体育祭
設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「上を行くものには更なる受難を。雄英に在籍する以上何度でも聞かされるよ。これぞPlus Ultra!予選通過1位の緑谷出久くん‼持ちポイント1000万‼」
緑谷くん、頑張れ……!思わず応援してしまう。だって1000万。プレッシャー半端ない。緑谷くん冷や汗すごいし。1位じゃなくてよかったとか思ってしまった。
騎馬戦の制限時間は15分。振り当てられたポイントの合計が騎馬のポイントとなる。騎手はポイント数が表示されたハチマキを装着。試合終了までにハチマキを奪い合い保持ポイントを競う。ハチマキはマジックテープ式になっており、首から上に巻かなくてはいけないようだ。
ハチマキをとられても騎馬が崩れてもアウトにはならない。最後の最後まで全員でハチマキを奪い合うわけだ。
うーんどうしよう。焦凍くんとは一緒に組めるわけないし私の個性的に爆破の邪魔しちゃうかもだから爆豪くんも無理だろうなあ。上で戦うのはかなりリスキーだからなるべく騎手はやりたくない。
よし、やっぱり勝負に出るしかないかな。
「緑谷くん。」
「え!?あ、みょうじさん!?」
「一緒に組んでもらえないかな。」
「なまえちゃんも来たあ~!」
「え、でも、みょうじさんは僕でいいの?」
「緑谷くんがいいから来たんだよ。」
周りの申し出を丁寧に断ってまっすぐ緑谷くんのところへ。リスキーだけど逃げきれば確実に1位。他のチームは相性的にも難しいし、賭けてみるしかない。
その後発目さんが加わりさらに常闇くんも仲間になった。ナイス人選。発目さんのポテンシャルはわからないけど、サポートアイテムまで手に入ったのは心強い。バランス良い面子だ。
『さあ上げてけ鬨の声‼血で血を洗う雄英の合戦が今‼狼煙を上げる‼‼』
チーム組みが終わりひざしくんの声が再び会場に響く。
「麗日さん‼」
「っはい‼」
「みょうじさん‼」
「はい!」
「発目さん‼」
「フフフ‼」
「常闇くん‼」
「ああ……。」
「よろしく!!!」
騎馬戦がついに始まった。緑谷くんの呼びかけに気合が入る。
スタートと同時に2つの騎馬がこちらに向かってきた。透ちゃんとB組の、確か鉄哲くん。私たちはポイントを稼ぐというより、逃げ切ることに集中する。
「追われし者の宿命……。選択しろ緑谷!」
宿命と書いてさだめと読むやつ。段々常闇くんのキャラがわかってきたぞ。
逃げの一手でその場から離れようとしたけど、何故か地面に足を取られ動きを封じられる。
「沈んでる!B組の人の個性!?」
「そうみたいだ!みょうじさん麗日さん発目さん‼顔避けて‼」
緑谷くんが装着しておいたボタンを押す。発目さんが言っていたベイビー、サポートアイテムだ。
「飛んだ!?サポート科のか!追ええ‼」
「そうはいかない!」
ベイビーの高さを補助するために下に向かって風を起こす。どろどろになっていた地面から何とか抜け出し空中へと上がった。ついでに鉄哲くんチームが風圧で転んでくれた。ごめんよ。
「耳郎ちゃん‼」
「わってる。」
死角から響香のイヤホンジャック。あれにドックンされるのは遠慮願いたい。けどやば、ちょっと間に合わないかも。
焦った瞬間左隣りから伸びた影。私が捉え損ねた響香の耳をはねのける。
「ありがとう、ダークシャドウくん!」
「アイヨ、マカセロ!」
頼りになる~!惚れちゃいそうだ。
「すごいよ‼遠距離攻撃、しかも防御にも回れるみょうじさん、そして全方位中距離防御を備えた常闇くんとダークシャドウ‼これならいける!」
「選んだのはお前だ。」
「言ってくれたらいくらでもお役に立つからね。」
「着地するよ!」
お茶子ちゃんの掛け声と共に体の向きを変える。彼女が身に着けているのも発目さんの発明品。おかげでゆっくりと地面に足をつけることができる。
「どうですかベイビーたちは‼可愛いでしょう!?可愛いはつくれるんですよ‼」
思わずキャンメイク東京の文字が浮かぶ。面白いな発目さん。お茶子ちゃんが私たちを浮かせてくれてるから重量はほとんどない。そこに私の風もプラスして機動力はばっちりだ。
「お茶子ちゃん、ほんと助かる。ありがとう。」
「うう、労ってくれるなまえちゃん天使……!」
フィールドではすでにハチマキが入り乱れてるようだ。危険しかない。
『各所でハチマキ奪い合い‼1000万を狙わず2位~4位狙いってのも悪くねえ‼って4位は1000万のとこの騎馬かよ!?こいつぁ狙うほかねえー!!!』
余計なことを言うなー!みんなの目がさらに険しくなってる!怖い!
「奪い合い……?違うぜこれは一方的な略奪よお‼」
障子くんが突っ込んでくる。え、1人だ。というか今峰田くんの声しなかった?
「もう1回上行く!?このままだと取られる!」
「何!?取れへん!」
空中に上がろうとしたけどお茶子ちゃんの歩みが止まる。何かが発目さんのベイビーにくっついて離れなくなってるようだ。この丸いの、見覚えがある。
「……やっぱり峰田くん!」
障子くんの腕の中から顔を覗かせた。小さい体を利用して隠れながら攻撃してたのか。
「わ!」
今度は何!?障子くんの中から細長いものが飛び出してきた。咄嗟に後ろに避ける。
「さすがね緑谷ちゃん……!」
「つ、梅雨ちゃん!?」
「すごいな障子くん‼」
障子くんの腕の中四次元空間なの?今度入れてもらえるか頼んでみよう。ってそんな場合じゃない。
「ごめんお茶子ちゃん浮かせて!無理矢理飛ばす!」
風力を上げて地面に向かって打つ。お茶子ちゃんの足を地面から引きはがして何とか上に距離をとった。これ、重力なくしてもらってなかったら無理だったかも。恐るべし峰田くんのもぎもぎ。
「ああベイビーが引き千切れたあ!!!」
「ほんとごめん!でも今は逃げよう!」
ベイビーバキバキにしてしまった。あとでちゃんと謝ろう。空中で体勢を立て直そうとしたけど、どうやらそんな悠長にしてられないらしい。
「調子乗ってんじゃねえぞクソが!」
ひい!敵顔した爆豪くんが後ろから迫っていた。まずい。爆破が来る。
「ダークシャドウ避けて!」
守ろうとしてくれたダークシャドウにどいてもらい、爆破のタイミングと合わせて威力強めの風を広範囲に爆豪くんにぶつける。
「っあ"あ!?」
自分の放った爆発を向かい風で返された爆豪くんはかなり吹っ飛んだ。ああ、あとで怖いなあこれ。瀬呂くんが受け止めたし大丈夫だと信じたい。
『おおおお!!?みょうじ爆豪を吹っ飛ばしたァ――‼つーか爆豪は騎馬から離れたぞ!?良いのかアレ!!?』
ひざしくんごもっともです。どうやらテクニカルなのでオッケーらしい。いやオッケーなのか。まあ地面に足はついてなかったけど。
『現在の保持ポイントはどうなってるのか……あら!!?ちょっと待てよコレ……!A組緑谷以外パッとしてねえ……。てか爆豪あれ……!?』
え、爆豪くんポイント獲られてない?
「単純なんだよA組。」
なるほど、B組の人にやられたのか。それにしても爆豪くんからハチマキ取るなんて勇気あるなあ。彼が言うにはB組はチームプレイで私たちの個性や性格を観察してたらしい。策士だ。爆豪くんのことめちゃくちゃ煽ってるし侮れない。こっちにもとばっちりくるかもしれないからやめてほしいけど。
『さァ残り時間半分を切ったぞ‼』
制限時間が迫る。このまま逃げ切れば1位確定だ。でも。
「やっぱそう簡単にはいかないよね。」
「そろそろ、奪るぞ。」
大本命。焦凍くんチームが立ちはだかる。
「もう少々終盤で相対するのではと踏んでいたが……随分買われたな緑谷。いや、みょうじか。」
「両方なのかなあ……。」
焦凍くんだけじゃない。残り時間が少なくなった今他のチームもみんな仕掛けてくる。じりじりと迫ってくる敵チームに身構える。
「八百万ガードと伝導を準備。」
「ええ!」
「上鳴は……。」
「いいよわかってる‼」
何だ。焦凍くんチーム、上鳴くん何かする。でもうちにはダークシャドウくんがいるか、ら?
「んんんん、ビリビリ……!」
無差別放電130万Vがフィールド中の騎馬に伝わる。ダークシャドウくんの防御も超えてきて体が痺れる。とんでもない個性だ。焦凍くんが上鳴くんをチームにいれたのはこのため……!
ビリビリがすごくて動けない。でも。
「浮、かせる……!」
腕を下に向かせるくらいなら、痛くてもできる。気合で風を起こして全員分の重量を空中へ上げる。最大威力。きっついこれ。
「みょうじさん!」
「ごめんなまえちゃん!ウチ着地させる!」
「頼んだ!」
距離をとれば動けないほどの電気じゃなくなった。おまけに焦凍くんが地面に放った氷まで避けられた。他のチームは足止めを食らってハチマキをとられている。危なかった。
お茶子ちゃんにバトンタッチしてゆっくり着地させてもらう。体勢は立て直せたけどさっきと状況はあまり変わらない。周りがいなくなっただけで焦凍くんの作った土俵に返ってきてしまった。
ダークシャドウくんが攻撃を仕掛ける。だけど百ちゃんに盾で防御された。うーん焦凍くんチーム強すぎ。
「創造……!厄介すぎる!」
「いや……それ以上に上鳴だ。あの程度の装甲太陽光ならば破れていた。」
「え?」
そうか。騎馬戦の前に常闇くんが教えてくれた。ダークシャドウは闇が深いほど攻撃力が増す。けれど獰猛になり制御が難しくなる。逆に日光の下では制御はしやすくなる。けれど攻撃力は落ちる。つまりぴかぴか光る上鳴くんと相性最悪。
「攻撃力低下……それ向こうには知られてないよね?」
「恐らくな。この欠点はUSJで口田に話したのみ。そして奴は無口だ。」
それならまだ牽制にはなるはずだ。残り数分。今1000万を失うわけにはいかない。
『残り時間約1分‼轟、フィールドをサシ仕様にし……そしてあっちゅー間に1000万奪取!!!とか思ってたよ5分前までは‼緑谷なんとこの狭い空間を5分間逃げ切っている‼』
あと1分。1分逃げ切ればいい。それを阻むように、焦凍くんチームが距離を詰めようとしてくる。
「キープ‼」
緑谷くんの合図と同時に焦凍くんの左側に避ける。ほら、もうみんな気づいてるよ。右しか使わないこと。このままキープし続ければきっと制限時間が来る。
「奪れよ轟くん!」
「!?」
何。何か来る。あと少しなのにまだ何か隠してるのか。
「トルクオーバー!レシプロバースト‼」
一瞬だった。本当に文字通り。何かが、私たちの横を一瞬で通り過ぎた。何が起きたの。
「は?」
「緑谷くんハチマキ……!」
焦凍くんの手には緑谷くんのハチマキ。まずいまずいまずい。取られた。ここで……!
『な―――!!?何が起きた!!?速っ速―――‼飯田そんな超加速があるんなら予選で見せろよ―――!!!』
今のやったの飯田くんか!全然見えなかった。
「言ったろ緑谷くん。君に挑戦すると‼」
彼も本気だ。いや感心してる場合じゃない。今私たちは0ポイント。このままじゃ負ける。
「突っ込んで‼」
緑谷くんの声と同時に焦凍くんチームと距離を詰める。
「上鳴がいる以上攻めでは不利だ!他のポイントを狙いに行く方が堅実では……。」
「それじゃ遅い、勝てない!」
「そうだここしかない‼」
常闇くんの指摘に私と緑谷くんが食い下がる。私たちは焦凍くんチームのポイントしか把握できていない。残り1分を切ってるのに他に目を散らすわけにはいかないのだ。
「よっしゃ!取り返そうデクくん‼絶対!!!」
「麗日さん……‼」
「追い風起こして突っ込む!奪ってね‼」
「みょうじさん……‼」
みんなの思いを汲んで緑谷くんが焦凍くんに手を伸ばす。気迫十分だ。下で支えてても彼の凄みが伝わってくる。
残り20秒。今しかチャンスはない。
「……!」
焦凍くんの、左。鬼気迫る緑谷くんに圧されたのか。ほんの一瞬、ずっと見ていなかった炎が上がった。
「緑谷くん!今‼」
「ああ!!!」
焦凍くん自身が左を使ったことに気を取られた。その隙にハチマキを、奪る。
「とった‼とったあああ‼」
よし、取り返した!いや待って。それ。
「違いませんか!?」
「やられた……‼」
ハチマキの位置を変えられていた。70ポイント。これじゃ足りない……!
『そろそろ時間だカウントいくぜエヴィバディセイヘイ!』
待ってまだ。まだとれてない。無情にもカウントが響く。再び突っ込もうと試みるけど。駄目だ間に合わない。
『タイムアップ!早速上位4チーム見てみよか‼』
終わった。最後、取りたかったなあ。
ひざしくんが順位を読み上げていく。今年の体育祭、ここまでか。呆然とモニターを見る。
「みょうじさん、あの、ごめん……。」
「いや、私もあんまり役に立てなくて。」
「デクくん、なまえちゃん。」
「お茶子ちゃん……。」
振り向くと何か言いたそうなお茶子ちゃんと発目さん。2人の視線の先は、常闇くん。
「え?」
「お前の初撃から轟は明らかな動揺を見せた。1000万をとるのが本意だったろうが……そう上手くはいかないな。」
「え、常闇くん……?」
「それでも一本警戒の薄くなっていた頭の方を頂いておいた。緑谷、みょうじ。お前たちが追い込み生み出した轟の隙だ。」
ひざしくんの声が響く。
『4位緑谷チーム‼』
う、わあ!え、待ってほんとに?見事な逆転。緑谷くん涙すご。噴水みたいになってる。
最終種目、進める……!
「待って常闇くんかっこよすぎ……!」
「なまえちゃん最後風すごかったもんなあ!」
「いやもうほんと緑谷くんもみんなもありがと~!常闇くんには絶対林檎飴奢る!」
「む、それはありがたく受け取ろう。」
「私のベイビーたちどうでしたか!?」
「最高だったよお!」
みんなで喜びを分かち合う。常闇くんがハチマキ取ってたの全然気づかなかった。焦凍くんが左を使ったことに、多分私も動揺した。最後私の気が回っていたらもっとポイント取れてたかもしれない。
紅白頭をそっと盗み見る。怖い顔でじっと左手を見つめる彼に胸が痛んだ。