体育祭
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「帰りましたあ~。」
「お疲れ。今切島とB組の鉄哲が殴り合ってんよ。」
「すごかったなあ、みょうじ。」
「アンタは瞬殺だったけどね。」
「言わないで!」
上鳴くんが半泣きだった。会場を見ると瀬呂くんの言葉通り、本当に殴り合っている。比喩じゃないのか。
よっこいせと響香の隣に座る。席順が色々変化しており、今私は端っこだ。
結局切島くんたちは2人ともダウンし引き分けとなった。回復後に簡単な勝負で勝敗を決めるらしい。
「次ある意味最も不穏な組ね。」
梅雨ちゃんの言葉に頷く。
「ウチなんか見たくないなー。」
「私もちょっと見るの怖い。」
次勝てたらどっちとも当たる可能性あるから見なきゃなんだけど。
『中学からちょっとした有名人‼堅気の顔じゃねえヒーロー科爆豪勝己‼対俺こっち応援したい‼ヒーロー科麗日お茶子!』
思いっきり偏った実況。贔屓もいいとこだ。でも多分会場は同じ気持ち。
スタートの合図と同時にお茶子ちゃんが突進していく。
「麗日勇気あんなあ。かっちゃんに突っ込んでくなんて。」
「触らなきゃ浮かせられないもんね。爆豪くんも距離詰められたくないだろうし、そこを逆手に取ったのかなあ。」
「え、まさかの攻撃待ちってこと?」
「うん。なんでかはわかんないけど……ってうわ!」
爆豪くんの爆破がお茶子ちゃんにクリーンヒットした。クラス席もドン引きだ。
「よ、容赦ねえ~。」
「でもお茶子ちゃんも諦めてないわ。」
梅雨ちゃんの言葉に目を凝らしてみると、お茶子ちゃんは煙幕で隙をついて爆豪くんの背後をとっていた。すごい。
『上着を浮かせて這わせたのかあ。よー咄嗟に出来たな!』
お茶子ちゃん本気だ。爆豪くん相手に全然怯んでない。ここで一気に浮かせられれば勝機はある。けれどそんな希望は即座に反応して後ろに向かって爆破を放った爆豪くんに打ち砕かれる。うーん強い。
「見てから動いてる……!?」
「あの反応速度なら煙幕はもう関係ねえな。」
「触れられさえすれば形勢逆転もできるのに。」
相手の動きに瞬時に反応して対応していく爆豪くん。その並外れた反射神経が、お茶子ちゃんを追い詰めていく。
『麗日間髪入れず再突進‼』
「おっせえ!」
諦めず向かってくるお茶子ちゃんを、爆豪くんは再び爆破する。何度も、何度も。どれだけ爆破で倒されようとも、お茶子ちゃんは突撃をやめない。チャンスを窺ってるのか、何かの作戦なのか。
「なァ止めなくていいのか?だいぶクソだぞ……。」
敵顔の爆破マンが女の子をぼろぼろにしていく様子はかなり衝撃的なもので、会場からブーイングが起こり始める。
「おい‼それでもヒーローかよ!そんだけ実力差あるなら早く場外にでも放り出せよ‼」
「女の子いたぶって遊んでんじゃねーよ‼」
「そーだそーだ‼」
心無い言葉にちょっとむっとしてしまう。
いたぶって遊んでる。そうだろうか?俺が1位になるなんて宣言しておいて、彼が遊びで試合をするなんて考えられない。お茶子ちゃんだってラッキーでここまで来たわけじゃない。あの爆豪くんに果敢に挑み続けてる。そんな彼女を見て、彼が本気で相手にしないわけがない。
『今遊んでるっつったのプロか?何年目だ?シラフで言ってんならもう見る意味ねえから帰れ。帰って転職サイトでも見てろ。』
わあ、消太くん怒ってる。ひざしくんも戸惑ってるよ。
『ここまで上がってきた相手の力を認めてるから警戒してんだろう。本気で勝とうとしてるからこそ手加減も油断も出来ねえんだろが。』
お茶子ちゃんの目は、決して諦めている人の目じゃなかった。いたぶって遊んでるなんて2人に失礼だ。
「相澤先生、珍しく感情的だな。」
「怒ってるねえ。」
周りも驚いてる。可愛い教え子が悪く言われて腹立ったのかなあ。ふと頭上を見ると、なるほど。お茶子ちゃんが突撃をやめなかったのはこのためか。
「ありがとう爆豪くん……油断してくれなくて。」
「あ……?」
空から爆豪くんに向かって大量の瓦礫が落とされる。
「勝ああああつ‼」
お茶子ちゃんは爆豪くんの視野を狭めたかったんだ。何度も突進を繰り返して自分に警戒を向け、空中に瓦礫をためておくのを悟らせなかった。すごい。彼女もとんでもなくクレバーだ。
『流星群ー!!!』
ひざしくんの言葉通り降り注ぐ瓦礫。これだけの量だ。爆豪くんも防ぎきれないだろう。この機を逃さないように、お茶子ちゃんが突っ込んでいく。
ボオオン!!!
「う、わ。」
「マジかよ。」
あれほどあった瓦礫を一瞬で爆破してしまった。嘘でしょ。こんなの規格外だ。でもこれが、爆豪くんの本気。
「うう……。」
「いいぜこっから本番だ、麗日‼」
爆豪くん名前呼んだ。闘争心に火がついたのかな。
「……あ。」
2人が正面から衝突しようとしたその時、お茶子ちゃんの体が傾いた。
「キャパオーバー……。」
お茶子ちゃんの顔は全然諦めてなくて、まだ戦いたいという意思が感じられた。それでも動くことができない。
「麗日さん行動不能。二回戦進出爆豪くん!」
ミッドナイト先生の声が非情に響いた。