ。」
「すごそう。」
響香の隣を陣取り、肩にもたれかかる。
「ん、もう大丈夫なの。」
「んー、まあとりあえず大丈夫になった。ごめんね。」
「いーけど。……何かあったら言って。」
「そうさせていただきます。」
何も聞いて来ない響香の隣は居心地がいい。爆豪くんたちの死闘をぼんやり眺めながら体力の回復を待った。
「これ食べときなさいよ。」
「瀬呂くん。」
上から渡されたのはいつぞやと同じオレンジ味の飴。
「ありがとう。糖分助かる~。」
「みょうじがそんなんなってんの珍しいね。」
「んー、心境の変化です。」
「なるほど?」
そんなんなってるというのは頭を響香に預けている今の状態のことだろう。確かに私はあんまり同性にもボディタッチをしない。というかできない。中学まで特定の仲いい人がいなかったからかうまく踏み出せないのだ。いまいち人との距離がわからない。でもそれも何か、今なら、響香にならできる気がした。響香は特に気にする様子もなく頭を撫でてくれている。嬉しい。
「死ねえ!!!」
ヒーローらしからぬ爆豪くんの一発で、勝負がついた。
「あー、やっぱりかあ。」
「死ぬほど心配なんだけど。」
「あは、私も。」
「悪人面にガツンとやっちゃって来い。」
「応援しとるよ!」
「ありがと~。」
爆豪くんに味方はいないのか。とりあえず次の相手は決まった。控室に行かなきゃ。
うーん緊張する。相手が爆豪くんなだけに全然対策浮かばない。絶対彼と近接したくないんだよなあ。まあ弱いところをついて来るのが彼の特徴だからそんなこと言ってられないけど。とりあえず燃やされたくないから髪結んどこうかな。
「よし。」
頬を叩いて気合を入れる。結局何も思いつかないまま会場へと向かった。
『爆豪対みょうじ!仕方ねえとはいえまた偏りそうになる組み合わせだぜ‼』
初めて相対する彼の目は想像以上に威圧感がある。お茶子ちゃん怯まなかったのすごい。
「シケたツラやめたんか。」
「ちょっと、まだ考え中です。」
「余計なことごちゃごちゃ考えてっと足元掬われんぞモブ。」
「心痛い。」
心配してくれてるのかそうじゃないのかわからない。普通に煽られただけかもしれない。
『そんじゃレディイイSTART‼』
絶対に距離を詰められたくないので急いで上に上がろうとする。けど。
「てめえと遠距離なんざ誰がするかよ。」
「いっ……!」
もういる。爆破と同時に尋常じゃない速さで近づいてきた爆豪くんが私のポニーテールを掴む。しまった、結ばなきゃよかった。
「おらァ!!!」
「うあ!」
至近距離で動きを封じられたまま顔面爆破される。痛った!それでも爆破のタイミングで彼との間に空気をはさんだので若干威力が弱まる。爆豪くんも衝撃で少し後ろに下がった。
『爆豪今回も正面から爆破ァーー!!!だがみょうじも怯むことなく空中に逃げるぜ‼頼むぜ!爆豪にぎゃふんと言わせたれ!!!』
そ、そうしたいけど!爆豪くんが後ろに下がった隙に自分の体を風で押し上げる。空気の塊で足場を作りながら彼の様子を窺おうとちらりと下を見る。
「ばァか!俺には効かねんだわ‼」
「ひぃ!」
爆破を両手で交互に繰り返しながら追いかけてくる爆豪くん。いや怖いってぇ!二回戦までみたいに空に逃げることはもう有利条件じゃなくなってしまった。
「おらここまで来たぞ‼」
爆豪くんが空中でこちらに向かって腕を構える。こっわ。でも大丈夫だ。騎馬戦の時みたいに同時に向かい風を起こして迎撃する。
はずなのに。にやりと笑った悪人面。
「あ、れ!?」
「この俺が同じ手に乗るわきゃねえだろが!」
爆破は起こらず私は虚空に向かって風を放っていた。いつの間にか爆豪くんが消えてる。
「おらァ‼」
「ぐっ……!?」
『爆豪最初の爆破はフェイク!寸止めでみょうじの頭上に回り思いっきり爆破ァーー‼みょうじたまらず落下――!!!相変わらず容赦ねェーー!!!』
やられた。才能マンの彼に2回目なんて通用するはずなかった。突然のことで体が追いつかず、個性なしで思い切り地面に叩きつけられる。
「い、……っあ!」
めちゃくちゃ痛い。体折れたりはしてないと思うけど。というか早く逃げなきゃ。上からすかさず追撃に来る彼が見えた。
「負、けない!」
重たい体を必死で起こして下りてくる彼におもいっきり下から風を送る。お願い、もうこのまま場外へ飛んでって。
「!……クソが。」
けれどこんな大雑把な攻撃が彼に効くわけもなく。驚きの体幹と両腕の爆破であっさりバランスをとられ体勢を立て直されてしまった。やばい爆豪くん下りてくる。
タイミングを計って彼の着地と同時に私は再び上空へと逃げる。さっきよりも素早く高く。もうこうなったらさっきの作戦に賭けてみるしかない。
「あ"あ!?」
爆豪くんが追いかけてこないようにすぐに最大威力の風圧を下に向かって下ろす。常闇くんの試合と同じ技だ。個性かなり使ってるし体ぼろぼろだけど、もう限界までこうするしかない。さっきより周りを気にする余裕がないから会場に嵐が来たみたいになってるけど許してほしい。爆豪くん防がないでお願い。
『みょうじ、常闇戦と同じ作戦に出たあ――!?まだそんな動けんのかよ!!?っつーかもう怖えから爆豪動かねえでほしー‼』
嘘でしょ。今私最大くらいの威力でやってるんだけど。爆豪くん、全然倒れてくれない。足で踏ん張ってはいるけど。ほんとどうなってるの。
「っ!」
あー、口の中血の味してきた。鼻血出てる気がする。このまま続くと私もキャパオーバーだ。
「クソめんどくせェ……!こんなモン、俺には効かねンだよ……‼」
「えっ。」
嘘嘘嘘。だってこの風圧で腕上げられるわけない。何で。爆豪くんの両腕はまっすぐ上空の私の方に向けられていて。
「っ死ねやァー‼」
「は、」
お茶子ちゃんの時みたいな大爆破。私の最大威力の風圧と爆豪くんの最大火力。これがぶつかって耐えられるわけなかった。会場中が吹き飛ぶんじゃないかと思うほどの衝撃。
『ビ、ビッグバンーー!!?おいおいほんとどうなってんだイレイザー‼っつーか、みょうじどこ行った!!?』
それからちょっと、記憶がない。目が覚めたあとに聞いたのは客席まで吹き飛んだという情けない結末だった。
「みょうじさん場外!爆豪くん決勝戦進出!」