体育祭
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ステージ大崩壊のためしばらく補修タイムだと響香から連絡が来た。助かった。顔を冷やす時間がある。
手洗い場でタオルを濡らして顔に当てる。気持ちいい。
現状、なりたいヒーロー像もないし、目標も決まってない。父に支配されていたかもしれないことをやっと自覚した。焦凍くんとの関係はそのままだ。問題しかない。
それでも、私は何故か憑き物が落ちたかのような気持ちだった。この個性は、自分のものだ。それでいいんだ。父をなぞらなくてもいいんだ。プロヒーローの娘としてじゃなく、私の思うまま行動していいんだ。私は私のまま、戦っていいんだ。周りの目なんて気にせず。俄然やる気が出てきた。
大分目の腫れ引いたかな。これならばれないだろう。時間的に客席戻るより控室に行った方がいいか。
響香には申し訳ないけど客席には出番が終わるまで戻らないと連絡した。彼女は何があったのかを聞くでもなく、大丈夫なの?とただ心配してくれた。本当に優しい。
控室の椅子に座りながら、次の作戦を考える。常闇くんとダークシャドウくん。厄介だ。そもそも彼とは個性の質が似ている。どうしたものか。彼になくて私にあるもの。何だ……?
『さ――――次の試合も見どころ満載だぜ‼常闇対みょうじ‼気張ってけよー‼』
ひざしくんの声が響く。さっきまで味方だった常闇くんと向き合い、深く息を吐いた。泣いたせいか頭ははっきりしている。視界もクリアだ。
「騎馬戦では見事だった。だが個人戦になった以上容赦はしない。」
「もちろん。こっちも本気だよ。」
そこそこじゃなく。とりあえずスカウトがほしいじゃなく。全力でやるんだ。
『START‼』
合図とともに距離を詰める。懐に入って風で飛ばそうとするけど、やっぱりダークシャドウくんに阻止される。
「作戦は同じというわけか。ダークシャドウ、みょうじを場外へ押し出せ。」
「アイヨ!」
ダークシャドウくんが勢いよくこっちに飛んできたためいったん後ろへと距離をとる。同じ中距離遠距離個性同士、そう簡単には捕まらない。
『お――っと両者一進一退‼似た者同士勝敗つきにくいかあ!!?』
お互い距離を計ってる。先に動いたのは常闇くんだ。
「ダークシャドウ、みょうじの腕を捉えて押し出せ。力技でいい。」
黒い影が伸びてくる。個性を相手に使わせたくないのは相手も同じだ。それでも。
「っ何!」
常闇くんになくて私にあるもの。
「常闇くん。私、飛べるよ。」
空気で階段を作り、ダークシャドウくんが届かなくなるまで上がっていく。なるべく太陽の方向に向かって。
「フミカゲゴメエン!」
「やはり上に逃げられたか。しかし触れられなければ負けもない。どうするつもりだ。」
三奈ちゃんの時は、場外に出すつもりだったから風力を調整してた。でも今は少しでも隙をあげるとこっちが負ける。だから。
『おあ――‼下にいる常闇に向かってすげー風起こしてんぞ!!?っつーか観客大丈夫かあ!!?』
なるべく会場に迷惑をかけないように、ステージ内に留めながら最大威力の風圧で彼を抑える。それでもかなり被害出てるかも。ハンカチとか色々飛んでるのが見える。
「ぐっ、動きを封じるつもりか……!」
「ダークシャドウくんも一緒にね!」
風に耐えきれなくなり常闇くんが地面に倒れる。でもこれだと動き封じただけだ。ごめんねちょっと痛いよ。
「くっ……!」
「フミカゲェイタイ!」
地面に沈みこませんばかりに力を足していく。あーちょっとくらくらするかも。案の定2人の体が床にめり込む。ダークシャドウくんも泣いちゃってるし、良心が痛い。
「ぐっ……、あ……ま、いった……!」
「常闇くん行動不能!みょうじさん三回戦進出!」
よっし!すぐに個性解除して下に降りる。三回戦までに体力戻さないと。個性使いすぎた。
「ごめん2人とも!平気?」
「ああ……。みょうじが力技で押してくるとは思わなかった。俺の想定不足だ。」
「あは、常闇くん相手だったから力技でいくしかないと思って。」
「強かった。完敗だ。」
2人で握手をして会場を後にした。ひざしくんにはA組ステージ壊すの趣味なの?と言われた。ごめんて。