体育祭
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『雄英体育祭‼ヒーローの卵たちが我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル‼』
ひざしくんの実況が響き渡る。ライブ会場みたいだ。テンション高すぎ。
『どうせてめーらアレだろこいつらだろ!!?敵の襲撃を受けたにも拘らず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!!ヒーロー科‼1年‼A組だろおお!!?』
うわあ、死ぬほどハードル上げてくる。注目されまくりだ。スカウトされたい身として有利ではあるけど。会場にはこれでもかというほどたくさんの人がひしめき合っていて、自然と緊張が高まる。
今年の1年主審はミッドナイト先生。相変わらずお美しい。肌綺麗。そして露出すごい。
選手宣誓はなんと爆豪くんだった。言動はともかく彼は本当に優秀なんだよなあ。手をポケットに入れたまま壇上に上がった彼をみんな固唾を呑んで見ている。多分、余計なことを言うなよという視線。
「せんせー、俺が一位になる。」
「絶対やると思った‼」
うわ、めっちゃ野次飛んでる。
「せめて跳ねの良い踏み台になってくれ。」
私たちの願い虚しくやっぱり爆豪くんは暴言を吐いた。いやあ、ブーイングすごいなあ。完全に悪役だ。
でもこれでトップになるしかない。逃げ道をわざとなくしたんだ。彼もきっと、自分を追い込んでる。
ミッドナイト先生に発表された第一種目は障害物競走。雄英のことだ。ただの障害物じゃないはず。コースさえ守れば何してもいいって言ってたし。
「さあさあ位置につきまくりなさい……。」
全部の科が一緒なだけあって人すごいな。何とか前の方に位置取りできてよかった。
ランプとともに、スタートの声が響く。体育祭が、始まった。
予想はしてたけど身動き取れない。とりあえず上に上がっとこう。風で自分の体を浮かせて人混みと距離をとる。本当は空気の塊を作って階段みたいに上がるのが1番人に迷惑をかけないやり方だ。でも今は人が多すぎてそういうわけにもいかない。
「なんだ!?」
「急に風が!」
名も知らぬ人たち。ごめんなさい。でもこれは対策でもあるので。
パキパキ、という音とともに凍っていく地面。予想通りです。焦凍くんが足止めのために放った氷は案の定たくさんの人の妨害になっている。危ない危ない。
『さーて実況してくぜ!解説アーユーレディ!?ミイラマン‼』
『無理矢理呼んだんだろが。』
あは、消太くん解説かあ。めちゃくちゃ不機嫌な声出してる。2人にも見られてるんだからこれは頑張っちゃわないとね。
焦凍くんの氷はA組には効かなかったみたい。次々にみんな突破してくる。さすがヒーロー科。同じ轍は踏まない。
さて、次に来るのは。
「入試の仮想敵!!?」
『さあいきなり障害物だ‼まずは手始め……第一関門、ロボ・インフェルノ‼』
名前物騒。あの時の0ポイント敵かあ。久しぶりだ。ただ前と違うのは。
「数多いなあ。」
めちゃくちゃいる。これ焦凍くんのあとに下から行くのやだなあ。絶対何かされる。
『おーっと1-Aみょうじ、個性で体を浮かせて仮想敵の上を軽々通過ァー‼一抜けだ‼』
風で自分を押し上げて仮想敵よりも上に上がる。あとは空気の塊で足場を作りながら突破していくだけだ。
戦わずして勝つ。人のいない方に進むのが吉と見た。結構目立てるし、妨害はできないけどこれはこれでいい作戦だ。
『1-A轟攻略と妨害を一度に‼こいつぁシヴィー!!!』
ひい、やっぱ下いかなくて正解!崩れ落ちている仮想敵を横目に追い越されないよう追い風を足す。
『すげえな2人とも‼アレだなもうなんか……ズリィな‼』
ひざしくん突然語彙力なくさないで。笑いそうになりながらも先へと進む。何かUSJのおかげで圧倒的に個性キャパ増えた気がする。敵の上を越えて行けるというのは、我ながら便利だ。
『オイオイ第一関門チョロいってよ‼んじゃ第二はどうさ!?落ちればアウト‼それが嫌なら這いずりな‼ザ・フォーール!!!』
岩場と岩場に張り巡らされたロープ。なるほど綱渡りか。まああんまり関係ない。ここも私にとっては得意分野。
空気で足場を作りながら追い風で勢いを増す。地面に着くことなく第二関門も突破だ。
『やはり一抜け1-Aみょうじ!個性強すぎねえかズリー‼』
体勢を立て直すために次の関門までは普通にダッシュ。すると背後に感じる気配。
「ずっと2位で終われねえだろ。」
「轟くん……!」
んん、やっぱ地の体力じゃ勝てない。抜かれた。
「クソがどけやモブ共!!!」
後ろから爆発音がしてものすごい勢いの爆豪くんに追いかけられる。いや怖すぎだよね、殺されそう。
『最終関門目前にして順位逆転だァー‼轟と爆豪がみょうじを抜いたァ‼』
さすがにずっと先頭ってわけにはいかないか。2人の背中を追いながら次の策を考える。焦凍くんも爆豪くんも妨害してきそうだからなあ。
『戦闘が一足抜けてダンゴ状態!上位何名が通過するかは公表してねえから安心せずに突き進め‼そして早くも最終関門‼』
道が開けてきた。一見何もない広場だけどそんなわけないよね。
『一面地雷原!!!怒りのアフガンだ‼地雷の位置はよく見りゃわかる仕様になってんぞ‼目と脚酷使しろ‼』
雄英過激すぎない?というかさっきからネーミングセンス。名前誰が考えてるんだろ。
『ちなみに地雷!威力は大したことねえが音と見た目は派手だから失禁必至だぜ!』
『人によるだろ。』
もう笑わせないで。地雷から距離とって進むために空中は絶対だとしても、ここは攻めたい。後ろから人もたくさん来てるし何より2人に抜かれてる。それなら。
『はああ!!?現在3位みょうじ地雷原に向かって風を打ち始めたァ!!?クレイジー!!!』
風を圧縮し地面に向かって打ちながら進んでいく。自分の風と爆風が相まってさらに飛べる仕組み。妨害もできて一石二鳥だ。
『これまで一貫して逃げの姿勢だったが、順位が落ちて攻撃に転じたんだろう。ただ避けてるだけじゃトップはとれねえからな。』
そういうことです。消太くんに褒められてちょっと嬉しい。
「はっはあ俺は関係ね――‼」
両手を爆破させながらすごい勢いで飛んでくる爆豪くん。だよね、知ってた。
「風女ァてめえちょろちょろと目障りなんだよ‼」
「ひ、」
風女って私のことですか!?目が完全にハンターなんだけど。
「あとてめえも宣戦布告する相手を間違えてんじゃねえよ‼」
焦凍くんにもメンチきってる。爆豪くんの勢いが止まらない。
『ここで順位が変わった――‼喜べマスメディア‼先頭爆豪次にみょうじ、その後を轟が追う――‼』
うっそここで抜かれると思ってなかった。やばいやばいやばい。風力上げてこ。
「!?」
背後から聞こえた爆発音。すごい音。何?
『後方で大爆発!!?なんだあの威力!?偶然か故意か、A組緑谷爆風で猛追――!!!?っつーか抜いたあああー!!!』
爆風を利用して私の頭上をも超えていく緑谷くん。やられた。彼が相当クレイジーなの、わかってたはずなのに。
一気にトップに躍り出た彼に焦る。焦凍くんと爆豪くんが緑谷くんめがけて加速していく。みんなラストスパートだ。私も早く追わないと。
「う、わ!」
ボオオンというすごい音とともにまた地雷を爆発させられた。緑谷くん本気すぎる……!前からの爆風で体が後ろに流される。
『緑谷間髪入れず後続妨害‼なんと地雷原即クリア‼イレイザーヘッドおまえのクラスすげえな‼どういう教育してんだ!』
今回ばかりはひざしくんに同意せざるを得ない。後ろに流されちゃってる間に焦凍くんにも抜かれた。すぐさま立て直し追い風の威力を上げる。
『さあさあ序盤の展開から誰が予想できた!?今一番にスタジアムへ還ってきたその男、緑谷出久の存在を‼』
会場から歓声が沸き起こる。ああ、追いつけなかった。
「負、けたあ。」
息を切らしながらゴールへ入る。焦凍くんと爆豪くんの次。4位だ。スカウトのためにトップ3には入りたかった。
「みょうじさん、怪我なかった!?」
「緑谷くん、めちゃくちゃすぎ……!」
「え!ご、ごめん?」
先ほど後続に向かって爆発を起こしたことをこれでもかと謝られた。体は大丈夫だけどまんまと妨害はされました。
「予選通過は上位42名!!!残念ながら落ちちゃった人も安心しなさい!まだ見せ場は用意されてるわ‼」
息を整えながらミッドナイト先生の説明に耳を傾ける。いよいよ本選だ。これ以上大変な競技があると思うと少し気が重い。
2種目目は騎馬戦。参加者は2~4人のチームを組んで騎馬を作る。普通の騎馬戦と違うのは予選の順位に従って各自にポイントが割り振られることだ。んー、なるべくポイント高い人と組みたいなあ。
「そして、1位に与えられるポイントは1000万!!!!」
い、いっせんまん。一斉に緑谷くんに視線が集まる。
「上位の奴ほど狙われちゃう下克上サバイバルよ!!!」
嵐の予感がした。